帰国するルフトハンザの飛行機内で、ドクターコールあり。
こういう緊急要請時は、ちゃんと行くようにしている。
エコノミークラスエリアで60代女性(日本人)が倒れており、駆けつけたときはすでにキャビンアテンダントが彼女の脚を箱に載せさせて頭を低くさせ、酸素を吸入開始させていた。
コールに応えて集まったのは自称医師3人。
いずれも日本人。
今回のフライトは、邦人客が多い。
チーフらしきドイツ人CAが英語で私たちにまず「何科の専門ですか?」と尋ね、その場をしきる。
50台くらいの脳外科医と80代とおぼしき内科医、そして私。
ドイツ語と英語と日本語が飛び交う。
実はもうひとり、下痢を訴えている男性がいるというが、こちらの女性のほうが緊急性が高いとトリアージずみ。
救急箱には血圧計、酸素飽和度モニター、体温計(舌下で測定するテステープ型)、何種類かの薬などが入っていた。
主に脳外科医と私とで診察、家族や発症時を知るCAへの問診などを行っているうちに、本人のほうは徐々に意識が回復。
今回のエピソードに関連のありそうな持病や既往歴はなく、明らかな原因はわからない。
迷走神経反射などによるものかもしれない。
いずれにしても帰国したら検診が必要。
幸い、大事には至らなかったが、CAたちはよく訓練されているという印象を受けた。
新幹線内でもコールに応えたことが二度ほどあるが、車掌さんたちは、どうだろうか?
私たちが測定したバイタルサインなどは、患者の最もそばにいたCAが専用の用紙にその都度、経過記載していたし、チーフCAはその場を取り仕切って、おそらくコックピットにも状況報告していたと思われる。
チーフCAに「命に関わるような状態ではないのね?このまま飛行を続けていいのね?本当に大丈夫ね?」と念を押されつつ聞かれたときは、サムアップして「大丈夫」と答えたけれど、はたして、緊急搬送が必要な状況だったら、着陸できるものなのだろうか?と疑問が湧いた。
時間的には離陸後の食事が終わって一寝入りしようかというような時だったから、アラビア半島上空辺りじゃなかっただろうか?
どうやら大丈夫そうだ、となり、やれやれと席に戻ろうかという時に、別のCAに錠剤のシートを見せられて、下痢の客にこの薬を渡していいかと聞かれた。
シートに書かれた文字を確認したら、Loperamideだった。
日本では小さなカプセル形状であるけれど、ドイツ製は飲み込みづらそうなでっかい錠剤だった。
私はいつも鎮痛剤と胃薬、ブスコパンは機内に必ず持ち込んでいる。
昔は腰痛、股関節痛がひどかったから、湿布薬も必携だった。
今回は珍しく、風邪をひいたようで、ドイツに置き薬していたルルアタックに助けられた。
夏休みのときは、急遽チューリッヒに一泊しなければならなくて、こういう時用の携帯お泊まりセットが役立った。
だから機内持ち込みバッグはいつも膨らんでしまうのだ。
羽田に降りたって、荷物受け取りを待っているあいだ、例の女性のその後の体調が気になり、探してみたが、見あたらず。
回復をこの目で確かめられず、心残りだった。