昨年公開された『シン・ウルトラマン』も、如何にも庵野秀明らしい、オリジナルへのオマージュたっぷりな作品で、往年のウルトラマンファンも思わず唸った作品だったが、またもや最高の作品にチャレンジしてくれた。今年はあの『仮面ライダー』のリメイク・リブートである。
オリジナルの仮面ライダーといえば、1971年から1973年までテレビ放送されていた石ノ森章太郎原作の実写特撮ドラマだ。僕もほぼリアルタイムで観ていたが、今でも脈々と続くライダーシリーズの元祖である。そして、当時は『ウルトラマン』シリーズや、『人造人間キカイダー』、『秘密編隊ゴレンジャー』と並んで、子供たちの誰もが熱狂しながら観ていた特撮の金字塔の一つとも言える作品だ。赤いマフラーを纏い、カッコいいバイクを乗りこなし、ライダーキックで敵を倒す仮面ライダーは何ともカッコいいが、元々は秘密結社ショッカーが作り出した最強の人造人間ながら正義の心を持った人造人間となった。一つ間違えばショッカーの怪人の一人で終わっていた可能性が高いのだが、そこに人間の血が通うことで真の強さ、真の正義の味方となっていく。この運命を背負った仮面ライダーの哀愁漂う設定は、子供のみならず大人も共感してしまう。
===この先はネタバレも含むので、ネタバレを知りたくない方は読まないようお願いします===
今回リメイクされた『シン・仮面ライダー』は、そんなオリジナルの仮面ライダーの哀愁をそのままオマージュとしてしっかり継承しており、僕のようにオリジナルをリアルタイムで熱狂していた今の50代の、しかも男性には何とも懐かしく、且つ思わずにんまりしてしまうオマージュが満載の作品だ。しかし、さすがに庵野秀明作品だ。令和版として派手なアクションも進化しており、描写はスピード感もあって過激で鮮烈。ショッカーを殴り殺す仮面ライダーの姿は、子供には少し残酷過ぎるくらいだ(今回のシン・仮面ライダーはPG12指定なので、12歳以下は観賞出来ない)。戦いの描写はかなり斬新で衝撃的であった。
そして仮面ライダーの愛車、サイクロン号も過激なマシンとして格段に進化しており、戦う怪人たちもかなり斬新なデザインに。今回はクモオーグ(蜘蛛男)、サソリオーグ、ハチオーグ、コウモリオーグ、カマキリ・カメレオン(KK)オーグ、蝶オーグなどが登場するのだが、怪獣たちも“xx男”や“xx女”から、”オーグ”という名前に変更されている。
主役の仮面ライダー1号、本郷猛を演じるのは池松壮亮、そして仮面ライダーの生みの親である緑川博士の娘、緑川ルリ子を演じるヒロイン役には浜辺美波。
僕は特に浜辺美波が大好きなので今回彼女の役どころを楽しみにしていたが、この映画でもルリ子としての彼女の魅力、そしてその可愛らしさがひと際目立っていたのが印象に残った。
仮面ライダー2号(一文字隼人)も登場するが、2号ライダーに扮するのは柄本佑。
更には政府情報機関の人間として、仮面ライダーに協力を依頼する役に、竹野内豊と斎藤工が、『シン・ウルトラマン』に続き登場するのが面白い。
そして誰が敵役の怪獣たちに扮しているのがが、ずっと情報開示されていなかったが、映画を観て分かったのが、サソリオーグには大森南朋、コウモリオーグには手塚とおる、ハチオーグには西野七瀬、KKオーグには本郷奏多、そしてショッカーのドンこと蝶オーグには、あの森山未来が演じていたのには驚いた。また、ショッカーの人造ロボット”ケイ”の声は、松坂桃李が担当していたのもサプライズであったが、かなり異色で豪華な俳優陣である。
オーグの中で一番びっくりしたのが、ややちょい役で出番は少なめであったサソリオーグを演じていたのが長澤まさみであったこと。彼女も『シン・ウルトラマン』に続き、庵野秀明作品への続投・友情出演的なサプライズ登場であった。
オリジナルの仮面ライダーを観て育った僕の世代には結構マニアックなオマージュも多く盛り込まれており、かなりニヤニヤしながら楽しめた娯楽アクション作品であったと感じたが、あまりオリジナルの仮面ライダーに馴染みの無い人たちには、ややわかりにくい、難解でイマイチなB級映画という風に映ってしまった可能性もある。しかし、この作品には、『シン・ウルトラマン』以上に庵野秀明ならではのマニアックな視点が贅沢に盛り込まれていると感じられ、『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』に続く見事な“シン”型リブートを成し遂げたのではないかと思う。この果敢なチャレンジに敬意を表したい。