8月25日(木)有明月の夜 アメリカ ニューヨーク
ニューヨークは世界最大の都市。
高いビルがたくさん立ち並んでいます。
夜になると夜景がとても美しく、まるで宇宙の星の輝きを全部集めたほど綺麗です。
この町にはものすごく豊かな人ととんでもなく貧しい人がいます。ルーモや風さんが大切にする豊かさと貧しさは心の中のことでした。高いビルの豪華な部屋の中にも路地裏のさびれた片隅にも、心の貧しい人と豊かな人がおりました。お話を語れる人は、心の豊かな人です。
ルーモは耳を澄まします。
すると優しく心豊かな人の語るお話が聞こえてきます。今夜は、低くて古いビルの一番上の小さな部屋に住む男の人のお話を聞きます。この男の人は、小さな犬と二人で住んでいました。男の人は絵を描くお仕事をしています。その仕事を心から愛していて、次に愛しているのはそばにいる犬でした。男は、鼻歌を歌いながら、犬を抱き抱えると一人がけのソファーにねそべりました。
~さあ、今日のお話は、ニューヨークに住む白い魔女と赤い魔女のお話。
ダウンタウンの雑貨屋に、貧しくて美人とはいえないけれど心の豊かな少女がいた。少女には大きな夢があった。それは大きくなったら花屋になることだった。
「私、見た目が美しくないのはわかってる。だから、一生美しい花に囲まれて生きるの」
と、心に固く決めていた。
そして、その雑貨屋の三軒先の靴屋には、見た目はとても美しいが心の貧しい少女がいた。この少女にも夢があった。
「私はこの美貌でお金持ちの男性と結婚し、ニューヨーク一高いビルのペントハウスに住んで一生遊んでくらすわ」
この二人は友達だった。
光と闇、陰と陽が裏表で引き合うように二人は引き合った。
互いに、互いの違いをよくわかっていた。
10年後、雑貨屋の娘は本当に花屋になっていた。ただでさえ美しい花をアレンジしてより美しくし、ニューヨークの町を花で飾っていた。みんなは彼女のアレンジする花が大好きだった。彼女は自信に満ち溢れていた。
靴屋の少女は、もうすでにたくさんの男とつきあっていたが、金持ちと結婚することはできなくて、心は悲しみと不満でいっぱいだった。自分はこんなに美しいのにどうして不幸なのだろうと周りを憎んでばかりいた。
二人はひさしぶりに会うことになった。待ち合わせは自由の女神だった。少女の頃、自由の女神は二人の心のシンボルで、
「女でも一生自由に強く楽しく生きていこうね!」
と誓い合ったことがあった。
さて、自由の女神には、白い魔女と赤い魔女が住んでいることを知ってるかい?
この魔女たちは女同志の絆をより良く深くすることができるんだ。そのためならどんな魔法でも使うことができる。
魔女たちは、自由の女神にやってくる様々な女たちを上から見下ろして、彼女たちの運命を観るんだ。で、品定めする。
「ふん、うわべだけのつきあいだね、臭い、臭い」
「心から互いを大切にしている、美しい香りがする」
こんな具合にね。
そして、うわべだけの付き合いには別れを、美しい友情にはさらなる幸運をもたらす魔法をかけるんだ。
今日、やってきた花屋と靴屋の娘二人のことも見下ろしていた。
花屋で成功した娘は、今上手くいっていない靴屋の娘の気持ちが良く分かった。嫉妬、憎しみ、悲しみ、寂しさ、混乱、恥ずかしさ・・・。浮かない顔の娘にかける言葉が見つからない。なぜ、彼女の気持ちがわかるか。それは、花屋の娘が昔味わったことだからさ。
醜い娘は、いつだって綺麗な娘の引き立て役だったし、自分が好きな男の子がいつも見つめるのは綺麗な娘の方だった。どんなにつらい涙をこぼしたかしれやしない。
2人の光と闇、陰と陽は、10年たった今では、すっかり逆転した。花屋の娘は、人生は決して見た目だけではないということを学んでいた。だから、靴屋の娘に心からの愛を持てることが出来たんだ。
魔女たちは、二人の心をすっかり見抜いていた。
「花屋の娘は満ち足りているが、靴屋の娘は今まさに崖を転がり落ちようとしている。これまでも誰かに頼ることで幸せになろうとばかりしてきた。花屋の娘は靴屋の娘を心から愛している。靴屋の娘も花屋の娘を心の底では信頼している。この二人の心の底には運命的な強い絆と互いを想う光がある。靴屋の娘が自分で幸せを手に入れるように自由の女神の光を与えよう。これはたった一度きりのチャンスだ」
