物語は、同居する美しい従姉へ寄せる、淡き初恋にも似た青年の憧れを通じ、青春の歓びと悩みを美しく描いている純愛作品。青年を演じるのは山内賢。僕が昔大好きで観ていたドラマ、『俺は暴れはっちゃく!』に先生役で出演していたのがとても強く印象に残っていたが、この作品ではまだ若々しい山内賢が楽しめる。
高校三年生の青年、岡田量介は大学入試を来年に控え、試験勉強に明け暮れていた。母一人子一人の静かな生活を破ったのは、遠い親戚で、国文科を卒業した才女、奈津子だった。彼女の父親が急死した為、量介の家に来ることになったのだ。奈津子は想像していた以上に美しく、岡田家は花が咲いたように明るくなる。同時に奈津子のことが気になる量介は勉強に身が入らなくなっていた。段々奈津子に惹かれて行く量介だったが、奈津子がお見合い結婚をしてしまう。そんな量介も母親を自動車事故で亡くし、そしてこの自動車事故をきっかけに同年代の女性と親しくなるが、奈津子のことがどうしても忘れられない。そんな奈津子も幸せな結婚とはいかず、量介だけを頼りにしていた・・・・・。
この物語を読んだだけでワクワクしてしまうが、まさに“きれいなお姉さん”が、突然現れ、若い青年を虜にする淡い恋の物語。男性なら誰もが一度は憧れるシチュエーションである(笑)。それにしても、この奈津子を演じる芦川いづみの美しいこと!思わせぶりなセリフやスキンシップで、量介を夢中にさせるが、観ているこちらも芦川いづみに夢中になってしまう映画だ。
洋服や着物姿、そして入浴シーンまで(!)大いに楽しめる作品なのだ。
僕は元々1960-1962年頃が芦川いづみの美しさのピークであるとブログに書いてきたが、この1963年に公開された『その人は遠く』を観て、芦川いづみの美しさは1963年も健在であった。良く考えてみれば、1963年には『美しい暦』や『青い山脈』も公開された年で、確かにこの頃の芦川いづみは美しい。しかし、『美しい暦』と『青い山脈』は芦川いづみが主演というわけでは無く、どちらかと言えば主役は吉永小百合と浜田光夫であり、教師役の芦川いづみは2番手。しかし2番手でもその美しさはため息が出るほどであった。しかし、この『その人は遠く』は、完全に芦川いづみの主演作で、完全にメインの役柄。映画を通して殆どのシーンに出ており、その分美しい芦川いづみを観賞出来る時間も長く、最高に楽しめる作品だ。
『その人は遠く』には、吉永小百合、松原智恵子と並んで、“日活三人娘“と呼ばれ、1960年代に青春映画に多数主演し、絶大な人気を誇った和泉雅子も出演している。まだ初々しさが満載の和泉雅子が満喫出来るという点でも嬉しい作品だ。
『その人は遠く』は、これまで観てきた多くの芦川いづみ作品の中でもベスト5に入る作品であり、何度も見直したいと思える作品であった。まだ見ぬこのような素晴らしい作品を観賞出来るというのは何とも幸せなことである。引き続き芦川いづみ主演映画をもっと発掘して行きたい!
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