あの名作『ロッキー』シリーズを引き継ぐ形で、2015年にスピンオフして始まった新たな『クリード』シリーズの最新作、『クリード 過去の復讐』をシネコンで早速鑑賞してきた。今回の作品は、2015年の『クリード チャンプを継ぐ男』、2018年に『クリード 炎の宿敵』に続き、今回がシリーズ第三作。前2作もこれまで鑑賞してきたが、このクリードシリーズはロッキーの原点に返ったような骨太、いぶし銀な作品で結構好きだったこともあり、今回も楽しみにしていた。
ロッキーの親友でスターボクサーであったアポロが、ロシア人ボクサーのドラゴと対決して命を落としてしまうが、このクリードはそんなアポロの息子。父の死の後、自分もボクサーになることに憧れ、やがてロッキーを訪ねて、彼にトレーニングを受けてチャンピオンになって行く姿が第一作で描かれ、第二作ではドラゴの息子が登場し、ロッキーに敗れたドラゴが自分の息子を使って再びロッキーとクリードと対決した。
そして今回はチャンピオンのまま引退し、すっかりセレブとなってリッチな暮らしをエンジョイしていたクリードを、ある日過去の罪を償い、出所してきたばかりの昔の親友、デイミアンと再会するところから物語は始まる。最初は再会を喜び、自分に出来るサポートはさせてもらうと申し出るが、デイミアンは刑務所の中でもトレーニングを積んでおり、またボクシングのタイトル戦をやりたいと、無茶なお願いをする。結局、クリードが経営するボクシングジムに所属する現チャンピオンとのタイトルマッチをすることになるが、デイミアンが勝利して新チャンピオンとなってしまう。しかし、これはデイミアンのクリードに対する復讐の始まりだったのだ。
ここからはネタばれになるが、デイミアンとクリードは昔孤児院に所属しており、兄弟のようにいつもつるんでいた。その施設で親がわりをしていた院長に毎日虐待を受けていた辛い過去があるが、ある日町で院長を見かけてしまい、幼いクリードは院長をボコボコに殴ってしまう。仲間がやってきてクリードも窮地に陥るが、デイミアンが拳銃で威嚇していたところ警察が着てしまい、クリードは逃げるが、デイミアンは警察に捕まってしまう。拳銃所持の上、前科もあったデイミアンはそのまま刑務所に放り込まれてしまうが、クリードは結局彼のことを見放してしまう。長い年月が流れ、すっかりこの事件のことを忘れていたクリードであったが、デイミアンは自分を見捨てたクリードへの復讐のチャンスを狙っていたのだ。そしてついに出所して、実行に移す。
過去の自分の過ちを思い出し、過去の親友にも攻められ、精神的に追い込まれる中で、自分の家族の支えもあり、現役復帰して、デイミアンとリングで対決することを決意する。そして壮絶な戦いが繰り広げられるのだ。
シリーズを通してクリードを演じているマイケル・B・ジョンソンが、なんと今回は監督も手掛けているが、『はじめの一歩』や『NARUTO』など、日本のアニメが大好きと公言しているだけあって、今回の作品では、ボクシングシーンにアニメから影響を受けてイメージした、凝った演出がとても面白かった。観客の声を全て消し、対決している二人の息遣い、そして表情からそれぞれがその瞬間に抱いていた気持ちなどが読み取れるかのような演出は、ボクシング映画に新たな息吹をもたらしたのではないかと思う。
僕は昔からボクシング映画が結構好きで、もちろんロッキーシリーズは全て観ているし、クリードも毎回楽しみに観てきた。あの哀愁漂うロッキーシリーズは本当に味わい深いものがあったし、シルベスター・スタローンのあの顔としゃべり方が、また何とも哀愁を誘う要因であった。クリードにはそんな哀愁はなく、逆にとてもイケメンで、また新たなボクシング映画の幕開けとなった。しかし共通していることは、ロッキーシリーズもクリードシリーズも、単純なボクシング映画の枠を超えて、地味ながらも骨太なヒューマンドラマとしてしっかりと描かれている点にあり、また家族との固い絆などにも焦点を当てたテーマをどの作品でも丁寧に描写している。今回もなかなか見応えのある映画となっており、過去の作品に引けを取らない良い出来栄えで、大いに楽しむことが出来た。今後クリードシリーズがどこまで続くかわからないが、今後にも期待したいし、過去の2作品も改めて観直したくなってしまった。