老親の不在の間に
家の中を整理してます。
抽斗の底に無造作にあった
掌大の黒い円盤。
ずっしりとした重さで
真ん中に平たい穴。
何だろうと考えて、
刀の鍔だと気がつきました。
刃の大きさからして、
脇差の鍔のようです。
どうしてこれがここにあるのか。
明治の廃刀令の際に
刀は処分したものの、
侍の根性を忘れぬよう
鍔だけでも残したのか。
時を経て昭和の戦争末期、
金物拠出に鍋釜は出しても
これだけは隠し通したか。
この家に残そうとした侍の根性は
残念ながら揮発してしまったのか。
あるいは、ただの文鎮代わりに
使われていたものかも知れません。
古い物はただ静かに
ここにあるのでした。