Sailing 訳詞付 - ロッド・スチュアート
2015.6.18 【切り抜き】パート1瀬戸内寂聴さんインタビュー
2015.6.18 【切り抜き】瀬戸内寂聴さんインタビュー パート2
2015.6.18 【切り抜き】Q.若い世代に寂聴さんからメッセージを~瀬戸内寂聴さんインタビュー
2021/11/06 15:15
11月に入った。
”群れ”を信頼して立つ。ということをこの頃考えている。今年の初め正月に猛志の一家や健人の一家が帰省してにぎやかに正月を迎えたが、年始めに浮かんだ言葉が「毒をもって毒を制す」という言葉だった。紙切れに清書していつも座っている炬燵の正面の本棚の端に貼り付けた。今年の座右の銘は「毒をもって毒を制す」だった。辞書を引いたりネットで調べたりして言葉の意味をそれとなく探った。
「毒をもって毒を制す」とはその言葉通りに受け取ればいいが、悪事(悪人)にたいして相応の悪事(悪人)をあてて制御すると言う意味がある。人には何人か周りに味方する者がいるが何人かの割でどうしても敵となる者がいる。自分の敵に対してみずから行動を起こして制するよりも敵にもいるだろうはずの「敵の敵」を当てれば制御しやすい。「敵の敵」の自然な存在を利用するのだ。悪事にたいしてその悪事に対する悪も存在する。「毒をもって毒を制す」とは集団として存在する人間の有り様を示す言葉なのだ。
人間は集団を形成して生存している。旧ソ連型の「集団主義」倫理かアメリカ型の個人主義的「集団主義」倫理かを問わなくていい。人間は常に群れを形成している。
獲物を追う狩りにおいてひとりで獲物に対するよりも、獲物を狙う他者が必然に生じることを利用すれば良い。自然に集団作業が始まるのだ。群れとはそういうものだ。味方もいれば敵もいる。敵もいれば味方もいる。一人きりで生きる人間は、人間の歴史を形成し得ない。生殖と新しい世代の形成は群れにおいてなされる。家族と言う形態の群れは人間の存在に深く影響する。
敵に対すとき、直接おのれが手を下さなくても必然に現れる「敵の敵」をあてて制御すればいい。群れの中で群れの自然を深く信頼していればいいのだ。自ずと事態は推移していく。おのれの思惑とは断絶した論理で群れ自体が成立し推移し進展していくだろう。群れの中に深く身を沈めていればいいのだ。おのれの主観を超えたところで事態はきっとうまく展開していく。大地を信じて立つように”群れ”の中にいる自分を信じていればいい。…
11月に入った。
”群れ”を信頼して立つ。ということをこの頃考えている。今年の初め正月に猛志の一家や健人の一家が帰省してにぎやかに正月を迎えたが、年始めに浮かんだ言葉が「毒をもって毒を制す」という言葉だった。紙切れに清書していつも座っている炬燵の正面の本棚の端に貼り付けた。今年の座右の銘は「毒をもって毒を制す」だった。辞書を引いたりネットで調べたりして言葉の意味をそれとなく探った。
「毒をもって毒を制す」とはその言葉通りに受け取ればいいが、悪事(悪人)にたいして相応の悪事(悪人)をあてて制御すると言う意味がある。人には何人か周りに味方する者がいるが何人かの割でどうしても敵となる者がいる。自分の敵に対してみずから行動を起こして制するよりも敵にもいるだろうはずの「敵の敵」を当てれば制御しやすい。「敵の敵」の自然な存在を利用するのだ。悪事にたいしてその悪事に対する悪も存在する。「毒をもって毒を制す」とは集団として存在する人間の有り様を示す言葉なのだ。
人間は集団を形成して生存している。旧ソ連型の「集団主義」倫理かアメリカ型の個人主義的「集団主義」倫理かを問わなくていい。人間は常に群れを形成している。
獲物を追う狩りにおいてひとりで獲物に対するよりも、獲物を狙う他者が必然に生じることを利用すれば良い。自然に集団作業が始まるのだ。群れとはそういうものだ。味方もいれば敵もいる。敵もいれば味方もいる。一人きりで生きる人間は、人間の歴史を形成し得ない。生殖と新しい世代の形成は群れにおいてなされる。家族と言う形態の群れは人間の存在に深く影響する。
敵に対すとき、直接おのれが手を下さなくても必然に現れる「敵の敵」をあてて制御すればいい。群れの中で群れの自然を深く信頼していればいいのだ。自ずと事態は推移していく。おのれの思惑とは断絶した論理で群れ自体が成立し推移し進展していくだろう。群れの中に深く身を沈めていればいいのだ。おのれの主観を超えたところで事態はきっとうまく展開していく。大地を信じて立つように”群れ”の中にいる自分を信じていればいい。…
”
インスピレーションはなぜ、どのように起きるか。
またどのような人物によく起きるのか。
はなしはかんたん、
現実から逃避したい人間によく起きる。
なぜなら現実に生きていることが、そういった人には苦しすぎるからだ。
インスピレーションには、現実逃避以外に効能があるか?
ない。
インスピレーションはさらにいえば、神経をまいらせる病気といえるから。
インスピレーションが昂じると、パラノイア(幻想)となる。
パラノイアと空想癖とはさして違いはない。
あなたは、インスピレーション派か?
そうだ。
幼いときから空想を描いて楽しんできた。
生きるのが苦しいのか?
