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少年時代に私が住んでた場所の近くに、毎月決まった日に定期的に縁日が並ぶ場所があった。
ほぼ、毎月その縁日に遊びに行っていた私の最大の目当ては、「付録屋」だった・・ということは以前書いたと思う。
縁日といえば、定番は、食べ物ではたこ焼き屋、焼きそば屋、お好み焼き屋、などだった。
食べ物以外では、植木屋、金魚すくい、射撃、宝つり・・などがあったが、お面屋もまた定番であった。
今でも、どこかの縁日に行くと、お面屋はかなりの確率で見かける。
それだけ、お面というのは、縁日の「変わらぬ定番」なのだろう。
お面は、色々な種類のお面が売られていたが、一番の人気は、その時の流行りのアニメや漫画のキャラのお面だった。
今となってはレトロなアニメや漫画のキャラのお面は、根強い人気があるのか、それとも売れ残っているのか、今でも売られているのを見かける。
子供の時はいざ知らず、さすがに今の私が縁日でお面を買うことはない。
だが、子供の頃にはたまにお面も買っていた・・・ようだ。当時としては、少ない小遣いは、お面購入に使うよりも、付録屋で付録を買う方に熱中してたが、お面を入手した記憶もあった。自分で買った覚えはあまりないので、おそらく親に買ってもらったのかもしれない。
数少ないお面の記憶で、私にはどうにも忘れられない記憶がある。
それは、キャラクターではない。なので、何のお面だったかは覚えてないのだ。
では、何を覚えているか・・というと、お面をかぶった時の「匂い」である。
当時のお面はセルロイドで作られていたようなので、私が覚えているのは「セルロイドの匂い」ということになるのだろうか。
なにしろ、独特の匂いであった。一度嗅いだら忘れられない匂いだった。
美臭でもなければ、悪臭でもない、妙な感じ。
ともかく形容が難しい、妙な匂いではあった。
どこか、薬品がからんでいそうな気もして、アヤシイ匂いにも思えた。
もしあれが、自分の唾液などが正体なんだとしたら、私の唾液には薬品がまざっていることになる(笑)。
おいおい、そんなマサカ・・。
どうも、唾液の匂いとは、ちょっと違う気もするのだが・・。
ちなみにセルロイドはかなり発火しやすいシロモノらしく、その後セルロイドのお面は、だんだん廃れていったようだ。
お面はやはり子供のおもちゃというイメージがある。
発火しやすいおもちゃで子供が遊ぶことに、危険性を感じるケースが多くなったからだろう。
本物のキャラとは微妙に違う造形を感じたこともあった、お面。その「似せ方」には、安いメンコに描かれていた絵にあったような、チープなものも感じたもんだが、そのチープさが妙な魅力にもなっていたっけ。
そんな、ややチープな造形と共に、あの匂いがなぜか時々懐かしく思えることがあるのは、なぜだろう。
そして、あの匂いの本当の正体は?
その答えは、お面自身が知っているのだろうが、お面は口を動かさず、何も語らない。