階段を上り終えると、
「失礼します 」
カイさんにならって、俺も鳥居の前で一礼して、境内に入った。
こういう場所に相応しく、どんよりとした曇り空だった。
社殿は崩壊こそしていなかったがものすごくさびれていて小さく、鈴も鈴紐もずいぶん古く見えた。
賽銭箱はなかった。
扉の格子からそっと中をのぞいてみると、男二人が座るのがやっと、の広さのように見えた。
床にはかなりホコリもたまっていて、神具のようなものがニ、三個ほど転がっていた。
「ご神体もなさそうだし、本当に廃神社なんだな 」
振り返るとカイさんは、今度は社殿の脇の石碑をじっくりと見ていた。
「あれ、高井神社って書いてあるんだ 」
高井といえば、カイさんの苗字と同じだ。
近づくと俺にもどうにか読めた。このように神社の名前が書いてあるこういう石碑は〈社号碑〉と言うそうだ。
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