竹林亭白房

談志「源平盛衰記」★落語

□本日落語一席。
◆立川談志「源平盛衰記」(CD『家元の軌跡 談志続30歳』DISC-1)。
東宝演芸場、昭和41(1966)年9月6日収録(第400回「東宝名人会」※1966年9月上席)。
出囃子で高座にあがり、「いっぱいのお運びさまで、厚く御礼を申しあげます」というひと言のあと、客席から「源平」という声がかかった。すると、すぐさま反応した家元は、「何を演ってもたいしたかわりありませんが、でしたら、『源平』を一席申しあげます」と言って語り出した。

ということは、この高座のために、ネタを繰っていたわけでもないのだろうが、スロースタートで語る家元の「源平盛衰記」は徐々にドライブがかかっていき、あとは、立て板に水どころでなく、マシンガンのように言葉を放出する一席だった。

「リリーフで送り出したのが平清盛」、「神は罪を憎まない、罪のバレる間抜けさを憎む」とか、その場の即興で台詞がうかんでくるのだろうかというフレーズが次から次とひっきりなしである。
途中で講談調の語りをまじえ、かつ、一龍斎貞丈や、神田松鯉などのものまねでそれらを演じるという才人ぶりである。

『源平盛衰記』は地語りなので、ときの時事や世相ネタが何十となく飛び出すが、ここは昭和世代でなければわからないものが多いだろうというのは、やむを得ないことである。

まさに、三十歳にして絶頂期を思わせる高座で、天才落語家と言われた所以がよくわかる。こんな落語家は古今東西不世出であろう。
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