Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

お話妖精ルーモと風さんの31日世界一周★

2020-05-31 16:09:53 | 童話 ルーモと風さんのお話
このものがたりについて♥

この物語は、
妖精ルーモと風さんが、31日で世界中を旅するお話です。

旅は、日本から始まり、最後に日本に帰ります。
辿る行路には特別な意味はなく、風の向くまま気の向くままと言ったところでしょうか。

妖精ルーモには、
①人間が物語を語る時に、そのお話をそばで聞ける(人間からは見えません)
②ルーモがいると人間は物語を語りたくなる
③人間が語る物語の中にルーモも入って行くことが出来る
④ルーモが願うとその人に幸福が訪れる
などの力があります。

※それからルーモの姿を見ることが出来るのは、心の寂しい人だけでした。

お友達の「風さん」は、ルーモの案内役になっていますが、ルーモとはそれ以上のご縁があるようです。お話の後半を楽しみにしてください。

この物語は、最初のページから前ページに遡って読めるようになっています。
また、好きなページに行ってその回その回を楽しむこともできます。

優しく、温かく、少し哲学的でスピリチュアルな内容も込めたお話。ルーモの成長の物語でもあるし、ほのかなラブストーリーでもあります。

どうぞ、お楽しみください!!

お話妖精ルーモと風さん日本①

2020-05-19 18:56:06 | 童話 ルーモと風さんのお話
 8月1日(月)暁月の夜 日本

Lumo(るーも)…エスペラント語で「光」「光を当てる」「光を照らす」の意
エスペラント (Esperanto) とは、ルドヴィコ・ザメンホフとその弟子(協力者)が考案・整備した人工言語。



このお話は、ルーモという不思議な女の子が30日間で世界を旅するお話です。
ルーモは人間の女の子の姿をしています。ルーモがいつどこで生まれたかを知る人はいませんし、ルーモにもわかりません。

不思議な力を持っていて、人間はルーモのような存在を妖精と呼びます。

「どんな力かって?」
「それはね、誰かが素敵なお話を語るとき、そばに行ってそのお話を聞ける力です。ルーモの姿は人には見えないのです。そして、時にはその物語の中に入って行くこともできます。風の精や水の精、他の妖精ともお話しできますよ。少しは魔法も使えます」

ルーモはこの㋇、世界中がサマーホリディ―の一か月間で、子供たちがお母さんやお父さんに聞くおやすみ前のお話を聞く旅に出ようと決めました。

月が新月に近づこうとする8月1日「暁月」の夜、出発することに決めました。
ルーモがもともと住んでいる日本がスタート地点です。

ルーモは今、日本一高い山、富士山のてっぺんに立って願いを立てます。

呪文の言葉は、
「るるりらルーモ、るるららルーモ、世界中のたくさんのお話が聞きたい。このひと月、私を助けて、世界中のお話の場に連れてって」

するとかすかな唸り音が起こり、富士山の山肌をせり上がって白い龍が一匹が螺旋を描き勢いよくやってきました。

ルーモが目を丸くしてよく見ると龍ではなく小さな風の子、風の精霊でした。

「わー、龍かと思った。あなたが私の案内役なのかしら?」
「エッヘン、いつもはこの山で遊んでるんだけど、きみの願いに引き寄せられた。世界中のお話を聞きたいって?」
「うん。私が願えば、お話の場に行ける。でも世界はとっても広いでしょ。私一人では迷子になってしまう。あなたがきっと必要なのね」
「なるほど。ぼくこう見えてもイングランド生まれなのだ。世界もいろんなところに行ったよ。なんてったって風!だからね」

そういうと風の子は、ルーモをぐるりと取り巻き、空高く持ち上げました。
ルーモはまるで柔らかいスカーフに巻かれたようでうっとりとしました。

さあ、ルーモの旅の始まりです。



妖精ルーモと風の精霊の意識が重なった時、ルーモの願いが叶います。
気がつくと、ルーモはあるおうちのお布団にいる女の子のそばにいました。
ルーモの姿は人間には見えません。
 
4歳の女の子は、お母さんを待っていました。
ふすまの向こうでお母さんがお片づけをしている音がします。
お皿を洗う音、カーテンを閉める音、飼っているワンちゃんにご飯をあげる音。
女の子は、お母さんが早くお片づけを終えて来てくれるといいな、と待っているのです。
しばらくしてお母さんは、ふすまをそっと開けて中をのぞきました。

女の子は言いました。
「お母さん、お話聞かせて」
「はい、はい。」

お母さんは、からだ半分だけお布団に入ってくれました。そして、話し始めました。
女の子は、今日はどんなお話だろうとワクワクしています。
ルーモも嬉しくなりました。
子供のワクワクの気持ちがルーモに伝わると、ルーモには光が宿ります。
妖精ルーモの仕事は、この光を集めることでもありました。
ルーモの集める光は、人間の優しさです。

