フランスARTEテレビ「福島の漁師たち」9月20日
http://www.mag2.com/m/0001338113.html
詩人の部屋 2011/10/03 第一号
わたしの部屋は8畳ほどだが南と北、東に窓がある。部屋というより物置だ。壁という壁は本棚。本で部屋は埋まっている。オーデイオと机と椅子。至って単純。精神状態には良くない。あまり落ち着いた部屋ではないのだ。発狂の元になるような部屋だ。
その部屋で今日からメルマガを発行する。自動記述で指の運動だ。使っているパソコンはMacBook。3年ほど前に買った。キーボードのキーが小さいので指先の不器用なわたしにはちょっと打ちにくい。
わたしは自分のことを詩人だとは思わないがどういうわけか人生行路を四苦八苦していたら妻に養われて”詩人”のような暮らしになってしまった。もう読みたい本も無いし詩を書く集中力も失ってしまった廃残だ。
年齢は53歳だから若くはない。一歳と八ヶ月になる孫が居る。家族全員で孫を育てるために孫に振り回されている。わたしは”政治”的人間でマルクスを読み、書籍も自費出版するような人間だが、家族はまったくそんなことに興味を持たない。頭の働かせ方が根本で異なっているのだ。わたしが興味深いと思って話をすると、家族はストレスになるのでやめてくれとにべもない。
早朝に新聞配達を二時間、あとは夕食を作ったり風呂を沸かしたり家事をする。一日中部屋にこもっているようなものだ。山村に住むから周りは緑に彩っている。自然環境は都会に較べればましな方だろう。時々散歩に出るが人の顔を見るのが嫌なので静かに人になるべく会わないように気をつける。
そういう訳で、話し相手もなく相手にしてくれる者も居ない。つまらないのでメルマガを発行する事にした。自分のひとりごとをなんとなくインターネットサーバにアップロードしておくのだ。だれも読む者など居ないのはわかりきったことなんだが、ひょっとしたら書いたものが何かのルートでだれかに伝わるかもしれないという望みはある。
日本語しか分からないので日本語で書くのだが、日本語で自動記述するのは本来できないことだと思うようになった。ブルトンやアラゴンやエリュアールやその他のシュールレアリズムの創始者たちが行った自動記述はおもにフランス語だったろう。西欧語と日本語ではまったく言葉の成り立ちが違っている。日本人が西洋かぶれで日本語で自動記述したって始まらない。わたしはわたし。わたし流にこれまでの言語生活の経験と限界の中で書く。そうでしかあり得ないのだ。時々推敲を重ねながらキーボードを打てばいい。
いまわたしの心の中を占めているのはあれこれの政治的事件でもないし原発事故の事でもない。地震災害や豪雨災害の事でもない。昔読んだあれこれの書籍の事でもない。始めたばかりの数学や物理学の復習の事でもない。空っぽなのだ。金を稼ぐ才もないしだれか異性に興味があるはずも無い。空っぽなのだ。
原発から廃棄される放射性廃棄物は100万年の間管理が必要らしいが100万年という単位でなにか考える事はほとんど無駄だ。その間に日本は造山運動やら地殻の褶曲やらで海に沈んだり浮かび上がって大陸とつながったりを繰り返すだろう。海に沈めばそれで日本語を話す人たちも居なくなるかもしれない。日頃人々が抱いている価値と言う価値が無限にゼロに近づいて行くのが100万年と言う単位だ。金も財産も名誉も業績も偉績も何もかもが失われるのだ。
もちろんこの部屋も消えて無くなってしまう。住んでいたわたしはまったく雲散霧消する。何も無くなるのだ。書いたことも部屋中にある書籍も日々の日記帳も大切に保存している過去の記録も。なにもかも。育てた係累も途絶えてしまう。
そう考えると百年二百年など短いものだ。ましてや人の一生などほとんど瞬時だ。後の世代になにか期待を遺すなど愚かなことだ。いま現在でさえ世界はこの通り。億万長者も居れば悲惨に苦悩する人々の姿もある。後に生きる人々のことは後に生きる人々にまかせばいいのだ。なにも教訓めいた事を書いて指図することも無い。
そうだとしたらわたしが書くのは現在のためでしかない。いま現在。常に過去へと過ぎ去りつつある現在。
あなたと呼ぶのはわたしの勝手な想念だろう。あなた。他者を想定することなどわたしのわがままだ。他者など居ない。すべてはひとりごとでなんとなく。あの幼い日々に。明るい縁側でひとりごとをつぶやくのを無上の悦びとした。
あの幼い日々にもどって、あなた、と語ろう。そばに編み物をする曾祖母が居た。安心してぽかぽか暖かい縁側でひとりごとをつぶやいた。あのように。
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詩人の部屋 http://www.mag2.com/m/0001338113.html
