Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

地上天国②

2022-07-21 10:53:51 | 本・小説・エッセー

2,宇宙に一匹の白い犬

白い犬は思ったよりも大きくて、人間に例えれば小学校一年生くらい。
「名前どうする?」
「クリスマスに来たからクリちゃんは?」
まだ飼うかどうか決めかねていたこともあり、名前はあっさり『クリ』になった。

結局なし崩し的にくりは我が家の犬になっていった。
そうして、クリから『くう』になったというわけ。

大変だったのは母さん。
朝晩の《お散歩》が始まった。
元気もののオスの子犬は、走る走る、引っ張る引っ張る。
しつけの「し」の字も知らない母さんは、元気なくうにすっかり引きずり回されて、空き地ではくうと思いっきり走って、あり得ない転び方をしていた。(母さんは散歩中に右足の小指の骨を折ったこともあるし、いきなり引っ張られて左肩関節を外したこともある。)
でも、母さんはくうとの散歩のとき、笑顔が子供みたいだった。
散歩から帰った後の母さんの顔が綺麗だった。

くうはご近所のアイドルにもなっていった。
住宅地の道路に面した我が家の小さなデッキに犬小屋を置き、そこがくうの居場所になったので前の道を通りがかる犬好きの人の心の癒しにくうはとても貢献した。

くうは可愛がってくれる人に吠えることはなかったし、なじみの人が来ると必ず起き上がって挨拶し、撫でられていた。

通勤や買い物や散歩の行きかえりに必ず訪れる人も何人もいた。

そうそう。
くうは生まれつき左目の周りに黒のアイラインがなくて肌色だった。
よく「あれ、左目悪いの?」「あら?目が・・・」と言われた。ただの見た目のことであって目が悪いわけではない。そんな風に気にする人の言葉が私の心に軽く刺さった。

そして私も、左目にも綺麗に黒のアイラインが入っていたらもっと可愛かったのね、くうは出来損ないないんだって思った。

ある日、茶色の雑種の老犬を散歩させてるおじさんが通りかかった。
おじさんはくうを「いい犬だなぁ、立派立派!」とほめてくれた。
私はおじさんに目のことを気付かれる前に自分から、でも「目の周りがね…」と残念そうに言った。

すると、おじさんは
「それがこの犬のユニークな個性じゃろうが!」
と大きな声で笑い飛ばした。

おじさんの言葉は私の杞憂を吹き飛ばした。
そうだ!くうはこの宇宙にたった一匹の素晴らしい犬。
左目のノーアイラインはくうがくうであることの証なんだ!って却って誇らしくなった。
おじさんのお蔭で私はもっとくうを好きになった。

くうは左目がノーアイラインでも、1000%の愛嬌で通りかかる人たちに絶大な人気となっていく。

もちろんくう自身は、目がどうだとか、散歩中に母さんが足を骨折しようがなんのお構いもなしに、まさにマイペースそしてあるがままだった。





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