このお母さんは物語を創るのが上手いお母さんだったようです。

 ~昔、昔、あるところに、4匹の可愛い猫と1匹の賢い犬がいました。
この5匹は白いひげを生やしたおじいさんと一緒に住んでいました。
おじいさんはどの子もとても大切に可愛がっていました。おじいさんは独りぼっちでしたから、5匹がなによりのお友達でした。おじいさんと5匹はいつも一緒です。朝は、近くの畑にハーブを取りに行き、昼は、おうちから少し離れた川に魚釣りに行きます。おじいさんは夕食のためにみんなに一匹づつ魚を釣ります。おじいさんの分も入れて全部で6匹釣れたら帰ります。5匹はおじいさんのお仕事に遊びながら着いていきます。おじいさんはおうちに帰るとお魚をお料理します。お魚に塩と胡椒をかけ、畑で取ったハーブを添えてオーブンで焼きます。できあがったら、畑で採れたレモンをあつあつのお魚に絞ります。そして、おじいさんはみんなに一匹づつお魚をくれました。おじいさんはみんなの好みをちゃんと知っていましたので、ハーブが嫌いな子にはハーブなしで、レモンが大好きな子にはレモンをたっぷりと、骨が上手に食べられない子には骨をとり、少ししか食べられない子には少しだけ、たくさん食べられる子にはその分足して…、とこんな具合です。みんな、本当に幸せでした。

 ある時、5匹は思いました。自分たちがどんなに幸せで、どんなに嬉しいかをおじいさんに伝えたいと。この国でその気持ちを伝える言葉は「ありがとう」だと、犬が言いました。
「でも、ぼくたちは人間の言葉がしゃべれないよ。どうしても、ワンとかニャーになっちゃうよ」
「どうしたらそのありがとうって言えるのかな?」
考えた末に、賢い犬が言いました。
「全部言うのは難しいけど、ぼくらは5匹。あ・り・が・と・う、も五つの音だよ。一人が一つの音を一生懸命練習して順番に言えばおじいさんにきっと伝わるよ」
それからみんなの練習が始まりました。
猫たちは「にゃあ」「りにゃ」「にゃが」「にゃっと」。犬は「わう」。
猫の「りにゃ」が一番難しく、次に難しいのは「にゃっと」でした。犬もワンと言うのを抑えて「ワウ」というのにてこずりました。でもみんなは頑張りました。この言葉を言った時のおじいさんの喜ぶ顔をどうしても見たかったからです。練習はひと月と半かかり、なんとかそれぞれが言えるようになって、それをつなげて言えるようにもなりました。

 その日の晩、みんなはおじいさんの前に勢ぞろいしました。おじいさんがロッキングチェアにどっかりとくつろいでいる時です。賢い犬の合図で、「にゃありにゃにゃがにゃっとわう」。おじいさんは、目を丸くしてみんなを見ました。やはりよくわからないみたいです。みんなは、おじいさんがわかるまで何度も何度も繰り返しました。

 おじいさんは、最初ごはんが欲しいのかと思いキッチンに行きご飯をあげました。それでもみんなが鳴くのをやめないので、おトイレに行きたいのかとおトイレのドアを開けました。それでも、みんなは鳴くのをやめないので外に出たいのかと思い玄関のドアを開けました。そして、やっと気づいたのです。みんなの目が「ありがとう」と言っているとわかったらからです。おじいさんの目に涙が光りました。

 みんなはおじいさんに喜んでほしかったのに、おじいさんが泣いてしまったのでびっくりして慌てました。でも、賢い犬は知っていました。人間は心から喜んだとき涙を流すのだと。みんなにそう言ってあげたとき、みんなも少しだけ胸がきゅんとなって、みんなの眼にも涙がにじみました。でも、もうあとは眠くて眠くておじいさんのそばですやすやと眠ってしまったんですって。おじいさんはみんなのことを嬉しそうにながめながら、優しくゆっくりと何度もなでてあげましたとさ。おしまい。

お話が終わるか終わらないかの時には、女の子もルーモもすやすや寝息を立てて眠っていました。

素晴らしいお話でした。お母さん、おつかれさま!
全部見ていた風の精霊が、がんばったお母さんの頬に小さな優しい風をそよがせました。
キスをするようにね。



                       

お話妖精ルーモと風さんロシア②

2020-05-18 13:59:48 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月2日(火)晦日月の夜 ロシア

