阪和道を堺市から貝塚市まで走行し、一般道を通って帰るという、小さな旅行を計画しました。白雲の浮かんだ青空、山並が見え、木々が美しければ、妻と二人車の中で十分に楽しめます。岸和田のサービスエリアが二人のちょっとしたお気に入りです。ちょうど紅葉が美しく、小さな日本庭園が眺められ、店員さんも明るい、レストランで昼食をとりました。食後、庭園を散策しながら、水辺に映る竹と泳いでいる金魚の群れを見て喜び、SAに作ってある小さな岸和田城を紅葉越しに眺めては、「ここから見るのがいいわ!」と言う妻に合槌を打ちながら、写真を撮っていました。時を過ごしていました。二人にはちょうど良い外出でした。
定年になって時間に余裕が出来たら妻と旅行を、と考えていましたが、妻の認知症が進行するにつれて、二人で行動できる範囲は次第に狭くなってしまいました。7年前に働きに一区切り付けていったん退職した時に、大阪から北海道までのんびりとドライブした2週間が、妻との最も長い旅行となりました。 その後、1,2泊の休暇で出かけることはありましたが、最近では一泊することも難しくなってきています。先日、東京での息子の結婚式にも、日帰りで行きましたが、それも私が少し目を離した間に東京で数時間妻を捜すようなこととなってしまいました。
そのような状況ですが、最近、なぜ妻と旅したいと思っているのか、私の気持ちについて考えていました。そして、感動を共有して会話が弾み夫婦で喜び合う時が持ちたい、と思っていることに気が付きました。そして、妻の喜びが私の喜びであることを再確認出来ました。その結果、私たちに関していえば、小さな旅行を数多くする方が良いのでは、と考えるに至りました。喜ぶ場所であるなら、同じ場所でも、前に行ったことは忘れてしまいますから、問題はありません。ですから、季節に合わせて場所を選びます。当たり外れはありますが、落ち葉があるだけでも喜べる人ですから、あまり気にしないで、きままに選んでいます。
43年間、良い夫婦だったとは言えないけれど、妻が感動することに私もなるだけ関心を持つように心して来ました。その結果、行きなれた所への旅でも、妻とともに楽しむことが出来るようになっています。食べ物に関しては、豪華な食事でなくても、一杯のきつねうどんでも喜べる二人ですから、食事処を探さなくて済みます。特に最近は、少し高級レストランに行って「美味しい!」と食べ始めても、食べきることが出来ないのが嬉しくないようですから。