上野原市秋山小和田・山ノ神宮の三十番神
鎌倉時代に鎌倉街道の裏街道が通っていたという秋山。小和田の法泉寺入口には大きな「萬霊塔」が立っていました。
法泉寺は臨済宗建長寺派の寺でただいま無住。寺の手前に建つ山ノ神宮の境内に、「奉納三十番神十羅刹女」銘の石燈籠の竿石が倒れていました。
「三十番神」は法華経守護のため、30日間のそれぞれの日に当てられた日本の神々。比叡山の神が複数含まれていることから、最澄が比叡山に祀ったのが始まりとの説があり、中世の日蓮宗が法華経の守護として取り入れて普及した。
一方「羅刹女(らせつにょ)」の羅刹は人を食うという鬼神の梵語。羅刹女は人を食う鬼女で、鬼子母神(きしもじん)もその一人です。これが十人集まったのが十羅刹女。その役目は法華経の守護で、ここに鬼子母神は含まれていません。鬼子母神も法華経の守護が役目ですが、安産・育児の仏として信仰されています。
かつては臨済宗法泉寺が別当寺だったと考えられるこの山ノ神宮に「三十番神十羅刹女」銘の石造物が造立された背景は不明。秋山村の信仰をまとめた『ふれあい 村の晨光』(注)には「明治元年までは三十番神(法華宗を守護する神)といわれていたが法華三十番神の称を禁止する御沙汰により神仏混交を廃し山ノ神宮とする」とありました。
(注)『ふれあい 村の晨光』昭和60年、秋山村教育委員会
(地図は国土地理院ホームページより)