風の精霊に名前はありません。
でもルーモと仲良しの風の精霊は人間で言えば10歳くらいの男の子のようです。この旅は風さんとルーモの二人旅です。

ルーモは、風さんと相談しています。
「次はどこの国に行こうかな?」

風さんは言いました。
「今、空の高いところには南から北に吹く風がある。この南風に乗って北の国へ行ってみない?ロシアというちょっと寒いけれど素敵な国があるよ」

「ろ・し・あ、その国の名前好きだわ」

風さんはすぐさまルーモを空高く巻き上げました。空の高いところには柔らかで大きなベッドのような雲がルーモを迎えてくれました。南風は雲のベッドをロシアへと運びます。心地よく揺られているうち風が少し冷たくいじわるになったような気がして、ルーモはちょっとだけ身震いしました。風さんが言いました。

「もうすぐ着くよ」

小さなお部屋の小さなベッドの中に小さな男の子が横になっています。この子もやはりお母さんがおやすみ前に来てくれるのを待っていました。男の子は思っていました。

「今日はお母さん、お話をしてくれるかな?キスだけかな?それとも黙っていっちゃうかな?」
この子のおうちは貧しくてお母さんは毎日とても長く働かなくてはなりませんでした。だからいつも疲れていましたし、おやすみ前のお話はない時の方が多かったのです。でも、本当は優しいお母さんです。

 男の子の部屋は飾りのない寂しい部屋でしたが、棚の上には女の子の顔のマトリョーシカ人形が乗っていました。やっとお母さんが男の子のほっぺにおやすみのキスをしにきました。そして、さっと行ってしまおうとしました。男の子は思い切って言いました。

「ママ、前にしてくれたマトリョーシカのお話して」

お母さんは、ため息をついて、

「ママももうくたくた、まだやらないとならないことがあるし、ママだって早く寝…た…」

ルーモがそばにいると、人は少しだけ優しい心を取り戻すことが出来ました。お母さんは、大きく息を吸ってゆっくりと息を吐き、口元にかすかに笑みを取り戻し、小さな椅子をベッドのそばに寄せて、

「わかった、短いお話だけどね」ニコッと笑って話し始めました。笑顔にまだあどけなさが残るお母さんでした。その日もお母さんはとても忙しかったし、ちょっと悲しいことがあったのですが、ルーモの力が本来のお母さんにさせてくれました。

~このマトリョーシカはね、あなたがママのおなかの中に来てくれた時に、おばあちゃんからもらったの。マトリョーシカは良い子が生まれるように守ってくれるの。それからいつでもママがあなたの素敵なママでいられるようにも導いてくれるのよ。ママは最近忙しくて善いママじゃなかったね。ごめんね。マトリョーシカの一番小さなお人形があなたの中の神様。とても大切な優しい心。神様に息を吹きかけて願い事をすると叶うのよ。さあ、今夜も素敵な願い事をして休みましょう。~

そう言ってママはマトリョーシカを開け、最後の一番小さなお人形を取り出し、男の子の目の前に出しました。

「さあ、願い事を考えて。ママと一緒に」

二人とも願い事を胸に目を閉じました。そして、1,2,3、でふっ~と息を吹きかけました。ママは男の子を見てニコッと笑いました。男の子は満足して目を閉じました。ママはマトリョーシカを元の場所に戻してお部屋を出ていきました。短いお話でしたが、男の子の胸は幸せで満たされていました。ママも久しぶりに男の子と気持ちが通じて幸せでした。そして、ルーモの心の中もあたたかい光がともり、初めて見たマトリョーシカ人形は忘れられない思い出になりました。

みんなの心も体もほんわり温かくなれたのは、風さんがちょっぴり南風の熱を持ってきてくれたのもあったみたいです。



お話妖精ルーモと風さんモンゴル③

2020-05-17 14:01:43 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月3日(水)新月の夜 モンゴル

今夜は新月。月のない夜です。ルーモと風さんは、月がないかわりに星が一段と輝きを増すロシアの夜空を散歩していました。すると南の方から風に乗って草の香りがしました。

「風さん、これは何の香り?」
「これはロシアの遥か下にあるモンゴルの大地一面に生えている草の香りだね」

次の目的地はモンゴルに決まりました。
風さんは草の香りのする方向へとゆっくりとルーモを運びます。
その間ルーモは通り過ぎていく星に手を振ったり微笑んだり話しかけたりしました。



降り立ったところは低い山々に囲まれた広々とした草原で、たくさんの牛や馬やヤギがのんびりと草を食べていました。その近くには白いテントのようなおうちがたくさんあります。大きな白いテントの中には、ベッドが2つありました。それはお父さんとお母さんが寝る大きなベッド。もう一つは双子の男の子のベッドでした。今、ちょうどおやすみ前のお話が始まるところです。今夜の語り手は、お父さんでした。

~昔な。山のように大きなからだをして、たくさんの頭をもつマンガスという怪物がいたんだ。マンガスは家や財産をうばいとって人々を苦しめる恐ろしい怪物だ。マンガスの得意技は相撲だ。これまでも何人もの勇者がマンガスに戦いを挑んだが、勝ったものはいなかった。そのたびにマンガスはこういうんだ。

