線引きということ
投稿日:2013年5月18日 by 諸泉 悦子 カテゴリ: 土壌・空気・海・河川の汚染
原発事故は大量の放射能を飛散させ、人々は避難を余儀なくされました。県内への避難は約99,000人、県外は55,610人(2013年4月4日)。年間放射能線量が20ミリシーベルト(mSv)を超える地域からの強制避難者には国のさまざまな補償がありますが、他の地域からの自主避難には東電からのわずかな見舞金だけです。しかも県外への自主避難者には、避難先での住宅補助などがありましたが、県内自主避難者にはなく、それぞれの支援の差が問題とされてきました。
福島県は2012年11月に、県内自主避難者に対する家賃補助制度を発表しましたが、同一市町村内での避難や、18歳未満の子供がいない世帯は対象外となりました。自主避難したくてもできない家庭が多数あるということも実情です。
そして県外への自主避難への家賃補助は同年12月28日をもって新規受付が終了。「長女の中学卒業を待って、避難するつもりだった。市内の放射線量は除染した後も高いまま。ところが、制度が変わってしまった。これでは避難できるのは、お金がある人たちだけに限られてしまう」(郡山市)と、切実な声もあります。
県内からは、自主避難者に対し「騒ぎすぎだ」「勝手に避難した」など、厳しい目で見られがちです。国や県は、福島に残りあるいは帰還することを促しています。
年間20mSvという『線引き』が自主避難を生み、あるいは避難をさまたげています。そして、県内に分断を生んでいるのです。経済産業省は「100mSv以下の被ばくによる発がんリスクは他の要因による影響によって隠れてしまうほど小さい」と言い出しました。国の補償制度や分断による負い目などが、自主避難する・しないの自由を奪っています。子どもを守りたいという『思い』に、国が『線引き』をすることは許されません。
< 解説 >
届け出のあった人の、県内から県外の避難者
下のグラフは、毎月復興庁から各県に報告される避難者数から、福島県が独自に作成した資料をもとに作ったものです。
2013年4月4日現在までの県外避難者数の推移を表します。震災から1年の、2012年3月8日データの62,831人をピークに、現在まで避難者数は少しずつ福島に帰還し、ピークから89%になっています。特に、東北の周辺県からの帰還が多いです。
避難者数には、居住区の放射能問題、あるいは津波・地震によるものも含まれますが、内訳は不明です。県内インフラの復興や避難者住宅の増化による帰宅者も多いと思われますが、全体では高線量地域が広く、帰宅困難が続いています。県外避難先での借り上げ住宅は、当初来年3月までが無償の期限でしたが、福島県から全国に期間延長申請がされています。
ここに出ている数値はあくまでも「届け出のあったもの」であり、実際の数値ははるかに多いと思われます。今年3月にNHKで放送された「福島のいまを知っていますか」では、避難総数15万人以上、うち自主避難は7万人、と推定しています。
< 関連資料 >
経産省『年間20ミリシーベルト の基準について』
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/130314_01a.pdf
「十勝毎日新聞 避難生活、のしかかる負担」 (2013/03/10)
自主避難者は福島県からとは限りません。関東圏にはホットスポットと呼ばれる、局地的な高線量地区もあり、実数はつかめませんが、県外からの全国への自主避難者も多くいます。
http://www.tokachi.co.jp/news/201303/20130310-0014982.php
「こども検診医療基金 関西」
それらの人たちには医療費などの補助が無いため、子供の甲状腺検査を受けられない人もいます。甲状腺エコーを受けるには自費診療となり、子ども1人につき2万円以上が必要です。検査は定期的に受ける必要があります。この基金は関西で設立されました。
http://kodomokenshin.com/index.html
「自主」避難者・避難せず滞在する住民の状況について」(2011/10/20)
文科省の資料です。福島県いわき市の弁護士による、相談を受けた自主避難者の実態に関する資料です。この中で一番重要な訴えが一番最初に書かれています。
「自主」避難ではない
⇒誰も自主的に逃げた訳ではない。子どもたちの命を守るために必死で逃げた。これが被災受忍限度の範囲内の損害であり、東京電力に賠償する義務が無いはずはない。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/10/20/1312358_6_1.pdf