そして、赤い魔女が自由の女神の持つたいまつに火を入れた。靴屋の娘が自由の女神を見上げると、たいまつの優しい炎が娘の瞳、そしてその奥のハートに流れ込んだ。固く冷たく閉ざされた娘の心が、優しく温かく素直に和らいだ。
そして、白い魔女は花屋の娘が語る言葉に魔法をかけた。
暗く沈んだ靴屋の娘に花屋の娘は優しく語った。どうやって今の成功を手に入れたか、これまでの苦労や辛さ、靴屋の娘に本当は嫉妬していたし憎んでもいたことも、見た目の悪さをどれほど悲しんだか…。でも今は自分の花を喜んでくれる人との温かい交流や本当に花が好きで自分の仕事を誇りに思っていること…。花屋の娘は白い百合のように潔く凛と語った。これでわかってもらえなければ、二人の友情が終わっても良いと覚悟していた。それは、靴屋の娘の心に深く響き、靴屋の娘は、自分の力で夢をかなえることの大切さを知った。
白い魔女と赤い魔女の魔法が人を幸せにしたとき、自由の女神は優しいパステルピンクに染まる。それをニューヨーク中の妖精や魔法使いたちが見て、人の心に優しい魔法をかけることを思い出すんだ。
数年後、靴屋の娘は平凡だけれど優しい男の妻になり、可愛い子どもたち5人に恵まれている。花屋の娘は、今も花で人の心を満たしている。二人は、どんな時も助け合う美しい友情をはぐくんでいる。
さあ、お話はおしまい。~
お話が終わった時、男の横で犬は心地よさそうないびきをかいて眠っていました。
「こいつ、いびきかいてやがる」
と笑って、カーテンをめくり自由の女神に目をやると、自由の女神は美しいパステルピンクに染まっていました。
ルーモはこのお話に感動していました。
私も素敵な女友達がほしい、きっと、大切にするわ。
と思いながら、自由の女神を眺めました。
ニューヨークは世界最大の都市。
高いビルがたくさん立ち並んでいます。
夜になると夜景がとても美しく、まるで宇宙の星の輝きを全部集めたほど綺麗です。
この町にはものすごく豊かな人ととんでもなく貧しい人がいます。ルーモや風さんが大切にする豊かさと貧しさは心の中のことでした。高いビルの豪華な部屋の中にも路地裏のさびれた片隅にも、心の貧しい人と豊かな人がおりました。お話を語れる人は、心の豊かな人です。
ルーモは耳を澄まします。
すると優しく心豊かな人の語るお話が聞こえてきます。今夜は、低くて古いビルの一番上の小さな部屋に住む男の人のお話を聞きます。この男の人は、小さな犬と二人で住んでいました。男の人は絵を描くお仕事をしています。その仕事を心から愛していて、次に愛しているのはそばにいる犬でした。男は、鼻歌を歌いながら、犬を抱き抱えると一人がけのソファーにねそべりました。
~さあ、今日のお話は、ニューヨークに住む白い魔女と赤い魔女のお話。
ダウンタウンの雑貨屋に、貧しくて美人とはいえないけれど心の豊かな少女がいた。少女には大きな夢があった。それは大きくなったら花屋になることだった。
「私、見た目が美しくないのはわかってる。だから、一生美しい花に囲まれて生きるの」
と、心に固く決めていた。
そして、その雑貨屋の三軒先の靴屋には、見た目はとても美しいが心の貧しい少女がいた。この少女にも夢があった。
「私はこの美貌でお金持ちの男性と結婚し、ニューヨーク一高いビルのペントハウスに住んで一生遊んでくらすわ」
この二人は友達だった。
光と闇、陰と陽が裏表で引き合うように二人は引き合った。
互いに、互いの違いをよくわかっていた。
10年後、雑貨屋の娘は本当に花屋になっていた。ただでさえ美しい花をアレンジしてより美しくし、ニューヨークの町を花で飾っていた。みんなは彼女のアレンジする花が大好きだった。彼女は自信に満ち溢れていた。
靴屋の少女は、もうすでにたくさんの男とつきあっていたが、金持ちと結婚することはできなくて、心は悲しみと不満でいっぱいだった。自分はこんなに美しいのにどうして不幸なのだろうと周りを憎んでばかりいた。
二人はひさしぶりに会うことになった。待ち合わせは自由の女神だった。少女の頃、自由の女神は二人の心のシンボルで、
「女でも一生自由に強く楽しく生きていこうね!」
と誓い合ったことがあった。
さて、自由の女神には、白い魔女と赤い魔女が住んでいることを知ってるかい?
