原作・大場つぐみ、漫画・小畑健、「DEATH NOTE」のコンビが送り出す現代の「まんが道」ともいえる「バクマン。」は、2008年より週刊少年ジャンプにて連載を開始。週刊少年ジャンプとしては異色な内容ながら、連載開始と同時に「DEATH NOTE」ファンはもちろん、サブカルチャーファン、クリエイターファンなど、一般読者から業界関係者にまで幅広い層から熱狂的な支持を受け、全20巻で累計1500万部超えの大ヒットを記録した作品。
サイコーとシュージンという高校生2人が組んで、突然漫画家を目指す物語だが、大胆にも週間少年ジャンプに漫画を持ち込む。手塚賞で準入選を果たし、ジャンプでその才能を認められて、ついに連載まで漕ぎ着けるが、そこから人気投票をめぐりライバルとなるエイジとの壮絶なバトルや、漫画家仲間たちとの友情がダイナミックに描かれて行く。
僕はこの映画をわざわざシネコンに行ってまで観たい理由が二つあった。一つは僕自身が小学生、中学生時代に漫画家になりたいと、真剣に思っていたことから(実際にはそこまでの才能があったわけでもないので呆気なく挫折し、NYに転勤になってから漫画への情熱はャbプアート制作に移行して行ったのだが)、中学生当時の自分が漫画に対して持っていた情熱を思い出し、この映画のテーマには妙に惹かれ、共感を持ったのだった。
もう一つは、先日のブログで取り上げた小松菜奈が声優を目指すヒロイン役のあずきとして出演していること。小松菜奈は今僕のイチオシ女優なのである。正直、主演していた『近キョリ恋愛』に比べるとインパクトは薄かったが、それでも映画の紅一点でもあり、最高に魅力的だ。
主人公のサイコーが惚れてしまい、お互いに成功したら結婚しようと約束して、サイコーが漫画家になるとてつもないモチベーションになると言う設定。サイコーとシュージンが描く漫画にも彼女がヒロインとして登場するのである。
シンプルでわかりやすい、情熱に満ち溢れた物語にもあるが、この映画で感動したのは、テレビの視聴率、映画の興行成績、そして漫画の読者ファン投票。一般視聴者からの容赦ない判決はどのメディアにも下され、そこには勝者と敗者が、否が応にも出来上がってしまうシビアな世界。この激しい世界を映画では実にコンパクトながらも躍動する無駄の無いスピード感と、ダイナミックな映像描写で見事に表現しているところがとても斬新であった。特に映像表現に関しては、漫画を描くシーンというのはやや凡兆になりがちだが、これをCGでは無く、プロジェクションマッピングを使って、実に見事な映像表現を生み出しており、このような描写は映画界でも初めてでは無いだろうか。二人が描く漫画に息吹が吹き込まれて、動き出して行く様子が、とてもテン?ヌく、次々と展開されていく様子は圧巻である。
また、サイコーとシュージンがライバルのエイジと対決するシーンは、あたかもお互いにペンや紙を飛ばす形で本当に戦っているかのような妄想世界で表現されており、このアクション描写もまさに斬新であった。なかなか今までこのように描く映画は無かったのでは無いかと思う。
出演陣も実に個性豊かなメンバーが揃った。サイコーには佐藤健、そしてシュージンには神木隆之介。実際にも仲良しなこの二人の見事な化学反応が見事に結実。そして、マドンナ役のあずきが小松菜奈、ライバルのエイジにはこれまた最近役者としても引っ張りだこの染谷将太、編集者には山田孝之、編集長にはリリーフランキー、サイコーの亡くなった父で昔人気漫画家役には宮藤官九郎が扮しており、映画をマニアックに彩っている。
サイコーとシュージンが漫画を描くシーンを観ていて、自分も昔漫画を描くのに夢中だった日々を思い出した。漫画用のペンを買い、ケント紙にえんぴつで下書きをし、そしてペンできれいに清書していく。そして漫画を描く時のテクニックとして定番なのは、背景や特殊効果に用いるスクリーントーンだ。網鰍ッ、ドット、ストライプなど様々なスクリーントーンがあり、シールのようになっているので、漫画のコマ割りに合わせてカッターで切り取り、きれいに貼って行くという地道な作業だが、これがハマると結構面白いのだ。
それにしても『バクマン。』は映画そのものが全体的に漫画のような描写とテンモノなった作品であり、実写で良くここまで表現出来たなー、と本当に感心してしまった。実に斬新な試みの映画であった。
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