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誰も幸せにならず、誰も救われない小説「告白」に対する私の好意的な告白について

2024-07-07 09:00:06 | 書籍/小説・エッセイ


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【タイトル】告白
【著者】湊かなえ
【出版社】双葉社
【版型】文庫
【読了日】2024年7月5日(金)
【ストーリー】「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」
我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。
語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。
(以上、双葉社のホームページから転載)

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【感想】今さら感が否めない、今さらながらの湊かなえ、今さらながらの告白。

第一章“聖職者”で教師の森口悠子の告白に衝撃を受けながらも、今後の展開への期待感は大いに高まる。

第二章“殉教者”では、クラス委員の北原美月が森口へ宛てた手紙の形式で書かれる。
森口が退職したあとのB組の混乱ぶりが紹介される。
後任のウェルテル先生の空気読めない感と空回り感が、痛々しくも憎めない。

第三章“慈愛者”は加害者の一人、下村直樹の母親の日記という形で話は進む。
母親の息子に対する一方的かつ激しい思い込みが、息子と自分を追い込んでいく様が描かれる。
慈愛者は盲目者でもあったのだ。

第四章“求道者”では、下村直樹が施設内の壁に映り出される自分の過去を、第三者として見つめながら紹介していく。
現在、自分が置かれている立場は悪い夢だと思っており、早く覚めることを願っている。
直樹クンは、完全にイっちゃっていた。

第五章“信奉者”はもう一人の加害者、渡辺修哉が自分のサイトにアップした記事というスタイルで描かれる。
母親に捨てられた修哉は、その母に会いたい、認められたいという身勝手な理由で、森口の娘を殺めるまでの経緯が綴られる。
修哉の母親もイカれていて、息子に同情する気持ちも若干あったり、なかったり…。

そして第六章“伝道者”で、修哉への森口からの電話という形式で結ばれる。


ワタクシ、牛乳への仕込みは、犯人の二人を精神的に追い込むための狂言だったと思っていた。
教師であるから、いくら娘を殺した生徒とはいえ、命を奪うような暴挙に出ないと思っていた。
ところが、実際にはそんな生やさしいものではなかった。

森口悠子も実は、相当に狂っていた。
渡辺や下村となんら変わらず常軌を逸していた。
娘への報復が、他者を巻き込むことへの罪悪感を打ち消している。

この物語は、誰一人幸せにならず、誰も救われない。
さすがは“イヤミスの女王”と呼ばれる湊かなえの作品である。
女王の面目躍如だ。

しかし、私の読後感は決してイヤな気持ちではなかった。
張り巡らされた伏線を回収する過程は、かなり楽しめた。
最後の驚愕の展開は、やや大雑把に感じたが身も蓋もないオチで悪くなかった。

私自身、初めての湊かなえだったが、他の作品も読みたくなった。
もっとドロドロしてグチャグチャでもいい。
読んでいて

俺の心まで病みそう…

と危機感を覚えるくらいの作品と出会いたい。

もっともっとイヤが気持ちで本を閉じたい。
そう願っている時点で、私はすでに病んでいるのかもしれないね。テヘヘ(←テヘヘじゃないわ!)。

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読後感じたイヤミス度:★★☆☆☆
愛美ちゃんへの憐れ度:★★★★★
渡辺への復讐の荒唐無稽度:★★★★★
予想の上をいった完成度:★★★★☆

コメント
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