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芦川いづみ祭り2023 第8弾: 『娘の季節』

ちょっと久々にこのコーナー!

またまた嬉しいことに、芦川いづみが出演している映画が初DVD化された。今年新たに、『和泉雅子 銀幕の世界』と題して、日活からDVDラインアップの発売が始まったが、その第一弾として『東京ナイト』と『娘の季節』という2本のタイトルが収録されたDVDが発売されたばかり。

和泉雅子と言えば、『日活3人娘』として吉永小百合、松原智恵子と共に1960年代中盤から後半にかけて絶大な人気を博した。そんな和泉雅子のヒット作品がDVD化されたというのは彼女のファンにとっても嬉しいニュースだが、僕が歓喜したのは『娘の季節』のDVD化。この作品は僕の大好きな芦川いづみも出演している1968年公開の作品で、これまでDVD化されていないからだ。DVDでようやく鑑賞できるというのは本当に嬉しい限りである。

芦川いづみと和泉雅子の共演作は幾つかあるのだが、ちょうど1960年中盤は和泉雅子の絶頂期で浜田光夫と共演した青春映画が多く当時公開されていた。今年1月に取り上げた『成熟する季節』もそんな1本であった。逆に芦川いづみは1960年代中盤に入ると、主演女優としてやや旬を過ぎ、世代交代が起きていた頃。しかし僕は1960年代後期の芦川いづみも大人の女性としての色気も増して益々美しいので好きなのだが、やはり当時は若くて勢いのある日活3人娘の方が客を呼べる状況になっていたと思われる。そしてそんな芦川いづみも1968年に藤竜也と結婚して完全に芸能界から引退してしまったのだ。山口百恵にも見られた何とも潔い引き際であった。その意味ではこの作品は引退直前に出演した作品であり、まさに銀幕での最後の貴重な芦川いづみを見ることが出来る作品でもある。そんな感動的な作品をぜひDVDで観たいと長年思っていたので、今回和泉雅子にあやかってついに初DVD化が実現したのは感無量である。

『娘の季節』はカラー作品で、バスのワンマンカー化が進んでいた時代を背景に、車掌(バスガール)をやっていたバス会社の若い娘たちの職場における悩みと喜びを交叉させ、明るく健康な女の表裏を描く青春作品となっている。主演は和泉雅子と杉良太郎。一見明るいライトコメディーかと思いきや、実は当時の社会変化や高度成長における労働環境などにも問題提起をしている作品となっており、今観るとかなり興味深い作品だ。

まず和泉雅子演じるバスガールという職業だが、これは観光バスのバスガイドさんのことではなく、普通の市営バスに当時は必ずバスガールなる女性従業員が車掌として乗っており、乗客の切符を売ったり、停留所の案内などをしていたのだ。昔はそんな職業があったのだと改めて知ったが、ちょうどこの頃バスもワンマンバス化して自動化・人件費削減という世の中の流れになり始めていた頃。バスガールたちは田舎から上京してきて、寮で暮らしながら残業し、決して給与・待遇も良くない職場環境で必死に生計を立てていた時代である。そこにワンマン化が進むことで、益々職を失っていく大きな社会変化の時代であったと言える。

そんな時代背景の中で物語は進んでいくが、当時の世相を観るにはとても面白いし、1968年当時のバスや自動車なども多く登場するので、細かくチェックするだけでも結構楽しめる。そして、このバス会社で働くお局的な存在の康子を芦川いづみが演じている。康子は寮長も務めているが、若い子たちへのあたりが強く、みんなからは煙たがられる役。康子は、昔杉良太郎演じるバスドライバーの古橋次郎と同じバスにバスガールとして乗っていた際、交通事故により左手を失ってしまう。この事故は次郎の責任ではなかったものの、それ以来康子に対して負い目を感じながら仕事をしていた。そんな次郎に思いを寄せていたのが和泉雅子演じる主人公のみどり。みどりは次郎は相思相愛で、みどりは結婚したいと思っていたが、次郎の煮え切らない態度と、康子との関係が気に食わず、また康子も次郎との関係を詰めようとする若いみどりの存在が気に入らない為、康子とみどりは三角関係として対立していく展開に。更に物語の中で、みどりの兄の自殺や、同僚の妊娠・出産、その他起こる事件などを経ながらみどりも成長していく物語である。

そしていよいよ本題だが、そんな興味深い作品の中での芦川いづみは、今回はお局的な元バスガイドという役で、ちょっと嫌な役で始まるが、最後にはみどりとも和解するハッピーエンドとなるので一安心。それにしても、相変わらず芦川いづみはため息が出る美しさ!どのシーンを見ても美しい。特にこのキャリア終盤の芦川いづみは、若い頃ともまた違い、大人の魅力・色気が満載で、その美貌は更に磨きがかかっていたと言えるので、そんな彼女を拝めるのは最高の幸せである。

共演者として、あの遠山の金さんこと杉良太郎や、芦川いづみと結婚することになる藤竜也、兄役に川地民夫、同僚に日色ともゑ、そして若い中尾彬も登場する。若き日の杉良太郎もなかなか爽やかでカッコいい。

今回、また新たな芦川いづみ出演作品をDVDで入手することに成功したが、彼女のキャリア終盤の魅力を確認出来たことは新たな発見となったし、映画としても当時の昭和感を感じることが出来、更に当時の社会問題などを取り上げていた点で、とても勉強になる興味深い作品であった。引き続き、まだ観ぬ芦川いづみ作品をこれからも楽しみにしたいと思う。

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