投稿日:2013年5月18日 by 諸泉 悦子 カテゴリ: 土壌・空気・海・河川の汚染
原発事故は大量の放射能を飛散させ、人々は避難を余儀なくされました。県内への避難は約99,000人、県外は55,610人(2013年4月4日)。年間放射能線量が20ミリシーベルト(mSv)を超える地域からの強制避難者には国のさまざまな補償がありますが、他の地域からの自主避難には東電からのわずかな見舞金だけです。しかも県外への自主避難者には、避難先での住宅補助などがありましたが、県内自主避難者にはなく、それぞれの支援の差が問題とされてきました。
福島県は2012年11月に、県内自主避難者に対する家賃補助制度を発表しましたが、同一市町村内での避難や、18歳未満の子供がいない世帯は対象外となりました。自主避難したくてもできない家庭が多数あるということも実情です。
そして県外への自主避難への家賃補助は同年12月28日をもって新規受付が終了。「長女の中学卒業を待って、避難するつもりだった。市内の放射線量は除染した後も高いまま。ところが、制度が変わってしまった。これでは避難できるのは、お金がある人たちだけに限られてしまう」(郡山市)と、切実な声もあります。
県内からは、自主避難者に対し「騒ぎすぎだ」「勝手に避難した」など、厳しい目で見られがちです。国や県は、福島に残りあるいは帰還することを促しています。
年間20mSvという『線引き』が自主避難を生み、あるいは避難をさまたげています。そして、県内に分断を生んでいるのです。経済産業省は「100mSv以下の被ばくによる発がんリスクは他の要因による影響によって隠れてしまうほど小さい」と言い出しました。国の補償制度や分断による負い目などが、自主避難する・しないの自由を奪っています。子どもを守りたいという『思い』に、国が『線引き』をすることは許されません。
< 解説 >
届け出のあった人の、県内から県外の避難者
下のグラフは、毎月復興庁から各県に報告される避難者数から、福島県が独自に作成した資料をもとに作ったものです。
2013年4月4日現在までの県外避難者数の推移を表します。震災から1年の、2012年3月8日データの62,831人をピークに、現在まで避難者数は少しずつ福島に帰還し、ピークから89%になっています。特に、東北の周辺県からの帰還が多いです。
避難者数には、居住区の放射能問題、あるいは津波・地震によるものも含まれますが、内訳は不明です。県内インフラの復興や避難者住宅の増化による帰宅者も多いと思われますが、全体では高線量地域が広く、帰宅困難が続いています。県外避難先での借り上げ住宅は、当初来年3月までが無償の期限でしたが、福島県から全国に期間延長申請がされています。
ここに出ている数値はあくまでも「届け出のあったもの」であり、実際の数値ははるかに多いと思われます。今年3月にNHKで放送された「福島のいまを知っていますか」では、避難総数15万人以上、うち自主避難は7万人、と推定しています。
< 関連資料 >
経産省『年間20ミリシーベルト の基準について』
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/130314_01a.pdf
「十勝毎日新聞 避難生活、のしかかる負担」 (2013/03/10)
自主避難者は福島県からとは限りません。関東圏にはホットスポットと呼ばれる、局地的な高線量地区もあり、実数はつかめませんが、県外からの全国への自主避難者も多くいます。
http://www.tokachi.co.jp/news/201303/20130310-0014982.php
「こども検診医療基金 関西」
それらの人たちには医療費などの補助が無いため、子供の甲状腺検査を受けられない人もいます。甲状腺エコーを受けるには自費診療となり、子ども1人につき2万円以上が必要です。検査は定期的に受ける必要があります。この基金は関西で設立されました。
http://kodomokenshin.com/index.html
「自主」避難者・避難せず滞在する住民の状況について」(2011/10/20)
文科省の資料です。福島県いわき市の弁護士による、相談を受けた自主避難者の実態に関する資料です。この中で一番重要な訴えが一番最初に書かれています。
「自主」避難ではない
⇒誰も自主的に逃げた訳ではない。子どもたちの命を守るために必死で逃げた。これが被災受忍限度の範囲内の損害であり、東京電力に賠償する義務が無いはずはない。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/10/20/1312358_6_1.pdf