今クールで一番真剣に観ているドラマが『海のはじまり』だ。『Silent』ですっかり生方美久の脚本にハマってしまった僕は、その後も『いちばんすきな花』を観ているが、彼女のファンとしては当然『海のはじまり』も外せなかった。しかも、今回は『Silent』の目黒蓮が再び主演というのも大きな話題であった。
前回下記ブログで紹介した通り、『海のはじまり』は僕の期待を裏切らない素晴らしいドラマとなっている。実に繊細で美しい描写・情景、見事なテーマ・物語設定、魅力的なキャラ設定が全て絶妙で、静かに心を揺さぶり、共感を誘う独特な世界観を創り上げている。この空気感が出せるドラマは他になかなか無い。
待望の夏ドラマ『海のはじまり』がついに放送開始! - blue deco design lab (goo.ne.jp)
そしてそんな魅力満載の『海のはじまり』におけるストーリー展開を毎週楽しみに観ているが、毎回なかなか深い考察があり、また心に刺さるような言葉が紡がれていく中で、色々と考えさせられる。今後の展開が益々楽しみなドラマである。
今回は、そんなドラマそのものよりも、ドラマの中で登場することで大きな話題となっている“製品“を2つ取り上げたい。『Silent』では、ドラマで使われたロケ地の『世田谷代田』が大きな話題となり、聖地巡礼をしてしまった人が後を絶たなかった(僕も例に漏れず聖地巡礼を実行)。今回は、マーケティング的な意図というよりは、物語のテーマに沿ったものではあるが、一種の”プロダクトプレイスメント“を巧みに使っていると言える。
ドラマにはあの鎌倉の銘菓、豊島屋の『鳩サブレー』が登場する。第二話で主人公の一人、南雲水季(古川琴音)の大好物として劇中に鳩サブレが登場。大学在学中、月岡夏(目黒蓮)と一緒に授業中、音を抑えながら鳩サブレーを教室でこそこそ食べるシーンがあり、またその後も夏が水季の実家を訪れた際に、娘の南雲海ちゃんに鳩サブレーをお土産として持ってくるシーンなど、鳩サブレーがとても象徴的過去と現在を繋ぐものとして巧みに使われているのだ。
僕も鳩サブレーが結構好きで、時々むしょうに食べたくなってしまうが、あの飽きの来ないサブレーの味わいが、いつも変わらず、普遍的で安心できる美味しさを届けてくれる。デザイン的には幸せを呼ぶ黄色いレトロ缶パッケージも大きな魅力の一つだ。そんなお土産の定番である鳩サブレが、ドラマによってまた若者の間でも注目され、鳩サブレーの売り上げも上がっているらしく、ドラマの影響力はやっぱり凄い。
8月10日は“鳩(8・10)の日”ということで、毎年この日は鳩サブレーの限定缶が発売される。たまプラーザの東急百貨店にも鳩サブレーの店舗が入っているのだが、なんと早朝から外まで伸びる長蛇の列が出来ていたのは驚いた。元々縁起も兼ねてこの限定缶を求めるお客さんが多いとは思うが、今年は『海のはじまり』で更に買い求める人の層が広がったのではないかと思う。
そしてもう一つ僕が嬉しかったものが劇中に登場する。名作絵本としても有名な酒井駒子作の『くまとやまねこ』である。この絵本は僕も昔から大好きな1冊で大切に本棚に保管していたが、ドラマに登場したことで更に注目されている。劇中では海ちゃんが好きな絵本として、水季が読み聞かせしていたが、小田原の図書館や、夏も海に読んであげるシーンもありこちらもさりげなく象徴的に使われている。
物語は、ある朝くまの仲良しだったことりが死んでしまって・・・。物語はちょっとショッキングな出来事で始まる。くまは泣きながら木箱を作り、花をしきつめ、ことりをそっと入れる。大事なものを失くしてしまうという感覚は、誰の身にも起こりうる事だが、その心の痛みを代わってあげるということは決してできない。ある日、くまは外がいいお天気なのに気がつき、そして小さいけれど大切な出会いをしていく中で心が再生されていく物語になっている。子ども達に向けて優しく描かれているが、テーマは「心の再生」と「死」についてのお話という点で大人としても考えさせられる絵本だが、この内容はまさに『海のはじまり』にもシンクロしている部分が大きく、海にこの絵本を読み聞かせた水季の気持ちを思うと胸が締め付けられる。ドラマ的には絶妙な絵本の選択であると言える。
好きで観ている『海のはじまり』に、同じく僕の好きな『鳩サブレー』と『くまとやまねこ』がドラマに登場するのはちょっと嬉しいサプライズだったし、これも生方美久のセンスなのかもしれないが、益々ドラマが好きになってしまった。