天上天下唯我独尊

夢に生き、夢のように生きる人の世を
憐れと思へば、罪幸もなし・・・

四行詩集 ~無花果の実り~ 3

2008-01-26 09:53:19 | 「無花果の実り」
1.根元に水をかけてやらねば、瑞々しい果実は得られない。
  他人の仕事を育てなければ、立派な商品は得られない。  
  自分の仕事を育てたければ、周囲に金を持たせることだ。
  喉が渇いたら、水を飲まずに果実を齧れ。
「翁曰く、夫れ入るは出たる物の帰る也。来るは推し譲りたる物の入り来る也。譬へば、農人田畑の為に尽力し、人糞をかけ干鰯を用ひ、作物の為に力を尽くせば、秋に至りて収穫を得る事、必ず多き勿論也。然るを種を蒔きて、出るとは刈り、枝が出れば伐り穂を出せば摘み実が成れば実を取る、斯くの如きならば、決して収穫無し。商業も又同じ。己が利得のみを専らとして買い手の利得を思はず、妄りに貪らば、其の店の衰微、眼前なるべし、と(二宮翁夜話/第40章)」

2.種屋ならば、種が蒔かれる前にどんな花が咲くか知っている筈。
  政治学者ならば、政策が施行される前に、どんな結果がでるか把握している筈。
  結果が話かっていない者は、自分が何を手にしているかも分かっていない。
  何を手にしているかも分からぬ者は、毒麦を蒔く恐れがある。
「お前たちは、お前たちが耕作する土地のことを考えてみたか。お前たちが種を蒔くのか、それとも、種を蒔く者は我らか。もし我らがそうと思えば、作物を粉々にだってすることができる。そうなれば、お前たちは驚いて、『ああ、我々は借金を負ってしまった。みな取り上げられてしまった』と言う(コーラン56:63)」

3.放置された庭園は、悪草が良草を迫害し、害虫たちの楽園となる。
  外来種は変異して繁殖し、在来種を駆逐する。
  自然を愛する庭師はいらない、自由を愛する政治家など無用だ。
  伸びるものは伸びよと言うなら、葦や茨ばかりが喜ぶだろう。
「これらの者は賄賂をとって悪人を弁護し
正しい人の正しさを退ける。
それゆえ、火が舌のように藁を嘗め尽くし
炎が枯れ草を焼き尽くすように
彼らの根は腐り、花は塵のように舞い上がる。
彼らが万軍の主の教えを拒み
イスラエルの聖なる方の言葉を侮ったからだ(イザヤ書5:23)」

4.農作業が必要なのは、食べられる穀物や野菜が自然と増殖してくれないから。
  政治が必要なのは、善良な人間や文化は守られねば俗物に滅ぼされてしまうから。
  いくら繁殖力が高いとは言え、雑草を優れているとは云うまい。
  美しく高級なものは繊細で控えめだが、劣悪なものは常にふてぶてしく畑を占領する。
「孔子曰く、周任言へること有り、曰く、国家を治むる者は、悪を見ること農夫の務めて草を去るが如し。之を刈り、其の根を絶ち、殖せしむること無くんば、すなわち善なる者伸ぶ、と(春秋左氏伝/陰公)」


5.花や果樹を育てることを覚えなければ、雑草や害虫を駆除する気も起こらない。
  外国の文化や迷妄を放置しておけるのは、自国の文化や学問を愛する気持ちがないからだ。
  外国の動植物も、水槽や鉢に入ったままなら問題ないが、川や野で増え始めると問題だ。
  外国の思想文化も、輸入販売だけならばまだよいが、模倣生産がはじまると問題だ。
「翁曰く、草を刈らんと欲する者は、草に相談するに及ばず、己が鎌を能く研ぐべし。髭を剃らんと欲する者は、髭に相談は要らず、己が剃刀を能く研ぐべし。教へるに鋸の目を立つるは、天下の木たる者を伐る所以也。教へるに鎌の刃を研ぐは、天下の草たる者を刈る所以也。鋸の目を能く立てれば天下に伐れざるの木無く、鎌の刃を能く研げば、天下に刈れざるの草無し。秤有れば、天下の物の軽重は知れざる事無く、枡有れば、天下の物の数量は知れざる事無し。能く能く学んで能く能く勤めよ、と(二宮翁夜話/第85章)」

6.手足や服を汚さずに農作業が出来るなどと思わないで頂きたい。
  手足や服が汚れているからといって、人を卑しんだり怪しんだりしないでくれ。
  自分を汚す事をせずに、汚れている者を謗るのは、手も足も持たない蛇ではないか。
  部下や人民から謗られていても、仕事が確かな者には立派な報酬を用意せよ。

7.雑草が蔓延ると、穀物や野菜は行き場を失う。
  大衆がのさばると、善良な者や高尚な者は生きてゆけなくなる。
  根絶やしにせよとは云わぬが、雑草は田畑から取り除く必要があるのではないか。
  ちゃんと分離さえしておけば、善人や高尚な人間も、低劣な人間と同じ国で生きてゆける。
「物、其の所を得る、之を治とし、事、其の宜しきに乖く、之を乱とす。猶園を治むるが如き也。樹石の位置其の格好を得れば、即ち朽株・敗瓦も又皆趣を成す。故に聖人の治は、世に棄人無し(佐藤一齋/言志晩録129)」

8.柔らかく肥え過ぎた土壌には、雑草や毒草が生え易い。
  軟弱で、富に恵まれ過ぎた民心には、遊蕩心や反抗心が芽生え易い。
  民心は踏み固めておかないと、大雨が降った時にぬかるんで流れてしまうことになる。
  だが、気をつけよ、踏みつけ過ぎると頑なになって、今度は何も芽生えなくなる。
「よい土地は主のお許しにより草木が生える。しかし、悪い土地は雑草しか生えない。このようにして我らは、感謝の気持ちをもった人々のために、しるしを手を尽くして説明している(コーラン7:58)」

9.余った水を雑草に注がれるくらいなら、余分に水を汲ませぬがよい。
  余った金を遊蕩に注がれるくらいなら、民に余分な金は持たせぬがよい。
  水が足りないくらいにしておけば、葡萄の樹の根は深く伸びるし、果汁は濃厚になる。
  生活費を適度に不足させておけば、生活の智慧と縁は伸びて、人間関係は濃密になる。
「百章は国家の根本也。是れを治むるに法有り。先に一人一人の田地の境目をよく立て、さて一年の入り用作食を積もらせて、其の余りを年貢に取るべし。百姓は財の余らぬように、不足無きように治むる事、政の道也(本佐録)」

10.芯を持たない朝顔に、健気な花を咲かせるためには、真っ直ぐ伸びた支柱がいる。
  自律できない大衆に、一花咲かせてやりたいならば、厳しい戒律を与えよ。
  だが、強制すると、どんなことでも必ず彼らは文句を言う。
  花を咲かせ、少しでも多く光を浴びたいと願う者は、自分で探して絡みつけ。
「呼びかけよ、と声は言う。
私は言う、何と呼びかけたらよいのか、と。
肉なるものは皆、草に等しい。
永らえても、全ては野の花のようなもの。
草は枯れ、花は萎む。
主の風が吹きつけたのだ。  
この民は草に等しい。
草は枯れ、花は萎むが
私たちの神の言葉はとこしえに立つ(イザヤ書40:6)」
 

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