現世は苦しいものだ。
ただ他人よりも少しだけつらさが大きいだけのことだ。
みんなは鈍感すぎる、生きていくのにちょうどよいくらいに。
本当は、生きているのが恥ずかしい。そして悲しい。
イメージを描いてみろ!
豆科の植物で蔓を巻くのがあるだろう。
たとえばサヤインゲン、サヤエンドウ、ソラマメ。
たとえばその花がみごとに透きとおるような紫だったら、
おまえはその花をまじまじと見つめることができるか。
私にはできる。
しかし誰よりも恥ずかしく胸ときめかせて。
その花がまた、ことにかわいげで小さな花としたら、
おまえも見つめることができるか?
もちろんできるだろう。
だが私が、まじまじと花を見つめることができるのは、妻のおかげだ。
妻の名は、見保という。
その花をたとえるには、一つの言葉で足りる。
けれどもその花をたとえようと、見つめているまに、
夜が来て、花は二つの花びらを閉じ、
すべてを隠してしまうのだ。
インスピレーションはなぜ、どのように起きるか。
またどのような人物によく起きるのか。
はなしはかんたん、
現実から逃避したい人間によく起きる。
なぜなら現実に生きていることが、そういった人には苦しすぎるからだ。
インスピレーションには、現実逃避以外に効能があるか?
ない。
インスピレーションはさらにいえば、神経をまいらせる病気といえるから。
インスピレーションが昂じると、パラノイア(幻想)となる。
パラノイアと空想癖とはさして違いはない。
あなたは、インスピレーション派か?
そうだ。
幼いときから空想を描いて楽しんできた。
生きるのが苦しいのか?
現世は苦しいものだ。
ただ他人よりも少しだけつらさが大きいだけのことだ。
みんなは鈍感すぎる、生きていくのにちょうどよいくらいに。
本当は、生きているのが恥ずかしい。そして悲しい。
イメージを描いてみろ!
豆科の植物で蔓を巻くのがあるだろう。
たとえばサヤインゲン、サヤエンドウ、ソラマメ。
たとえばその花がみごとに透きとおるような紫だったら、
おまえはその花をまじまじと見つめることができるか。
私にはできる。
しかし誰よりも恥ずかしく胸ときめかせて。
その花がまた、ことにかわいげで小さな花としたら、
おまえも見つめることができるか?
もちろんできるだろう。
だが私が、まじまじと花を見つめることができるのは、妻のおかげだ。
妻の名は、見保という。
その花をたとえるには、一つの言葉で足りる。
けれどもその花をたとえようと、見つめているまに、
夜が来て、花は二つの花びらを閉じ、
すべてを隠してしまうのだ。
”
おぼえているだろう、
あの夏蝉のなく声を
ひと夏中、耳の奥でうなっていた。
遠い歴史を刻んだ石碑が一つ、
木陰にひんやりと立っている。
石碑は何代も昔の蝉の声をおぼえていた。
この土地から離れ難いのは、
私の魂だけではない。
昨日亡くなった明治生れのじいさんの
魂もそうだ。
人がかんたんにあの世に行かなくなったので、
私の村もかわってしまった。
土や緑がよそよそしいのだ。
人生がつまらないということは、
大した発見でもない。
はかない存在。
おぼえているだろう、
一日中休まずうなる蝉の声を、
あれは嘆きではなかった。
蝉の腹の空気がシンドウシテイル。
おぼえているだろう、
あの夏蝉のなく声を
ひと夏中、耳の奥でうなっていた。
遠い歴史を刻んだ石碑が一つ、
木陰にひんやりと立っている。
石碑は何代も昔の蝉の声をおぼえていた。
この土地から離れ難いのは、
私の魂だけではない。
昨日亡くなった明治生れのじいさんの
魂もそうだ。
人がかんたんにあの世に行かなくなったので、
私の村もかわってしまった。
土や緑がよそよそしいのだ。
人生がつまらないということは、
大した発見でもない。
はかない存在。
おぼえているだろう、
一日中休まずうなる蝉の声を、
あれは嘆きではなかった。
蝉の腹の空気がシンドウシテイル。
”
秋の風が吹くころ
小橋の上を
赤とんぼの群れが
渡っていった。
夕暮れの赤いひととき
今はもう
赤とんぼはいない。
冷たい風が心にしみるからではない
平和の風景が
失われたから。
秋の風が吹くころ
小橋の上を
赤とんぼの群れが
渡っていった。
夕暮れの赤いひととき
今はもう
赤とんぼはいない。
冷たい風が心にしみるからではない
平和の風景が
失われたから。
”
谷の音に
目を覚まし
霧が晴れるのを待つ
少し小寒い朝
私の心は
洗われていく
あの青い空の光のなかに
竜の親子がなかむつまじく
暮らしている。
雲は、人間の心に
一つ 二つ 卑しい影を落とした。
谷の音に
目を覚まし
霧が晴れるのを待つ
少し小寒い朝
私の心は
洗われていく
あの青い空の光のなかに
竜の親子がなかむつまじく
暮らしている。
雲は、人間の心に
一つ 二つ 卑しい影を落とした。
”
風が雲を追い払った。
そこに見えるのは
初冬の冴えた空
澄んだ 光り
何年か前に植えた
桧の葉に
ちらちらと光が
とりついている。
山仕事の
数秒の間隙、
私は、
明日を見た。
風が雲を追い払った。
そこに見えるのは
初冬の冴えた空
澄んだ 光り
何年か前に植えた
桧の葉に
ちらちらと光が
とりついている。
山仕事の
数秒の間隙、
私は、
明日を見た。