小説「離しません!」&スピンオフ「オミとカイ-少女の霊と俺達と-」

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40.初めての廃神社。

2024-01-30 22:51:00 | 小説
 階段を上り終えると、

「失礼します 」

 カイさんにならって、俺も鳥居の前で一礼して、境内に入った。
 
 こういう場所に相応しく、どんよりとした曇り空だった。

 社殿は崩壊こそしていなかったがものすごくさびれていて小さく、鈴も鈴紐もずいぶん古く見えた。

 賽銭箱はなかった。

 扉の格子からそっと中をのぞいてみると、男二人が座るのがやっと、の広さのように見えた。

 床にはかなりホコリもたまっていて、神具のようなものがニ、三個ほど転がっていた。

「ご神体もなさそうだし、本当に廃神社なんだな 」

 振り返るとカイさんは、今度は社殿の脇の石碑をじっくりと見ていた。

「あれ、高井神社って書いてあるんだ 」

 高井といえば、カイさんの苗字と同じだ。

 近づくと俺にもどうにか読めた。このように神社の名前が書いてあるこういう石碑は〈社号碑〉と言うそうだ。 
 



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