
1945年(昭和20年)8月6日午前8時15分。ヒロシマの空に小さな穴があいた。ピカッと光ってドンと鳴って、ヒロシマの空に小さな穴があいた。そして約14万人の人が死んだ。
「同じ過ちは繰り返してはならない」壇上から式典につどっだ人たちに向けての男の言葉はなんら心に届かない。
その中に一輪の花を皺だらけか細い手で抱きしめるよう持つ老婆を見た。老婆は小刻みに震えていた。
言葉などなんの意味を持たない。すべては彼女が物語っていた。生かされていること、生きていること、感謝、謝罪、そして鎮魂。
老婆は小刻みに震えていた。あかごのような涙を堪え切れぬまま。