8月22日、日本政府は、東京電力福島第一原発敷地内に貯留されている「ALPS処理汚染水」の海洋放出を気象や海象条件などに支障がなければ、今月の24日にも開始することを発表しました。
グリーンピース・ジャパンは、 2023年8月17日、汚染水の海洋放出に反対する署名36,334筆を経済産業省に、原子力発電所に反対する署名18,642筆を内閣府に提出しました。
「放射能汚染水を海洋放出しないで」署名を経済産業省の担当者に提出しました。
日本政府および東京電力は、漁業関係者や住民、太平洋地域や近隣諸国の懸念を押し切って、放射性物質を含むALPS処理汚染水を海に放出する決断に踏み切りました。あらゆる問題を山積みにしたまま、数日のうちにも海洋放出が開始するかもしれないこの状況に、憤りを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
グリーンピースは8月17日、54,976筆の署名を、国際環境NGO FoE Japanなどが主催する政府・東電との討論会の場などで政府に提出しました。また8月18日には、市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」が、首相官邸前にて行った汚染水の海洋放出に反対する要請行動に参加しました。
8月18日の「これ以上海を汚すな!市民会議」主催の抗議集会
放射性廃棄物の海洋放出は、福島第一原発の廃炉計画の失敗を明らかにしています。いったん海に流された放射性物質は決して回収できません。一方で、汚染水の発生を止める有効な手段はとられていないままです。放射性廃棄物を意図的に放出し、海を汚染するという選択は、日本の数十年にわたる原発政策が招いたものです。
署名提出、討論会でわかったこと
グリーンピースが政府に署名を提出した2023年8月17日、市民と政府および東京電力との討論会がありました(国際環境NGO FoE Japan主催)。経産省、原子力規制庁、東京電力から10名以上が出席し、市民側は放出に反対する福島県民、オンライン参加者も含め多くの参加がありました。
8月17日の市民と政府・東京電力の討論会 © Ryohei Kataoka / Greenpeace
2015年、政府・東電は、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わず、他核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留します」と文書で約束しています。討論会で「この約束は守られるのか」と問われた際には、はっきりと「守る」と回答していました。それにもかかわらず、海洋放出を推し進めようとする政府の不誠実な姿勢は、到底受け入れられるものではありません。
また、討論会では、グリーンピースはじめ、多くの研究者らが提案してきた陸上に保管する代替案について、ほとんど議論されていなかったことが改めて浮き彫りとなりました。東電は「モルタル固化処分案」については「ALPS小委員会においても検討が行われている」と回答しましたが、検討されたのは地下に埋設する別の方法についてであり、さらにそれも2行書いてあるだけで、会議資料にも議論の記録はありません。
処理費用と期間も大幅に膨れ上がっています。様々な処理方法が検討されていた2018年の時点で、海洋放出の費用は17〜34億円とされていましたが、現在の試算では1200億円となり、処理にかかる期間も52〜88ヶ月程度と書かれていましたが、現在は少なくとも30年以上と言われています。
海を汚染しない選択を求めます
福島第一原発の廃炉作業を進めるために「ALPS処理汚染水」の海洋放出は必要ありません。抜本的な解決策について、グリーンピースは元ゼネラル・エレクトリック社で東電福島第一原発などに勤務していた原子力コンサルタントの佐藤聡氏に委託し、2021年に具体的な提案を含むレポートを公表しています。
欧米で運用されているより高精度な多核種除去設備で限界まで放射性物質を取り除いた処理汚染水を、現行のタンクより堅牢な大型タンクに移し、さらに高度な除去技術を開発するのことが、現段階では最善の解決策であるとグリーンピースは考えます。