先日『碁盤斬り』をシネコンで観賞したばかりだが、今週末は再びイオンシネマ新百合ヶ丘のレイトショーに出かけた。今回は公開前から観たいと思っていた『違国日記(いこくにっき)』である。そもそも僕はガッキーこと新垣結衣の大ファンなので、ガッキー主演映画としても注目していたが、実はそれ以上にこの映画のプロットがなぜかとても気になっていたのだ。
『違国日記』は、ヤマシタトモコ原作の漫画が原作で、170万部を売り上げるヒット作。この漫画を実写化したのが本作である。そしてガッキーは昨年公開された映画『正欲』が記憶に新しいが、結婚後映画主演が続いている。
物語は、人見知りの小説家の高代(こうだい)槙生(まきお)35歳と、その姪・田汲(たくみ)朝(あさ)15歳の女同士の同居物語。きっかけは葬式での一コマだった。交通事故で両親を亡くした朝に、無神経な言葉を吐く親族たちと盥回しにされる朝の様子を見た槙生が、我慢ならず勢い余って“私が朝を引き取る!”と啖呵を切ってしまったのだ。しかし、当の槙生は他人と住むごとに戸惑いを隠さず、朝は困惑する。なかなか理解し合えない寂しさを抱え、一緒に居ることでお互いの癒えない傷口に自然と触れてしまう2人だが、丁寧に日々を重ねながら生活を育むうちに傷と向き合うようになっていく・・・・・という展開。
物語に派手さは無いものの、2人の会話や微妙な行動が時間と共に変化していく様子が実に丁寧に描かれており、2人の距離感が少しずつ縮まっていきながら、お互いに抱えている心の傷が癒えていくという“ヒーリングムービー”となっている点で、かなり秀逸であった。この絶妙で繊細な心の機微が見事に、そしてリアリスティックに表現されており、個人的にはとても心に響く映画であった。主人公の槙生は、彼女が姉を長年嫌っていたという根深い傷が皮肉にも姉の娘を引き取り一緒に生活するようになったことで、葛藤しながらも姉に対するわだかまりにも次第に変化が生じ始める。そして姪も、両親をいきなり亡くしてしまった中で、親友との関係、自分の進路への悩みや、本当にやりたいことなど、色々なことに悩む多感な思春期の高校生だが、槙生と一緒に奇妙な同居生活をする中で少しずつ変化していく。
この見事な物語を演じている俳優陣だが、槙生を演じるガッキーはとてもナチュラルに演じており、普通で等身大な演技に大変好感が持てた。そして地味めにしていても、やっぱり見れば見るほと美しいし、思わず見入ってしまう。やっぱりガッキーは可愛いのだ!そしてガッキーは、ユナと芦川いづみにも通ずる凛とした中に何とも自然な美しさを持つ女優であり、僕の好きなタイプには一つの統一感があることを改めて思い知らされてしまった。
そしてガッキー以上に今回感動したのが、朝を演じた早瀬憩。この子は今回の映画で初めて認識したが、まだ17歳(映画撮影時はまだ15歳)という若き女優だ。ショートヘアでボーイッシュにしているせいもあるが、何とも言えない中性的な魅力が色濃くでており、そのナチュラルな演技力には思わず関心してしまった。憩という名前もなかなか珍しいが、とてもいい名前である。ガッキーと憩ちゃんのナチュラルな演技が物語をとてもリアリティのあるものにしていると感じており、映画の説得力と感動を形成する上で大きな勝因となっている。これからも、早瀬憩の活躍に益々注目である。
先日の映画公開舞台挨拶では、早瀬憩からガッキーへの手紙が読み上げられ、ガッキーも早瀬憩も涙していた姿がキュートで印象的であったが、映画での共演を通して良い繋がり・絆が出来たようだ。
2人以外には、夏帆や瀬戸康史なども良い形で配役されており、また僕が4年前に注目していた若手女優の小宮山莉渚(こみやまりな)も朝の同級生として出演しているが、今回やっとまずまず目立つ役をゲットしたようで、前から注目してきた自分としては嬉しい限りだ(4年前のブログは下記ご参照)。
最近注目の若手女優2人! - blue deco design lab (goo.ne.jp)
それにしても、今回久々にいい日本映画に出会った思いだ。公開開始直後にシネコンまで足を運んで本当に良かった!丁寧に描かれた物語はとても静かな感動があり、ガッキーと早瀬憩の2人のナチュラルな名演技が、素晴らしい原作や脚本、そして女性監督である瀬田なつきの感性とも相まって、見事な化学反応を起こした結果であると思うので、今年度は今のところイチオシの映画だ。またDVD化されたら、ぜひ購入してじっくり観返したい作品であった。