秋紀 芳慧 (Yoshie Akinori)

記憶力と創造力

あきのりの特徴の一つには数字や物事を記憶する力がありません。

 

昔お能、ダンス、バレエ、HIPHOPなどの踊りを習っていると、その踊りの練習の動きや発表する作品の振付をいただくのですが、それを覚えることがなかなかできません。もう他の方がさっさと振りを覚えて踊っていくのに自分だけ覚えられずに途方にくれることが何度もありました。それでも長い時間をかけて繰り返し繰り返し音楽を聴きながら身体を動かしていくとようやく覚えることができるのですが、他の方に比べると格段に遅すぎます。

今でも覚えているのは幼稚園の秋の発表会のこと、なにかのお話を題材に劇を作って見せることになりました。僕はその劇で五人の同じ友達らと一組みになって登場してセリフをいうシーンをまかされました。発表会前から何度もそのシーンの練習をしたのですが僕だけセリフと仕草を覚えたかと思ったらすぐにポロポロとこぼれるようにそれらが頭から消えていきます。まだ小さい時分であったものの、焦りを感じて一生懸命に練習しましたがなかなか覚えられません。それでも本番までにそらでセリフをしゃべることが出来そうなところまでなんとかこぎつけました。

本番当日ドキドキしながらその創作劇は始まり自分たちのシーンになりました。五人の仲間が半円になって腕組みをして相談をしています。そしてさあここで僕のセリフをいう番になったその時、またもや頭の中が空っぽになりました。もう何を言ったらいいのかわかりません。シーンと静まった中で五人の仲間も会場の先生や保護者も黙って僕のセリフが出てくるのを待っています。皆が心配そうにこちらを見ているその沈黙の中、なんとか必死に言うべきセリフを思い出そうとしても思い出せません。そうした長く苦しい沈黙の中、しびれを切らせた担任の先生が僕のセリフを小さな声で教えてくれ、その一言でようやく思い出した僕の口からセリフが出てきた時、僕自身も会場の人たちもホッと一息つけました。

 

それは大きくなっても変わりません。記憶する能力は未だなく、メモやノートに頼って仕事をしています。

 

今ダンスパフォーマンスをするとき、記憶を頼りに踊りません。音楽を演奏するときも同じです。ほとんど真っ白になった身体と頭を持って舞台に立ち、作品をリアルタイムにその場に生み出します。それが僕が作品を生み出す基本システムです。


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