先日、ちょっと久々にイオンシネマ新百合ヶ丘にて、映画『碁盤斬り』を観賞してきた。僕は意外に草彅剛が好きで、彼のドラマなどは全て観ているし、そもそも時代劇の映画も好きなので前からこの映画が気になっていた。
物語は、基本的に復讐もの。
浪人・柳田格之進(草彅剛)は身に覚えのない罪をきせられた上に妻も喪い、故郷の彦根藩を追われ、娘のお絹(清原果耶)とふたり、江戸の貧乏長屋で暮らしている。しかし、かねてから嗜む囲碁にもその実直な人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心掛けている中で、囲碁が好きな商人、萬屋の源兵衛(國村準)と若き後継者の弥吉(中川大志)と出会い、囲碁で心を癒される日々を送っていた。しかしある日、旧知の藩士により、悲劇の冤罪事件の真相(妻が死に追いやったのは、同じ藩士で格之進を目の敵にしていた柴田兵庫(斎藤工)の仕業であることがわかる。格之進とお絹は、復讐を決意するが、萬屋で5万両が消えた事件で濡れ衣を着せられた格之進は、吉原で店を取り仕切るお庚(小泉今日子)に5万両を用立てして貰う代わりに、お絹を差し出し、大晦日までに返金出来ない場合は、お絹を客に出すという条件。お絹は仇討ち決行のために、自らが犠牲になる道を選んだ。そして格之進は彦根藩の梶木左門(奥野瑛太)と2人で、復讐の為柴田兵庫を探す旅に出る・・・という展開。
基本的に、日本人はこういった復讐ものが大好きだし、僕も義理と人情、武士道精神が盛り込まれた復讐劇は大好物なので、映画としてはとても面白かった。また前半は、囲碁に対する愛情が豊かに表現されており、とても丁寧に一つ一つのシーンが描写されていたのがとても印象に残ったが、脚本・演出が見事であった。僕は囲碁を一度もやったことが無いので、ルールなどの中身がわからないままこの映画を観てしまったが、囲碁が好きな人はより一層楽しめる映画だろう。
総合的には良い映画であったし、草彅の演技は相変わらずとても素晴らしかったのだが、萬屋で消えた5万両のくだりや、娘が吉原に行くことになるくだりが復讐の本筋と直接関係ない為、やや必然性に欠ける展開になってしまったような気がして、少々頂けなかった。また、斎藤工演じる柴田兵庫との対決も、意外にすぐ(一撃で)決着がついてしまったが、もう少し粘って、あと一ひねり見せ場があっても良かったかのではないかと感じてしまったが、これもやり過ぎてしまうと、緊迫感の無い映画になってしまうので、程度が難しい。
タイトルとなっている“碁盤斬り”の意味も、映画の最後でわかる仕掛けになっているが、これもやや物語自体の“急所”を外した形となっており、これはこれである意味一ひねりあって面白かった。また、ラストは悲劇的な展開にならず、ハッピーエンドで無事終わったのにも安堵した。
主演の草彅剛、娘役の清原果耶、敵役の斎藤工の他、小泉今日子の久々の映画出演や、市村正親、中川大志、國村準、奥野瑛太などもいい味を出しており、全体的には良い配役であったと思う。
草彅は、朝ドラ『ブギウギ!』での好演がまだ記憶に新しいが、やっぱり草彅が主演する映画やドラマはいつも面白いし、個人的に彼の演技が好きなのだろう。この『碁盤斬り』もわざわざシネコンに出向いて観た甲斐があった。これからもこのような時代劇や、草彅の演じるキャラクターを楽しみにしたい。