向き合って話す父に
ワタシは何度も
「それって・・・奥さん・・・」
とか
「あの女性(ひと)しか・・・・」
「誰も知らんのんなら・・・ねえ、お父さんちゃあ」
言葉を濁し濁し
言うも
父は
前のめりに
ヒソヒソ声で
「いやいや、そんなことまで、ようせまーでー(しないだろう)」
かばいつつ
疑わないように
ワタシにも、父自身にも
いいきかせる感じだった
女性は奪えるものは奪うってのに
喉元過ぎて熱さ忘れたのか
色にやられたのか
実家で
まさか
窃盗事件だなんて
普通に起きる話ではないっていうのに
それまで起きた出来事も
女性のいうことも
嘘ばかりだったのに
父はまだ女性を
疑いきれていないようだ
とにかく
引き出されたお金は戻ってはこない
事件後からのことも聞いた
女性は事件前と変わらず
パチンコへ行き
お金がなくなれば
父にねだり
危機感もない様子に
いささか参っているという
父は女性に
「ないものは、なーい」
と
お財布を逆さにするジェスチャーをすると
父の背広の内ポケットやら
ズボンのポケットに手を入れては
「ここに、すこしあるか、ここにいれてるか」
と
女性は父がまだ現金を隠し持っているとでも
思っているようで
打ち出の小槌?
「なんぼでも出てくるとでも思うとるん?怖いわ」
恐ろしがるワタシに
「ほじゃが、ないからな、やられんで」
父は案外あっけらかんで
コーヒーSHOPで
30分は話していたろうか
父の携帯に女性から電話だ
「今、Sちゃんとコーヒー飲んどるんじゃ
代わろうか?」
イヤイヤをして
手も首も振るワタシに
父は携帯を押し付けた
仕方なく
「こんにちは」
とだけ
挨拶をすると
女性は
「なんでえ、おとさんと、会ってますか?」
は?
なんでだと?
ワタシは
「泥棒が入ったんですって?今聞いたんだけど」
店内で
声を響かせてしまった
すると
「チッ チッ」
と舌打ちしてから
ため息混じりの唸り声を出して
「おとさんと、かわってください」
つづく
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