詐欺に出会って、お父さんは天国へ行きました

　ベッドに横になり

点滴をしてもらってる父の横に

女性は寄り添うようにして

ワタシが部屋に入ると

それまでも、何度も感じたことのある

違和感を、またワタシに与えた

父の顔を見て

安心して、お喋りを始めるワタシの話を

いちいち遮る女性は

ワタシから前日の父の様子を聞かせたくないようだ

「昨日のこと、覚えてるん？」

と

ワタシが父に聞くと

父は

「いや、それが全然記憶がないんよ」

そこで、忘れもしない

女性が言った

こんなこと

「おとさんは、ホントの娘もー、孫もー、長男のこともー全部わすれたのにー、

私(女性)のことだけ、覚えててー」

と

父に笑顔で嘘話を語りかけ

ワタシを見て笑った

そのあと

「だからー私(女性)はーおとさんはーまだ病院行かなくても、いいー思ったからねー」

と

病院へ連れて行かなかった言い訳もした

更には

ワタシを自宅に帰らせた後

出かけたのだ

夜遅く帰り

父が眠っているのを見たから

大丈夫だと思った

とか

ワタシが何度も携帯にかけたのも

気づかず

そのうち充電が切れたから

連絡とれなかったんだと言い

ひととおりの言い訳をすると

タバコを吸いに

外へ出て行った

女性がいない隙に

ワタシは、父に

前日の父の様子を

全部話した

病院へ連れていかず

パチンコへ行ったんだろうと

ワタシも父も呆れたけど

何より

回復していて良かったし

母の大切にしていたオーブンに頭をぶつけたんだか

もしや、それで血が流れ出したのなら

母が父を救った

きっと

そうに違いない

父は

それをも覚えていないのだから

本当に何が起きたのかは

わからないけど

麻痺もなく

滑舌も良く

まるで奇跡

お医者様も首をかしげられながらも

父と女性との関係を知り得た上で

なるべく、今後は和食中心で

と

女性抜きで

指導された

女性が

タバコを何十本吸ったのかってくらい

病室に戻ってこないうちに

父から聞いた話では

病院へ来て

診察を受けて

入院が決まって

病室に入り

ベッドに横になると

女性が

自分の長男とその婚約者を連れて

病室に入り

長男が父をとても心配し

言葉を色々かけ

婚約者を紹介して

帰ったんだと

ワタシの兄より先に

病院へ来ていたのだった

つづく