「すもうはどうせおれの勝ちだからな」とさ。みんなはそれを聞くたびに悔しい思いをするんだ。

ある日、男の双子の子供が湖に水を汲みに行った。この双子もマンガスに苦しめられたことがある。どうにかして、マンガスを退治できないかと思っていた。水を汲もうとすると、湖の底の方に何か赤と青の布のようなものがゆらゆらしているのが見えた。ずっと見ていているとそれはだんだん浮かび上がって双子の方に流れてきた。掬い上げると、それは相撲用の衣装、帽子(ジャンジン・マルガイ)とベスト(ゾドク)、それからパンツ(ショーダク)にブーツ(グダル)が二人分だった。着てみると双子にぴったりで、体の中からむくむくと力が湧いてきて強くなる気がした。

双子は意を決してマンガスに戦いを挑んだ。双子には衣装だけでなく秘策があった。

「マンガース!おいらと戦え!まいりましたと言わせてやるぞ!」
「うっはっは!俺に勝てるわけがない。すもうはどうぜ俺の勝ちだからな!」

そうして戦いが始まった。モンゴルの相撲には土俵がなく、決着がつくまで戦い続ける。
ずっしーん!どっしーん!両者は互角にぶつかりあい、三日三晩相撲を取り続ける。マンガスが投げれば、こちらも負けずに投げ飛ばす。マンガスがうんと力を入れれば、こちらも同じくらいの力で立ち向かう。不思議な衣装は本当にすごい力を授けてくれた。そして、そんなに戦えたのは双子の一人がテントの裏で隠れていて、疲れたらマンガスに気づかれないように入れ替わるからだった。それが双子の秘策だった。

ずっと一人で戦い続けているマンガスは5日目の朝、もうへとへとに疲れてしまい、とうとう「まいりました!」と言った。

「もう、悪さはしないか!?」と叫ぶと、疲れ果てたマンガスは地面に消えるようにいなくなってしまった。双子の男の子は初めてマンガスに勝った勇者となった。二人は相撲の衣装を授けてくれた湖に感謝して、それから毎年湖のそばで村の力自慢たちが相撲祭りをすることにしたんだとさ。~

なんて、勇ましく面白いお話でしょう!ルーモは、自分も相撲を取ったような気がして目がパッチリと冴えてしまいました。勇気も湧いてきて草原を走り出したい気持ちです。聞いていた男の子たちもルーモと同じ気持ちでした。でも、男の子たちは草原に走り出す代わりに、ベッドの中からモンゴルの空を吹き渡る風の音にじっと耳を澄まし、マンガスと空で相撲をとっている姿を想像しました。二人の目には勇気の炎が優しく燃えていました。

お話上手のお父さんはあくびをしてベッドにもぐりこみました。
男の子である風さんも、自分のお父さんを思い出したようです。



お話妖精ルーモと風さん中国④

2020-05-16 14:03:10 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月4日(木)既朔の夜 中国

モンゴルの夜もふけて、ルーモと風さんは草原の草の香りに包まれながら、ゆらゆらとこの大陸を下へ下へと流れていきました。

そこには中国という大きな国がありました。どこかの大きな都市にはたくさんの人が住む集合住宅が立ち並び、窓々に暗めの灯りが灯っています。今の中国では子供を産んだお母さんは一か月くらいはお休みしますが、そのあとはすぐに働くのが普通です。多くの人が、たくさんお金を稼ぐためせっせと働きます。だから、赤ちゃんや子供のお世話は、ベビーシッターがすることが多いのです。

ルーモが辿りついたおうちのお母さんは遅くまで仕事をしていました。小さな男の子には、若い娘のシッターさんがおりました。そのシッターさんは、昼間は音楽の学校に通う生徒でした。シッターさんの習う楽器は中国の伝統楽器二胡でした。



二胡という楽器は、お水をくむ柄杓を想像してください。柄は柄杓の面の10倍くらい長く、そこに二本の弦がついています。その弦を弓に挟んで音を出すと、独特の豊かな音色が響きます。勇ましい音から柔らかい音、動物の鳴き声のような音まで奏でることができ、その音色は人の心に郷愁と喜びを生み出します。大らかな中国大陸の雄大さ、大らかさ、和やかさ、美しさを十分に表現する素晴らしい楽器です。

シッターさんは男の子のおうちにも二胡を持ってきて、時々練習がてら二胡を弾き男の子に聞かせていました。男の子は今夜も、寝る前に二胡の演奏をリクエストしました。シッターさんは喜んで二胡を奏でます。

