序章
私がいつか夜空に見た翼のある光の存在は私にメッセージをくれた。
「光の世界は本当に完璧で幸せに満ちている。
そして、地上はそれよりも何倍も幸福である。
けれど、地上の人間はそれに気づいていない。
気づかないようにさせる意地悪な存在がいて、
何千年何万年もあなたたちの幸福を奪ってきた。
しかし、もうその時は終わり、
あなたたちは地上に天国を作り始めている…」
あの光の存在は、そう言って空という大きな海を泳いで消えていった・・・
第一章
1,クリスマスイブの白い犬
それは、クリスマスイブの朝だった。
空気がきりっと引き締まった、晴れて冷え込んだ朝だった。
電話のベルが鳴る。
電話は母さんの姉さんからで、
「白い子犬がね、タイヨースーパーの入り口にあるパン屋のクリームパンを盗み食いしたのよ。それで警備員さんにつかまって、明日には保健所に連れていかれるって!ねえ、お前のとこで飼ってくれない?」
母さんは電話口で困っていた。
「うちには猫が3匹いるから犬は飼わないって決めてるの。どうしよう。その犬可哀そうだけど、うちでは飼えない。まあ、とりあえず保護しにいくよ。だって、今日はクリスマスイブだよ。こんな日に保健所に連れていかれちゃうなんて可哀そうすぎる!」
母さんは、家から一時間くらいかかるおばさんの勤めているタイヨーに車を飛ばした。広い駐車場をぐるっと回りスーパーの裏手、警備員室の横に本当に白い子犬がつながれていた。もう三か月くらいの大きさで、ぱっとみはレトリバーみたいだった。母さんが近づくとなつっこいその子犬は1000%の喜びようで、母さんの顔をびしょびしょになるくらいなめて、尻尾が千切れるくらいふっていた。
母さんは、心の中で(あー、この子は誰にでも愛嬌のある子だな)と苦笑して、
「お待たせ、さあ、行くよ」
って子犬を車に乗せた。
この子犬が、このお話の主人公。雑種犬の白い犬『くう』ちゃんです。
そして、このお話の語り手である私は母さんの娘の藍。
くうちゃんが家に来たときは、小学校二年生8歳の女の子。
お話を語っている私はなんと26歳の社会人。
この18年間の『くう』と『母さん』と私『藍』が地上天国を作る物語です。
どこにでもある日常の生活の中にスペクタクルやミラクルやサスペンス、ラブストーリーもちょいちょい顔を出します。
どうぞ。お楽しみに・・・。
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