
なんとも激越なタイトルである。
読書も体力がないと、できなくなるもので、これを読むにも時間がかかった。
「長州テロリスト」という言葉に惹かれて、ちびちびと読んでいった。
一気に読めれば、感想も一気に書けるのだが。

明治維新のことなど、ほとんど知らない。知る必要ができたときも、「天皇の世紀」をドラマで観て、それで済ましていたから。
裏帯の惹句にある「維新」至上主義、司馬史観の功罪、というのも気になった。
男性の多くは、司馬遼太郎が好きだというので、一度読んでみようと「坂の上の雲」を何冊か買ってきて、読み始めた。だが、小説なのか、ドキュメントなのか、どういうスタンスで読んだらいいのか分からず、放り出してしまったことがある。
『竜馬がゆく』などは、あくまでも小説であり、架空の話であることを、この書では強調している。
しかし、司馬ファンが多いせいか、司馬史観の罪についてのページ数は非常に少ない。
幕府と長州のせめぎ合いは、手元の資料からもうかがえる。
切絵図・現代図で歩く『江戸東京散歩』(人文社)という地図帳である。
下図の②には、なにも書いていない。尾張屋板の江戸切絵図で(1849~1870年)のものである。

上図の②に相当する現代図には、
「無記名だが、長州藩毛利家の下屋敷。長州征伐後、幕府の長州藩に対する憎悪は激しく、市中の藩邸は悉く破壊された」とある。

ともあれ、京都守護職を務め、天皇を護っていたはずの会津の悲劇も、テレビドラマで知った。
もともと判官びいきでもあるし、松平容保が尾張支藩は高須家の出であったということなどから、妙に義憤を感じてはいた。
ーー勝てば官軍ーー
尊王攘夷だったはずの長州が、偽りの勅許を出したり、テロリズムを発揮して権力を握り、握ったとたん、西欧主義になっていく過程が書かれている。白を黒と言いくるめ、好き放題してきたということである。
薩摩の郷士に過ぎなかった西郷隆盛についても多くを割いているが、大河ドラマで「せごどん」とやらをやっているようなので、興味を削ぐことになるといけないので、ここでは触れないことにする。
明治維新は、勝者側から見た正義であり、維新という言葉すら、当時は使われていなかった、昭和維新と言われ出してから、なのだそうである。
著者の筆が進みすぎ「バカバカしい限りである」という感情的な表現が、たまに散見し、ちょっと引っかかったりした。
要は、明治維新以来、この長州が日本を牛耳ってきた、という。
そして今もだ。
ーー勝てば官軍ーーのDNAは、立派に引き継がれている!
「国民の皆さまのご支持があるのでございます」と。
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