「いつものあの曲がいいな」
あの曲とは、『蘇州夜曲』という曲です。

「この曲は、日本人が作った曲なのよ。それを中国人の李香蘭が歌って大ヒットさせたの。私はあの綺麗な李香蘭が大好きで、この歌も好きになった。これからたくさん勉強してお金を稼いで日本に行って李香蘭みたいな歌手になるの!」
「うん、お姉さんならきっと行けるよ。歌手になったら僕をコンサートに招待してね」

男の子はお姉さんが大好きでした。お母さんのお帰りが遅くてもとても幸せな男の子なのでした。

二胡の響きが、シッターさんの素敵な夢を乗せて空に舞い上がりました。ルーモと風さんも一緒に昇っていき雲の上でゆらゆら漂うようにダンスをしました。

ルーモは日本に来たいと思うお姉さんの夢が叶うように願いました。ルーモが願うと願った人の未来の道を明るく照らします。きっと、お姉さんは日本に行くことができるでしょう。お姉さんが日本に行くとき、男の子はその別れに泣くかもしれません。でもその頃には男の子も今よりもっと逞しい少年になっていることでしょう。

2人の心は『蘇州夜曲』歌で永遠に結ばれています。

※「蘇州夜曲」(そしゅうやきょく)は、西條八十作詞、服部良一作曲の歌謡曲である。 解説 李香蘭(山口淑子)の歌唱を前提に作られ、李香蘭主演の映画「支那の夜」(1940年(昭和15年)6月公開)の劇中歌として発表された。

お話妖精ルーモと風さんフィリピン⑤

2020-05-15 14:05:34 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月5日(金)三日月の夜 フィリピン

ルーモの風さんは小さな風さん。小さな風さんは大きな風におんぶされて南に南に吹いていきました。上空はどんどん暑くなってきました。ルーモが下を見ると小さな島がたくさん並んでいます。
「風さん、あそこはなんて国?」
「フィリピン、小さな島々からなる国だよ」

その中でも光ゆらめく街へと風さんは降りていきました。そこはマニラという大都市でした。大きな街で人もたくさんいるようですが、少し変な匂いがします。それは、こんもりとした山のあちこちから無数に登る細い煙から漂ってくるようです。風さんが教えてくれました。

「この山はスモーキーマウンテン。マニラ中のゴミが集められたゴミの山さ。そこに貧しい人が住み始めてもう何十年にもなる。人々はゴミの中から必要なものを広い、ここで生まれ死んでいく。煙は、いつでもゴミの中で何かが燃えて煙を出しているんだ」

ゴミの山のあちこちには細い生活道ができていて、道沿には小さな掘っ立て小屋が並び立っています。ルーモはその道に降りました。ガタガタして転んでしまいそうな道です。

もう暗い夜でしたが、少し歩くと、ルーモよりも小さな女の子が道の隅にしゃがんでいます。ルーモがその子の前に立ち笑いかけると女の子も可愛い笑顔で微笑みました。女の子の顔も体もひどく汚れていました。お風呂に入ることもないのでしょう。女の子は、まるでそれがおもてなしのように、ルーモの手を取って自分の家に連れて行ったのです。

ルーモは妖精なのでその姿は普通の人間には見えません。ルーモを見ることができるのは、心の寂しい人だけでした。

女の子の家はすぐ近くでした。小さな小屋にはお母さんとお姉さんが一人、弟が二人いました。掘っ立て小屋ですが、中には小さなテレビや冷蔵庫もあって、いろんなものがごちゃごちゃと置いてあります。お母さんは、子どもたちに無関心で、お姉さんも小さな弟たちも女の子を気に留めませんでした。ここでは、おやすみ前のお話はないようです。

女の子は寝床のような部屋のすみっこに潜り込みました。ルーモのことをゴミの山から見つけたぬいぐるみのように思っているのでしょうか。ルーモを固く抱きしめていました。

今夜はルーモが語り手になることにしました。
ルーモはこの旅で見てきたものをちょっとづつ話してあげました。

日本のお母さんが話していた猫と犬のありがとうの話、ロシアで見たマトリョーシカの人形のこと、モンゴルのお話の相撲自慢の怪物のこと、中国の二胡という美しい音色の楽器のこと、その音色も女の子の頭の中で鳴らしてあげました。

ルーモのお話は、女の子の心の中で虹色の夢となりました。おそらく、その寂しい胸の中に初めて見るような夢と希望のイメージになったことでしょう。女の子の頬に一すじ虹色の涙が流れました。

「この子が空に虹を見るたびに、幸運が訪れますように…」
ルーモが何かを願った時、それは必ず天に聞き届けられます。
南国の島、フィリピンには虹が多いはずです。
この子はきっと幸せになるでしょう。
ルーモは女の子の安らかな眠り顔を見て空へ飛んでいきました。



お話妖精ルーモと風さんマレーシア⑦

2020-05-13 14:08:12 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月7日(日)夕月の夜 マレーシア

