小説「離しません!」&スピンオフ「オミとカイ-少女の霊と俺達と-」

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小説「オミとカイ」1.カイとの別れ

2024-07-03 22:06:00 | 小説
 それは夏の終わりのことだった。


 カイと 全く連絡がつかない。
 

 今日はここに来て、〈ジャパン ホラー アワード〉の打ち合わせ のはずなのに、夕方になっても連絡の一つもなかった。

 今までこんなことは一度もなかった。

 電話はすぐに折り返され、メール なんかもすぐに返事が来た。


 最近はホラーアワードの作品のことについて、史上初の大揉めをしていたが、ゆうべ はフクちゃんの店のカウンター席で2人で飲んだ。

 気分転換のつもりで、いつものようにたわいもない話をしていたのだが…
 

 途中で急に、気分が悪くなった、と急いで店を出て行ったのが、カイを見た最後だった。



 もしかして 部屋の中で1人 倒れているのか?

 ようやくそう考えついた俺は、血の気の引く思いだった。

 

 入社半年の、たった一人の社員のダイキが運転してくれて、そう遠くはないカイの部屋に向かった。


 アパートのいつもの一室、インターホンを鳴らしても出ない。


「ごめんください…株式会社レイレイズです…」

ダイキに言わせた。俺だと居留守を使われそうだと思ったからだ。

 返事がないので、仕方なく合鍵で部屋に入ると誰もいなかった 。

 カイらしく、いつも通りの片付いた部屋だった。
  しかし 念のため 呼びかけはした 。
 奥の作業部屋にもいない 。

「カイ、いるの? 」


 いつもの心霊検証の時のように… 恐る恐るバスルーム も見たしトイレも見た。カイが倒れていなくてほっとした。


 でも、カイはいない。

「あっ…」

 その時、リビングにいたダイキが声を上げた。

「オミさん、これ…」

 慌ててそばにいくと、白いテーブルの上に、


〈みんなありがとう。さようなら。カイより〉


と書かれた紙があり、横には会社兼俺の部屋の合鍵が置かれていた。

「なんだよこれ…」

 怒りで目の前がクラッとした。

 そんなことをしているとインターホンが鳴った。

 フクちゃんだった。

「ああ、どうも。あれ、カイ君は? 」

「いないんだ 。こんな紙 一枚残して」

 それを見てフクちゃんも驚いていた。

「打ち合わせにも来なかったし、 連絡もなくて」

「俺の方も、いつも元気なカイ君が気分が悪いなんて珍しいから心配で。メッセージも電話もだめだったから、様子見にきたんだ。部屋まで入れてよかったよ」

「俺もカイがここにいなかったら、フクちゃんに電話しようと思ってたんだ」



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