先日の『東京の人』に続き、再度神保町シアターに出かけ、今度は『白い夏』を鑑賞してきた。前回も書いたが、今回の芦川いづみ映画祭は、まだ観ていない2本の芦川いづみ作品を観ることに特化しており、その2本が『東京の人』と『白い夏』だったので、今回の目標達成である (その他公開されている18本は全てDVDで持っているのだ)。
今回は平日の夜の回に参戦したので、比較的空いていたが、またもや整理券3番で逸早く入場。相変わらず観客は老人が中心だが、僕と同年代と思われる中年もちらほら(笑)。
『白い夏』は1957年の日活モノクロ作品で、原作は新田次郎。房総の海岸町を舞台にしている。物語は、学窓を離れ、房総の海岸町にある郵便局に就職した純情青年・伊野君(青山恭二)を中心に展開する。その町で三人の女性と知り合うことになるが、一人はお色気濃厚の芸者・玉奴(高友子)、清純で美しい局長の娘・麗子(芦川いづみ)、先輩久礼(近藤宏)のガールフレンドである看護婦のよし(中原早苗)が登場する。伊野君は麗子のことが好きだったが、麗子は町の権力者で、次期町長の座を狙う花山が見初めた相手であり、なかなか気持ちを伝えられない。そんな中、よしから言い寄られ、気持ちが揺れていくというもの。
僕は昭和の当時の雰囲気が味わえるという意味で、都会を舞台にした日活作品が結構好きなので、正直田舎の海岸町を舞台にした『白い夏』は全体的に地味な作品であり、あまり好きなタイプの映画ではない。舞台が地味で、全体的に主演俳優陣も華には欠ける。しかし、主人公と女性3人との絡みが面白いし、色々なハプニングが起こりながら物語が進んでいくのでそれなりに映画としては楽しめる。そして芦川いづみ作品でも常連の中原早苗はなかなかいい味を出している。個人的に中原早苗は全く好みのタイプでは無いが、可憐なお嬢様タイプの芦川いづみとは対照的な、オープンで今時の元気な女性役が多いので、対比という意味ではいつも面白い役どころだ。
そして、やっぱりなんと言ってもこの映画一番のお目当ては芦川いづみである。そしてこの地味な映画の中でも、芦川いづみの可憐さ、美しさは目を見張るものがあった!可憐で、ちょっと勝気で、純粋な役柄を演じさせたら芦川いづみに勝る女優はいないのではないかと思う。1957年頃の芦川いづみは、まだ初々しさがあり、人気のピークを迎える1959-1962年頃の成熟した芦川いづみともまたちょっと違ったフレッシュさが魅力でもある。
結論として、『白い夏』を初めて観ることが出来てとても嬉しかったし、まだ見ぬ芦川いづみを、大きなスクリーンで確認出来たことは、ちょっと大げさかもしれないが、自分にとっても感慨深いものとなった。『東京の人』と合わせてDVD化されることをぜひ期待したい!