風さんは空の高いところへとルーモを運び、マレーシアのキャメロンハイランドという高原の真上に来ました。フィリピンはマニラのムッとする熱気を払い、この高原は一年中爽やかで涼しい場所です。その気候を生かしてお茶の葉やお野菜の栽培が盛んでした。

ルーモは広い茶畑に降りました。夕月が茶畑の葉の一枚一枚を艶々と照らして、うっとりするほどに綺麗です。

するとどこからともなく、小さなささやきが聞こえてきます。

さわさわ、さわさわ、さわさわ、さわさわ…

ルーモが耳を澄ますと、それははっきりとお話になって聞こえてきました。高原の精霊がお茶の葉の娘さんたちにお話をしていたのです。精霊は白いひげを生やした優しそうなおじいさんでした。

「いいかね。高原の水と土の養分は、君たちの緑色をつややかにしてくれた。
 高原の空気と香りは君たちに上品さと高貴さをもたらした。
 高原の光と温かさは君たちに優しさと喜びを与えた。
 高原に降る月のしずくは君たちに輝きを授けた。
 明日は待ちに待った茶摘みの日だ。
 君たちはキャメロンハイランドの美しい茶娘として堂々と世界中の人々の喉を潤すのである」

なにやら明日の茶摘みの前におじいさん精霊が、茶葉の娘さんたちに別れの言葉を告げていたようでした。

茶葉の娘たちはその緑色の頬を艶めかせ、明日の茶摘みに思いを馳せて朝日が昇るのを待っていました。

ルーモは一人の茶娘さんに言いました。
「あなたの緑色は本当に綺麗。そして、良い香りがするわ。でも、ここから離れて、みんなとバラバラになってどこか知らない場所に行くのは怖くない?」

娘さんは言いました。
「私たちは自然からいろんなものをもらったの。お蔭で今私たちはこんなに美しい!今が私たちの一番幸せなときね。明日から冒険の旅が始まるわ。何が起きても大丈夫。ここまでで十分に幸せ。そして、これから誰かを幸せに出来たらそれはおまけの出来事よ」

茶娘さんたちはウキウキだけでなく、とても勇敢で、そしてすべてを知っていました。ルーモは茶娘さんたちの凛とした美しさがまぶしくて目をしばたたかせました。そして、その勇気はルーモの目から心へと流れ、今まで知らなかった力を与えました。

「お幸せに!ありがとう」

ルーモはそう言って、さぁ~っと吹いてきた風さんに飛び乗りました。空の高いところから広大な茶畑を見下ろします。茶娘さんたちの希望の光が茶畑全体を水面の輝きのようキラキラさせていました。それは月の光の反射だったかもしれませんが……。

茶娘さんたちは、明日摘み取られ、選別され機械で蒸されて、乾かされてから、缶に詰められて、紅茶として世界中のどこかのお店に並ぶのです。そして、どこかの誰かさんに買われていくのでしょう。ルーモは茶娘さんたちが、美味しく飲まれ、人々の喉を喉を潤す時に彼女たちの希望という艶めきで潤すことを想像して、茶娘さんたちの幸せを祈りました。



お話妖精ルーモと風さんオーストラリア⑥

2020-05-13 14:07:07 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月6日(土)夕月の夜 オーストラリア

さあ、次はどの国に行くか、風さんはルーモと相談しました。

「昔からの人が住んでいるすごく大きな島があるよ。行ってみる?」
「昔からの人ってなに?」
「古くからのお話を語り伝えている人たちさ。オーストラリアっていう大きな島があって、そこには僕みたいな自然霊や君みたいな妖精と普通に話ができる人が今でも住んでるんだ。ほんの少しだけどね」

風さんとルーモは、ウルルという一枚岩でできた大きな山の上に降りました。ここは聖なる山です。人は登ることはできません。このウルルの麓のレッド・センターで、たき火の周りに人が円になって座っています。

今日は、大昔からこの大陸に住んでいる一つの民族アナング族の語り手が、自分たちのことを現代の人にお話しています。

~我らは、6~7万年前にこの大陸に降り立った。この広い大地のいくつもの場所に我らは散らばり、それぞれが、全く違う習慣、食文化、芸術を育てた。言葉は大きく分けても25種類以上ある。基本的に文字は持たず、狩猟をし農業は行わない。だが、食べるための動物は食べるだけしか採らない。伝統的に酒を飲むことはない。

我らは代々「ドリームタイム」という天地創造の神話を語り継いできた。ドリームとは、「夢」のことではなく、「生活する、旅をする」の意味だ。 人間が旅をすれば、そこに足跡が残るのと同じように、エネルギーやスピリットが残る。そのエネルギーやスピリットを残すことを「ドリーミング」、そのドリーミングが行われた時間を「ドリームタイム」と呼ぶ。

