初めてその女性に会った日は、直接会話をすることはなく
挨拶だけしたと覚えている。
父が言うには、日本語がまだあまり上手く話せない、理解も難しいところがあるとか
なら、どうやって父とコミュニケーションがとれたんだか
そんな謎も、嘘も、後からすぐにバレるんだけど
父からの説明はこうだった。
デートをしているうちに、父を好きになり
いつも一緒にいたいから
仕事を辞めて、住まいを出て
同棲しよう
結婚もしたい
(この辺までで出会って、2週間ほど)
同棲をはじめてから
女性は父と結婚したい、四国に夫がいるので
離婚してきます
(と家を出て、ひと月ほどで戻る)
行くあてもなく、住まいも仕事もない女性を放り出せない父に
微笑みを終始絶やさない、謎の女性がベッタリ張り付いて離れず
「物事にはな、順序っていうのがあるんよ」
父によく言われたこの言葉
胸の真ん中あたりで回りだしたのは、
この日から、しょっちゅうだった。
この時の
父の説明は数年先で
真実に切り替えられる日がやってくる
だから、今少し
まだ驚かず
つづく