◆「公」としての米国と「無責任の体系」(その1)◆
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日本政治の劣化が凄まじい。それは同じ日本人として寂
しくなるほどのものだ。
中国が新しい防空識別圏を設定した。防空識別圏とは、
外国の不審機が接近した際に緊急発進を行う基準となる
空域のことである。
中国は、「防空識別圏内を飛行する航空機は、飛行計画
を中国外務省又は航空当局に提出する義務を負う」とし
た。
米国は「東シナ海の現状を変えようとする一方的な行動
だ」(米ケリー国務長官)とし、また「今回の中国の発
表を受けても、この地域で米国がどのように軍事作戦を
遂行するかには一切変更はない」(米ヘーゲル国防長
官)として認めないとした。
しかし現実的に不測の事態が起きて自国民に危険が及ぶ
ことを考慮して、米国の民間機に対しては中国当局に飛
行計画書を提出するよう求めた。これでいいのである。
日本の全日本空輸と日本航空は、11月25日に、中国当局
に飛行計画の提出を始めた。両社は「提出しないと緊急
発進(スクランブル)を受けかねない」(日航)として、
中国側の要請に従うことを決めたのである。
ところが、ここから劣化した日本政治が顔を出す。日本
政府は、「中国当局に飛行計画を提出すると、防空識別
圏を認めることになる」として、日本の航空各社に対し、
飛行計画書の提出には応じないよう要請した。そのため、
一時は計画書を提出していた各社も27日以降は提出して
いないのである。
この彼我の違いは決定的である。
この問題を整理しておくと次のようになる。
1 これで日中の偶発的な武力衝突と開戦の可能性が高ま
った。
2 日本政府は、偶発戦を避けると口ではいいながら、具
体的現実的な対応では、逆に可能性を高める政策をとっ
た。戦略がないのである。
3 米国は、11月26日に、直ちにアメリカのB52爆撃機2機
が防空識別圏を航行するなどの意思表示をしながら、政
治としては米中関係を維持するという、軍事と政治を明
確に分けた対応をとっている。
わたしは、この一件での、日米両政府の対応の違いに見
て、3.11直後の自国民への避難指示を思い出した。米
国政府は正確な情報に基づいて80キロ圏内の住民を避
難させた。ところが日本の菅政権がとった対応は、どの
外国政府とも違って3キロから始まり、小出しに10キロ、
20キロと拡大する冷酷なものだった。
自国民の安全への自覚が皆無なのだ。賠償金の算盤勘定
をしていたのである。
今後、この空域を飛ぶ日本の民間機は、日中両国のメン
ツの犠牲に供されることとなる。国家利害が私的利害に
優先し、自己犠牲が不条理に強制される。戦前・戦中は
呆気なく復活したのである。
かりに飛行機が撃墜されても誰も責任はとらない。政府
も、民間会社も。誰も責任をとらない戦中日本の「無責
任の体系」(丸山真男)は、牢固として現代日本に生き
残っていたのである。
ちなみに軍部が政治を凌駕して、国民が幸せになった時
代はない。中国・米国・日本とそのようになっている。
世界で、現在、もっとも危険な地帯は東シナ海である。
その際、最も危険な要因は、日中とも戦争を知らない世
代が権力を握っていることだ。
現在の日本政治は、非常に単純なうえに間抜けであると
いわねばならない。例えば世界中が知っている汚染水漏
れに対して、安倍晋三は、IOC総会で、福島第1原発事故
を完全にコントロールしており、汚染水をブロックして
いる、と真っ赤な嘘をついた。オリンピック招致のため
に嘘をついたわけで、非常に単純で間抜けでわかりやす
い。
領土問題が紛糾すると、韓国とも中国とも外交チャンネ
ルを失う。これも非常に単純で間抜けでわかりやすい。
この単純で間抜けな政治が、唯一、価値判断にしていて
ぶれないのが、米国への隷属である。現在の日米同盟の
実態は、日米共同体に深化し、さらにそれが、日本は、
米国の利用対象国にまで深化してきている。
米国にとって日本のトップは、どんなおバカでもいいが、
米国益に外れるおバカは許さない、そういう利用対象国
なのである。
その利用対象国としての日本政治の体たらくを、「唖然
だ」のみんなの党と日本維新の会、それに公明党に見て
おこう。
(「その2」に続く)
今日も最後まで読んでくれてありがとうございます。
年々にわが悲しみは深くして
いよよ華やぐいのちなりけり
岡本かの子
また、面白い文章を書きますね。
みんな、あしたこそ、幸せになあれ!
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あとがき
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