「ドリームタイム」は3つの時代に分けられる。「始まりの時代」は何も存在しない暗黒の時代。「創造の時代」はドリーミングにより天地や動植物が生まれた時代。そして最後の「伝承の時代」が現代だ。 我々は「創造の時代」のことを、 絵を描いたり歌を歌うことで語り継ぎながら生きてた。「伝承の時代」は、これまでのドリーミングをたどっている。~

ルーモにはちょっと難しいお話でしたが、いつもと違う気持ちが芽生えました。アナング族の人には懐かしさを感じました。

たき火の隅っこでお話を聞いていたルーモに、アナング族の語り手が話しかけました。その人はルーモを観ることが出来ました。

「小さな時の旅人よ。どこから来てどこへ行く?」
「世界中の子どもたちの所に行ってお話を聞く旅をしています」
「これまで何を見てきた?」
「まだ旅は始まったばかりだけど、人の心の優しさや温かさ、面白さを私は探しているのかもしれません」
「なかなか楽しそうな旅だ。旅は宇宙とともにある。どんな人の旅も宇宙の呼吸だよ」
「宇宙の呼吸?」

そう言って、語り部は笑いながら元居たところに戻りました。


この旅で、ルーモはどんな足跡を残すでしょう。ルーモはどこから来て、どこへ行くのか、なぜ生まれて何のために生きているのか、答えのない問いが浮かびました。

このアボリジニと呼ばれる何万年も前からオーストラリアに住む人たちもどこから来たのでしょう。なんのために「創造の時代」のことを語り伝えているのでしょう?

そんな問いがルーモの心にあぶくのように浮かびましたが、それは形をなさないまま心のどこかに消えていきました。

大陸の大きな風がお話を聞くみんなの顔を優しくなぜていきました。ルーモはその風に抱きかかえられてまた空へ舞い上がっていきました。 そばには小さな風さんが寄り添っています。



お話妖精ルーモと風さんインド⑧

2020-05-12 14:09:24 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月8日(月)夕月の夜 インド

ざわざわ、ざわざわ、大きな風が唸りはじめました。台風です。ルーモの旅先案内人の風さんはまだ小さな風なので、強くきかんぼうな台風の風にさらわれて、どこかにいなくなってしまいました。ルーモは仕方なく、海辺まで出て水の精に助けを求めました。

水の精は、海に住むイルカさんにルーモをインドという国へ連れていくようお願いしました。オーストラリアからインドまでイルカに乗った海の旅はとても楽しいものでした。台風のせいで波が大きく持ち上がったかと思うと滑り台のように降りていき、まるで遊園地で遊んでいるみたいでした。波が静まる頃には、水平線からの朝日が昇り、幾筋ものキラキラ輝く光の線が、世界を黄金に染めました。ルーモが初めて見る美しさでした。

ルーモはイルカさんとさよならし、ガンジス川という川からインドに入りました。大きな海のように太い川です。今度はガンジス川の精霊がルーモをお話の聞けそうなところへ案内します。それはルンビニという町でした。ブッダという人がうまれたところです。

ブッダが悟ったという菩提樹の木の下に、一人のお坊さんがいました。えんじ色の袈裟を着たまだ若いお坊さんでした。とても美しいお顔をしています。このお坊さんにはルーモが見えました。ルーモを見ることができる人間は、心に深い悲しみや寂しさを抱えた者だけです。このお坊さんはどちらかというと悲しみや寂しさにあふれているのではなく、人の悲しみや寂しさがよくわかる人といった方が良いかもしれません。悟りを開くために何年も修行をしている人でした。人間と関わるよりも、空や風や木々や草花と心を通わせるのが当たり前の人でしたので、ルーモのことも見えたのでしょう。そう言った人は意外といるものです。

お坊さんは、ルーモを菩提樹の下の自分の横に座らせて、お話をしてくれました。

~この木の下に座り続けて何年にもなります。私は全てを悟ってしまったので、ここに居るだけですべてを観通し満たされています。時々、君みたいな妖精もやってきて話すのも楽しい。普段は空や雲や風や、この菩提樹や地べたの虫と話をしていて全く飽きることはない。夜には満天の星々と交流することもできる。宇宙は広大で興味は尽きることがない。

今とは違った時代の文明では多くの人間がそうして当たり前に楽しく生きていた時もあった。そこでは競争も争いも嘆きも悲しみもなかった。

そんな時代が何万年も続いたことを知っている人たちだっている。~

お坊さんの言うことがルーモにはよくわからなくて何も言えずに困っていましたが、
お坊さんはそれをわかっていて、大丈夫ですよと優しく微笑んでくれました。

ルーモはいつからかわかりませんが妖精として人間のお話を聞くことをしてきました。そうしながらルーモの中に「心」が芽生え、悲しさや嬉しさ、喜び、勇気、ときめき、楽しさ、寂しさ、辛さ、そんなことを学んでいます。妖精なのに、少しづつ人間に近づいているのです。

そしてまたお坊さんのお話を聞いて、ルーモの心に芽生えたことがあります。

それは、自分は何者なのか?ということでした。

そして、自分はなんのためにここにいるのか?

