ここ数週間で『その名は101』、『ダイモス』、『バビル2世』などの超能力者シリーズを読み直してみたが、今度はジャンルの違う、魔女っ子ものを読んだので紹介したい。
1966年に連載が始まった横山光輝の傑作少女漫画、『魔法使いサリー』は、その後赤塚不二夫の代表作『ひみつのアッコちゃん』や、『魔女っ娘メグちゃん』など、東映魔女っ子シリーズの第一作であり、魔法少女ブームの先駆的な漫画であった。この背景には、1964年に欧米での放映が始まった『奥様は魔女』、1965年に放映開始となった『かわいい魔女ジニー』などが大ヒットし、この波は日本にも押し寄せ人気を博したのを受け、日本でもジャンルとして確立されたのである。横山光輝の『魔法使いサリー』は1966年に放送開始となり、マンガとアニメで共に大ヒット。また、横山光輝自身も、後に『コメットさん』を描いており、こちらは実写ドラマにもなって、第二期で大場久美子を一躍スターに押し上げたのだ。
このように、日本の少女漫画の世界に魔法少女ブームを巻き起こした『魔法使いサリー』だが、なんとこの原点となる『ちびっこ天使』という作品を横山光輝は1963年には、既に描いていたのである。
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ちびっこ天使はこんなストーリーである。
天使の卵、チルルとマルルは、天帝さまの言いつけで、善悪を知るために地上に修行に行かされた。チルルは夢野チー子と名乗り、初めて知り合ったすみれの学校に転校生として入った。卵とは言っても天使の素質を備えたチルルは、勉強もできるし、先生の考えていることも解ってしまう。友だちになったすみれの家は、お父さんが病気で、お金に苦しんでいたので、宝くじを当ててあげた。一方マルルは少年の姿をして、銀行ギャングの片棒を担がされていた。いいことだと言われ、銀行から金を盗む手助けまでした。だが、学校の先生に悪いことだと教えられ、今度はその金をすべて銀行に返し、ギャングは警察に捕まる。二人にとって、何がいいことで何が悪いことなのかよく分からないことも多かった。ある日、猛烈なスピードを出した車が、犬をひき逃げしていった。男の後を追ったチルルは、男に文句を言う。男は、梼Yしそうな会社の経営者で、不運続き、大きな悩みを抱えていたのだ。そのとき男の背後に黒い影がチルルには見えた。悪魔だった……
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半世紀ほど、この作品は単行本化されていなかったが、昨年漸く初の単行本化が実現した、まさに“幻の横山光輝作品”であった。登場する魔法少女チー子は、サリーに先駆ける魔法少女であった。サリーよりも年齢が低く、より無邪気な少女魔法使い(実際は天使だが)として描かれているのがなかなか面白い。後のサリーに通ずるキャラクター要素を持っており、幾つかのシーンは、サリーと同じような描かれ方をされていて、比較するのも面白い。サリーの原型として楽しめる作品となっている点で大変興味深い。
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しかし、本作を改めて読んでみて感じたが、横山光輝の作品は流れるようなキャラクターの動きや、早いストーリー展開における細かい描写が実に見事で、まるで動画を見ているように美しいし、読んでいて気持ちがいい。どんどん物語の中に引き込まれてしまうのである。これは超能力もの、ロボットもの、忍者もの、そして魔法少女ものであっても一貫した横山光輝ならではのスタイル。また、女の子の描き方も上手であり、絵がとてもキレイなのも特徴的だ。
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しかし、魔法少女というジャンルもある意味全ては『魔法使いサリー』から始まり、今でもプリキュアシリーズのような形で脈々と受け継がれており、世の中の少女たちを楽しませ続けているという意味で、横山光輝の功績は凄いものがあるし、益々『ちびっこ天使』の存在が光輝いて見えるのである。