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詩人の部屋 2011/10/03 第一号
わたしの部屋は8畳ほどだが南と北、東に窓がある。部屋というより物置だ。壁という壁は本棚。本で部屋は埋まっている。オーデイオと机と椅子。至って単純。精神状態には良くない。あまり落ち着いた部屋ではないのだ。発狂の元になるような部屋だ。
その部屋で今日からメルマガを発行する。自動記述で指の運動だ。使っているパソコンはMacBook。3年ほど前に買った。キーボードのキーが小さいので指先の不器用なわたしにはちょっと打ちにくい。
わたしは自分のことを詩人だとは思わないがどういうわけか人生行路を四苦八苦していたら妻に養われて”詩人”のような暮らしになってしまった。もう読みたい本も無いし詩を書く集中力も失ってしまった廃残だ。
年齢は53歳だから若くはない。一歳と八ヶ月になる孫が居る。家族全員で孫を育てるために孫に振り回されている。わたしは”政治”的人間でマルクスを読み、書籍も自費出版するような人間だが、家族はまったくそんなことに興味を持たない。頭の働かせ方が根本で異なっているのだ。わたしが興味深いと思って話をすると、家族はストレスになるのでやめてくれとにべもない。
早朝に新聞配達を二時間、あとは夕食を作ったり風呂を沸かしたり家事をする。一日中部屋にこもっているようなものだ。山村に住むから周りは緑に彩っている。自然環境は都会に較べればましな方だろう。時々散歩に出るが人の顔を見るのが嫌なので静かに人になるべく会わないように気をつける。
そういう訳で、話し相手もなく相手にしてくれる者も居ない。つまらないのでメルマガを発行する事にした。自分のひとりごとをなんとなくインターネットサーバにアップロードしておくのだ。だれも読む者など居ないのはわかりきったことなんだが、ひょっとしたら書いたものが何かのルートでだれかに伝わるかもしれないという望みはある。
日本語しか分からないので日本語で書くのだが、日本語で自動記述するのは本来できないことだと思うようになった。ブルトンやアラゴンやエリュアールやその他のシュールレアリズムの創始者たちが行った自動記述はおもにフランス語だったろう。西欧語と日本語ではまったく言葉の成り立ちが違っている。日本人が西洋かぶれで日本語で自動記述したって始まらない。わたしはわたし。わたし流にこれまでの言語生活の経験と限界の中で書く。そうでしかあり得ないのだ。時々推敲を重ねながらキーボードを打てばいい。
いまわたしの心の中を占めているのはあれこれの政治的事件でもないし原発事故の事でもない。地震災害や豪雨災害の事でもない。昔読んだあれこれの書籍の事でもない。始めたばかりの数学や物理学の復習の事でもない。空っぽなのだ。金を稼ぐ才もないしだれか異性に興味があるはずも無い。空っぽなのだ。
原発から廃棄される放射性廃棄物は100万年の間管理が必要らしいが100万年という単位でなにか考える事はほとんど無駄だ。その間に日本は造山運動やら地殻の褶曲やらで海に沈んだり浮かび上がって大陸とつながったりを繰り返すだろう。海に沈めばそれで日本語を話す人たちも居なくなるかもしれない。日頃人々が抱いている価値と言う価値が無限にゼロに近づいて行くのが100万年と言う単位だ。金も財産も名誉も業績も偉績も何もかもが失われるのだ。
もちろんこの部屋も消えて無くなってしまう。住んでいたわたしはまったく雲散霧消する。何も無くなるのだ。書いたことも部屋中にある書籍も日々の日記帳も大切に保存している過去の記録も。なにもかも。育てた係累も途絶えてしまう。
そう考えると百年二百年など短いものだ。ましてや人の一生などほとんど瞬時だ。後の世代になにか期待を遺すなど愚かなことだ。いま現在でさえ世界はこの通り。億万長者も居れば悲惨に苦悩する人々の姿もある。後に生きる人々のことは後に生きる人々にまかせばいいのだ。なにも教訓めいた事を書いて指図することも無い。
そうだとしたらわたしが書くのは現在のためでしかない。いま現在。常に過去へと過ぎ去りつつある現在。
あなたと呼ぶのはわたしの勝手な想念だろう。あなた。他者を想定することなどわたしのわがままだ。他者など居ない。すべてはひとりごとでなんとなく。あの幼い日々に。明るい縁側でひとりごとをつぶやくのを無上の悦びとした。
あの幼い日々にもどって、あなた、と語ろう。そばに編み物をする曾祖母が居た。安心してぽかぽか暖かい縁側でひとりごとをつぶやいた。あのように。
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