オーストラリアのウルルの一枚岩の所で、ルーモの心に灯った哲学的な発想はここでもまたさらに形を現してきました。

それを聞いてみようと、お坊さんに目を向けますと、お坊さんは静かに遠くを見ていました。その横顔があまりにも美しく、透き通っているような気がして、ルーモは質問などとうに忘れてしばし見惚れていました。菩提樹がさわさわさわさわ鳴りました。

「ルーモ~」とどこから声がしました。台風にさらわれた風さんがやっとのことで帰ってきたようです。
「あ~、もう大変な目にあったよ。台風の大風にロシアの方まで引っ張りまわされちゃって」
「私も大変だったのよ。イルカさんや川の精さんのお世話になってここまで来たの」

風さんはまだ少し勢いがついていて、いきなりルーモを背中に乗せてしまいました。だから、ルーモは質問もさよならもありがとうも言えないまま、菩提樹のはるか真上に舞い上がりました。ルーモが急に消えたのを知っても、若いお坊さんは静かに菩提樹の下で座っていました。



お話妖精ルーモと風さんネパール⑨

2020-05-11 14:10:43 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月9日(火)弓張り月の夜 ネパール

風さんは台風に巻き込まれたせいでしょうか、今までよりも一回り大きな風に成長していました。もう小さな風ではありません。力もスピードも強くなっています。そして、今日はルーモをネパールという国の世界一高い山エベレストに連れていきました。

雪に覆われた山の中腹には、山登りの人たちの休憩所であるテントがいくつもありました。テントに入るとの中の人たちにはルーモが見えました。みんなとても歓迎してくれました。ルーモを見ることができる人は心に深い悲しみと寂しさを心に持った人、オーストラリアで出逢った時空を飛び越えられるような人だけですが、もうこの世にはいない人たちにも見ることができました。

このテントの中には、山登りの最中に亡くなってしまった人たちが集まっていました。彼らは、山が大好きで、エベレストが大好きで、今でも山を登ったり、テントで生活したりしているのです。その人たちは全然悲しくも寂しくもなく、逆にとても楽しそうでとても元気で、生きていいる人と何も変わりません。

その一人が、ルーモにエベレストに住む雪男の話をしてくれました。

~この山には確かに雪男がいるんだ。オレも生きてるときに足跡を見つけたことがあったし、死んでからは友達になって今ではおれの一番の仲良しだ。雪男は生きてる人と死んだオレたちのいる世界、両方を行き来しているんだ。だから、生きてる人たちが、雪男を見つけようと必死に探しても足跡しか見つからないってわけさ。~

ルーモは尋ねました。
「死んでからの世界ってどんななの?」

~会いたいものにはいつでも思っただけで会える。行きたいところには思っただけで行ける。便利なところだよ。心のままにいられるんだ。だから、心が大切なのさ。大きな心を持った人は死んだ後も大きな恵みが得られる。小さな心の人は小さな恵みさ。みんなそれぞれだ。それぞれの恵みの中で喜んで暮らしている。だけど、より大きな心になるために、人は何度も生まれ変わって地上に降りていくのさ。大きな心になるためには地上で心を耕すしかないんだ~

「天国には神様がいる?」

~生きてるときはオレも神を崇めて、拝んで、憧れた。神は生きる支えだった。死んでやっと気づいた。神ってのは、いつでもどこでもいるし、外側にいるもんじゃねぇ。おれらの中にちゃーんといる。必ずだ!!~

「私は人間じゃない。妖精よ。私の中にも神さまっているのかな?」

~面白いことを考える妖精だな。これまでもいろんな妖精や妖怪、怪物を見てきた。楽しいやつらが多い。でも、人間と違うところは心を耕すことはしないんだ。人間みたいに死んでまた生まれないから変わらない。もともと心も持たない。何千年、何万年もそのままだ。だから気楽なのさ。

まてよ。でも、どこかで聞いたことがあるぞ。人のために力を尽くした妖精は、人間に生まれ変わることができるって~

ルーモの胸がどきんと鳴りました。
「人のために力を尽くした妖精は人間になれる・・・。私もなれるだろうか?」
ルーモははっきりと「人間になりたい」という自分の気持ちに気づきました。

テントの外でその話を聞いていた風さんもぶるっと震えました。
エベレストの冷気のせいでしょうか?

風さんはそれを打ち消すようにビューンとエベレストの山肌を走り、大きく息を吐きました。
エベレストの頂上には、無数の星々が煌いていました。