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最近読んだ小説レビュー Vol.22

2006年06月24日 | 小説レビュー
友人に勧められて読みました。

今回はそのため、一冊だけ、山崎ナオコーラの「人のセックスを笑うな」です。

「人のセックスを笑うな」/山崎ナオコーラ

<感想>
この作品は第41回文芸賞受賞作です。まず、著者の名前とタイトルにインパクトがあり、コピーライティング能力では◎だと思います。現に、僕も興味をそそられて読んだわけなので。

しかし、全体的にあっさりし過ぎてて、純文学が好きな人には物足りなさを感じるんじゃないかな、というのと、完全にタイトル負けしてるという事です。

ストーリーの概要は、19歳のオレ(主人公)と39歳のユリ(ヒロイン)。教師と生徒もので、ドラマ「魔女の条件」みたいな禁断の恋愛かと思いきや、そんなにハラハラしないし、学校でもそんなに問題にならない。呼んでいても、「禁断」という感覚や年の差カップルの「切なさ」、「ジレンマ」みたいなもんがあまり伝わってこない。

しかも、よく考えてみれば、39歳っておばさんなわけで、母親に近いっていう人もわけで、想像するとあまり気持ちのいいものではない。しかも恋愛の深さを描くという意図かどうかはわかりませんけど、ラブシーンが多い。39歳のおばさんとのラブシーンを描かれても……っと、僕は少し引いてしまいました。想像したくないんですよね、その絵を。熟女好きな方はいいと思いますけど。

まだ教師が男で生徒が女、のパターンは想像できるし、絵になるんですよ。でも、女側が39歳は、正直なかったですね。きっと同世代の女の方とかなら読めると思うので、これは完全に僕の好き嫌いです。すいません。まだ、29歳なら全然平気でしたけど、というかむしろそっちの方が色気もあって万人受けすると思う。

全体的に、心理描写や作者独特の表現というのはあるものの、人間描写が薄い気がするし、二人が恋愛に発展する過程の描き方も唐突過ぎる気がしました。なので、あまり共感できないんですよね。主人公にもヒロインにも。

あと、最初にも触れましたが、タイトルの「人のセックスを笑うな」が作品から浮いてしまってる。タイトル負けしてるので、読後もピンと来ないんですよね。タイトルは作品を一番短くまとめたものだと思ってるので、これじゃないだろう、と。

たしかに売るという戦略性、受賞への興味の引き方は上手いと思いましたが、それだけに期待値を上げてしまって、読んだ後、期待外れになってしまう。そこが残念でした。

でも、読みやすいという点では、誰でも手に取り易いし、純文って難しいっていう先入観を抱いてる人には入門書になるかもしれません。

僕は、大長編よりこのくらいのページ数の小説が一番好きなので、読んでいて苦になる事はなかった。読み易さ、流れるような文章選び、という点では好印象でした。タイトルと著者名が奇抜なので、内容にも同等のオリジナリティを出してほしかったです。



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