偏平足

里山の石神・石仏探訪

里山の石神端書259 延命地蔵(千葉県長柄町)

2024年01月25日 | 里山石神端書

長柄町水上川流域の田代・本光寺の延命地蔵

 長柄町は千葉県の中央部の街。一宮川の支流水上川流域を訪ねました。本光寺は曹洞宗の小さな寺、寺の先に石造物が並んでいました。そのなかに目立つのが地蔵菩薩と石幢です。


 地蔵菩薩には立像・坐像がありますが、坐像で左足を下に垂れた延命地蔵もあります。本光寺の地蔵は光背や両手が欠けていますが、形の整った延命地蔵です。延命地蔵は日本で生まれた姿とされていて、地蔵を頼る人はこの足を立ちあがるための一歩踏み出す姿と見ました。『日本仏像辞典』(注)では「延命地蔵の名はインド成立の経典の中にはなく、『延命地蔵経』は和製の偽経とされている」とあります。地蔵の信仰の一つは子供の健全は生育を願うもので、延命地蔵の立ち上がろうとする姿は、一時でも早く救済してくれると見えたはずです。「明和五戌子(1768)」の造立。


 石幢は単性の幢身の六面に素朴な地蔵を彫りこんだもので、地蔵の持物も刻まれています。なかでも可愛らしい天蓋が際立っています。中国から入り鎌倉期から造立されてきた石幢は各地に中世のものが残っています。造立当初は各面に金剛界五仏や阿弥陀などを刻することもありましたが、中世は釈迦の教えだけが残る末法の時代です。そこで活動するのは地蔵菩薩だけと説かれていましたから、地蔵の人気があがって、石幢に地蔵が彫られるようになったようです。
(注)『日本仏像辞典』真鍋俊照遍、2004年、吉川弘文館
(地図は国土地理院ホームページより)


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