里山の石神端書112 小海町小海・宿渡お子安さまの寒の坊
小海地区の寺社を訪ねた最初、お子安さん(子授け子育てのお堂)の入口に並ぶ5基の石造物のなかに、胸から太鼓のような鉦を下げ、右手にバチのような槌を持つ丸彫りの石仏に出会いました。すぐ「寒の坊」だと気づきました。
これが寒の坊か! 写真では何度も見ていましたが対面するのは初めてでした。
寒の坊は20数年前の『日本の石仏』(注)に岡本知彦氏が詳しく紹介していたのが印象に残っています。それによると、寒の坊は寒念仏の人たちが建てたいろいろな石造物のなかでも、江戸時代の天明期(1781~89)前後の短い期間南佐久地方にだけ造立された石仏です。特徴の一つは念仏に必要な鉦と槌を持つ6臂の観音風丸彫り像。土地の古老が「かんのぼさま」「かんのばさま」などと呼んでいたところからの名称です。
宿渡の寒の坊は高さ55センチ。この後訪ねた小海の路傍で何体かの寒の坊に出会いました。
お子安さまは、山の中腹にある巨石を乳房に見立てて御神体としたものです。
(注)岡本知彦著「寒の坊―民衆の手になる観音風寒念仏塔」『日本の石仏』№95、2000年、日本石仏協会
(地図は国土地理院ホームページより)