毎年、年明けから春にかけて開催している(笑)、恒例の『芦川いづみ祭り』。芦川いづみの大ファンである僕は、随分とたくさんの芦川いづみ作品を観賞してきたし、所有するDVDの数もかなり凄いことになってきた。それでも、まだ観ぬ芦川いづみ作品がまだまだあるから驚きだし、祭りが続くのも何とも嬉しい。
今年の1月、日活110周年記念として、また新たな日活映画作品がDVD化された。その中で今月発売された1枚が、宍戸錠、芦川いづみ共演の『気まぐれ渡世』。1962年に劇場公開された日活カラー作品で、今回ついにオリジナルネガフィルムからのテレシネ・オーサリングによるHDリマスター版として、感動の初DVD化である!カラーでキレイな映像はなかなか見応えあり。
1962年と言えば、僕の大好きな芦川作品である『堂堂たる人生』、『青年の椅子』などの石原裕次郎作品で共演していた年だ。1957年から1962年頃は多くの石原裕次郎作品で共演していた時期で、まさに芦川いづみの絶頂期でもあった。芦川いづみは石原裕次郎以外にも、小林旭、赤木圭一郎など、常に時代を代表する日活俳優との共演を果たしているが、そんな中で本作は売り出し中であった“エースのジョー“、こと宍戸錠主演のハードボイルド・ギャングもの作品で、なかなか異色の映画である。
宍戸錠が赤ん坊と尼さんを相手に、ギャングの悪謀に立ちむかう痛快アクションで、才匠・西河克己の監督作品。宍戸錠が天真爛漫の赤ん坊を背負って大暴れする異色作なのだが、粋なスタイルと人情味溢れた都会ムードの中に、男の意地と闘魂を爆発させる。
若き宍戸錠が細マッチョでなかなかカッコいいのだが、やっぱり僕のお目当てはなんと言っても、美しい教会の尼さんに扮した芦川いづみだ。芦川いづみ作品の中でも貴重なコスプレ(笑)となっている、可憐なシスター姿も魅力いっぱいで素晴らしいのだ。宍戸錠をあしらいながら、赤ん坊をあやす様は本作ならではの見どころである。
そして、なんと芦川いづみがシスター姿でピッチャーとして子供たちと野球をするシーンもあるが、これも貴重な映像である。
特殊拳銃の密造者に内田良平、妖艶な謎の女に香月美奈子、捜査課長に加藤武、敏腕刑事に藤村有弘、といった個性的なキャストも勢揃いしている。
映画の冒頭、今でも不二家とアメリカ屋靴店のある銀座有楽町の数寄屋橋交差点なども確認でき、当時の東京の街並みがわかるのも楽しい昭和の歴史遺産である。
映画を観賞した感想だが、正直、映画そのもののプロットとしてはさほど面白いわけではなく、良くあるギャング・アクション作品。最後はギャングのアジトで大立ちまわりを演じて映画はハッピーエンドを迎える。同じギャングものでも。やっぱりアクションに華があった石原裕次郎作品に比べると、どうしてもイマイチ感は否めない(宍戸錠には大変申し訳ないが)。
芦川いづみは出演キャストの中では2番手の扱いで、確かに登場シーンもそこそこ多いが、役柄としてはシスターであること以外はあまりアクションに絡むわけではなく、その意味ではギャングものの本筋からするとやや退屈な役どころとも言える。しかし、美しきシスター姿があまりにもインパクト大で、結局退屈な物語を芦川いづみが完全に食ってしまった感すらあるからさすがである。その意味では、やっぱり芦川いづみは偉大だし、この映画もまぎれも無い“芦川いづみ作品”だと感じた。
2月3日には、また新たに1958年に公開された『知と愛の出発』という作品も初DVD化される。こちらも今から楽しみで仕方ないし、また次回以降の“芦川いづみ祭り2023“で取り上げたい。上手く言葉では伝えられないが、今年もまた多くの新たな芦川いづみ作品と初めて巡り合えるこの喜びは、芦川いづみファンとしては何事にも代え難い感動なのである!