この魔女たちは女同志の絆をより良く深くすることができるんだ。そのためならどんな魔法でも使うことができる。
魔女たちは、自由の女神にやってくる様々な女たちを上から見下ろして、彼女たちの運命を観るんだ。で、品定めする。
「ふん、うわべだけのつきあいだね、臭い、臭い」
「心から互いを大切にしている、美しい香りがする」
こんな具合にね。
そして、うわべだけの付き合いには別れを、美しい友情にはさらなる幸運をもたらす魔法をかけるんだ。
今日、やってきた花屋と靴屋の娘二人のことも見下ろしていた。
花屋で成功した娘は、今上手くいっていない靴屋の娘の気持ちが良く分かった。嫉妬、憎しみ、悲しみ、寂しさ、混乱、恥ずかしさ・・・。浮かない顔の娘にかける言葉が見つからない。なぜ、彼女の気持ちがわかるか。それは、花屋の娘が昔味わったことだからさ。
醜い娘は、いつだって綺麗な娘の引き立て役だったし、自分が好きな男の子がいつも見つめるのは綺麗な娘の方だった。どんなにつらい涙をこぼしたかしれやしない。
2人の光と闇、陰と陽は、10年たった今では、すっかり逆転した。花屋の娘は、人生は決して見た目だけではないということを学んでいた。だから、靴屋の娘に心からの愛を持てることが出来たんだ。
魔女たちは、二人の心をすっかり見抜いていた。
「花屋の娘は満ち足りているが、靴屋の娘は今まさに崖を転がり落ちようとしている。これまでも誰かに頼ることで幸せになろうとばかりしてきた。花屋の娘は靴屋の娘を心から愛している。靴屋の娘も花屋の娘を心の底では信頼している。この二人の心の底には運命的な強い絆と互いを想う光がある。靴屋の娘が自分で幸せを手に入れるように自由の女神の光を与えよう。これはたった一度きりのチャンスだ」
そして、赤い魔女が自由の女神の持つたいまつに火を入れた。靴屋の娘が自由の女神を見上げると、たいまつの優しい炎が娘の瞳、そしてその奥のハートに流れ込んだ。固く冷たく閉ざされた娘の心が、優しく温かく素直に和らいだ。
そして、白い魔女は花屋の娘が語る言葉に魔法をかけた。
暗く沈んだ靴屋の娘に花屋の娘は優しく語った。どうやって今の成功を手に入れたか、これまでの苦労や辛さ、靴屋の娘に本当は嫉妬していたし憎んでもいたことも、見た目の悪さをどれほど悲しんだか…。でも今は自分の花を喜んでくれる人との温かい交流や本当に花が好きで自分の仕事を誇りに思っていること…。花屋の娘は白い百合のように潔く凛と語った。これでわかってもらえなければ、二人の友情が終わっても良いと覚悟していた。それは、靴屋の娘の心に深く響き、靴屋の娘は、自分の力で夢をかなえることの大切さを知った。
白い魔女と赤い魔女の魔法が人を幸せにしたとき、自由の女神は優しいパステルピンクに染まる。それをニューヨーク中の妖精や魔法使いたちが見て、人の心に優しい魔法をかけることを思い出すんだ。
数年後、靴屋の娘は平凡だけれど優しい男の妻になり、可愛い子どもたち5人に恵まれている。花屋の娘は、今も花で人の心を満たしている。二人は、どんな時も助け合う美しい友情をはぐくんでいる。
さあ、お話はおしまい。~
お話が終わった時、男の横で犬は心地よさそうないびきをかいて眠っていました。
「こいつ、いびきかいてやがる」
と笑って、カーテンをめくり自由の女神に目をやると、自由の女神は美しいパステルピンクに染まっていました。
ルーモはこのお話に感動していました。
私も素敵な女友達がほしい、きっと、大切にするわ。
と思いながら、自由の女神を眺めました。
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