偏平足

里山の石神・石仏探訪

里山の石神端書155 板碑(埼玉県越生町)

2023年01月20日 | 里山石神端書

埼玉県越生町越辺川・大満の大満寺

 大満集落の奥に建つ大満寺は曹洞宗の寺、六地蔵が迎えてくれます。


 境内から墓地に入るところに板碑が立っています。頭に阿弥陀如来の種字キリークを入れた高さ138センチの板碑です。銘は「十佛土中唯有一乗法/崇性禅門延文五庚子(1360)七月二日/無二亦無三除佛方便」。

 板碑は死者の追善供養、生前の逆修供養のため、鎌倉期から戦国期まで造立された石卒塔婆です。
 「十佛土中…無三除佛方便」は法華経方便品第二にある偈頌(げじゅ)で、板碑に刻まれた偈頌では多い文言です。その理由として小花波平六氏は「板碑造立の趣旨によく合致しており、通常人々に親しまれ、誦され、また、死者の供養をはじめ諸種の回向や諷誦・敬白などに、多く用いられているから」(注1)としています。意味は「十方仏土中には、唯一乗の法のみあり、二も無く亦三もない。仏の方便の説を除く」。十方はあらゆる世界で、一乗は法華経。仏のあらゆる世界で唯一は法華経であると説いています。
 「崇性禅門…」の崇性禅門は戒名、延文五年七月二日に亡くなった僧侶だと思います。追善供養板碑の戒名について千々和到氏は、追善供養板碑は時代が下るにつれて墓碑的板碑へ変化していく(注2)ことを指摘しています。
(注1)小花波平六著「板碑の偈文」坂詰秀一編『板碑の総合研究』1984年柏書房
(注2)千々和到著『板碑とその時代』1988年平凡社選書
(地図は国土地理院ホームページより)


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