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近年稀に見る感動傑作、『おおかみこどもの雨と雪』

先週末、家族で映画『おおかみこどもの雨と雪』を見に行った。
娘が“見たい”と言っていたこともあったが、
周りからの評判も良く、とても気になっていた映画である。



「時をかける少女」「サマーウォーズ」を世に送り出した
細田守監督が、「母と子」をテーマに描いた最新作だが、
人間と狼の2つの顔をもつ「おおかみこども」の姉弟を、
女手ひとつで育て上げていく人間の女性・花の13年間の物語を描いている。
これだけ聞くと、とても奇抜なストーリー設定で、
果たして感情移入出来るのかどうか見る前は不安もあったが、
見てみるとその不安は一瞬で消え去った。



「おおかみおとこ」と恋に落ちた19歳の女子大生・花は、
やがて2人の子どもを授かる。雪と雨と名づけられたその子どもたちは、
人間と狼の顔をあわせもった「おおかみこども」で、
その秘密を守るため家族4人は都会の片隅でつつましく暮らしていた。
しかし、おおかみおとこが突然この世を去り、取り残されてしまった花は、
雪と雨をつれて都会を離れ、豊かな自然に囲まれた田舎町に移り住む。
田舎町に移り住んだ後から、花の孤軍奮闘が始まるのだが、
そこにはとても芯の強い女性像が描かれており、
「おおかみおとこ」である夫、そして子供たちへの深くて広い愛情が
見事に描かれており、子供たちの天真爛漫で無邪気な様子も
とても微笑ましく描かれている。この街中で暮らす前段部分から、
不思議とグイグイ物語に引き込まれていく。



雪と雨は物語展開の中でそれぞれ明確な性格付けがなされていくが、
やがて、雪と雨はそれぞれに生きていく道に目覚め、
異なる人生(狼生?)を歩むことになるのだが、
花はそれを受け入れ、暖かくも大きな愛情で包み込む。
後半は感動的なシーンも多く、不覚にも思わず目が潤んでしまったが、
子供を持つ親として、親目線で感情移入して見てしまった。



この映画は、映像がとても美しく、印象的だ。
CG全盛のこの時代に、各シーンが手書きで丁寧に描き込まれており、
人物と背景に巧みな変化と動きが与えられている。
この味わい、そしてリアルな息吹は、
ディズニーやピクサーアニメには出せないもの。
ジブリ同様、まさに世界に誇るべき、日本の優れたアニメ技術が
遺憾なく発揮されている。ストーリー性の高さ以外にも、
技術面でも極めて優れた映画であり、日本アニメの底力を再認識した。



そして、花の声を演じたのが宮崎あおい。
花のイメージ通りの起用で、きっと実写版を作ったら、
花役は間違いなく宮崎あおいしかいないと思えるような
見事なはまり具合にも驚いた。



しかし、見終わってから改めて感じたのだが、
おおかみこどもを育てるという設定自体は
とても奇抜なファンタジーのように思えるが、
実は子供がそれぞれ自分が目指す道に目覚め、
独り立ちしていく事自体は、
人間誰でも経験していくことである。
その意味ではとても深いメッセージが
込められていると感じ、親の目線で子供の成長、
そして自立とどう向き合っていくのかを
考えさせられる映画でもあった。

『おおかみこどもの雨と雪』は、
僕の中では既に今年のベスト作品候補に躍り出た。
そして、同じ細田守の世界観を味わう為、
これまでの細田監督の映画(時をかける少女と
サマーウォーズ)が急に見たくなってきたのは、
恐らく僕だけではない筈である。
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