シマトネリコはただ植えてあるだけで、別に花を楽しもうとかそんな気持ちはない。盛夏にはセミが見渡す限り三十匹も、数え残しを推定して五十匹もへばりついてわんわん鳴くような木だから、折々に枝を落として小ぶりにまとめていきたいと常々思っていた。
太めの枝を落とす強剪定は、木によって適切な時期がある。ただシマトネリコは「だいたいいつやってもいいんじゃねえの」というくらいの、でもまあ生育期の春から秋にかけてのほうが傷みにくいのかな、という程度の注意しか必要としないそもそも強い木である。細かいことは気にせずに、背丈を構成している高い枝から順に切りながら、なんとなく全体を丸っぽくまとめる適当なカットをしていく。
強いとはいえ切り口から変な病気になってもよくないので、太めの枝を切ったら殺菌剤を塗布していく。名前を聞いただけで使い方が想像できる「キニヌール」が店頭になかったので同種の「トップジンMペースト」を買ったが、家では他にオリーブと常緑ヤマボウシを一本ずつ切ることがあるだけなので、200g入りチューブも使い始めてもう3年目かな。なのにほとんど減ってない。
これを、最初は使えていたのに途中で詰まりはじめた。なんで?と思いながら強く絞ったら出てきていたのがだんだん出が悪くなって。さらに強めに絞ったら、チューブの先についている中栓が破裂するように吹き飛んで、中身が100gくらい飛び散った。オレンジ色のペースト状の殺菌剤が最大3mほど飛んだほか、服や腕や手袋に散乱した。エイリアン映画で粘着性の体液がかかる場面を想起したけど、これはよけられませんわ。まだ飛ぶ方向がよくて、ズボンや顔は無事だった。作業時に着ていた服は2005年岡山国体ハーフマラソン(オープン参加の部。正選手でないから得点には関係せず別名「自由参加の部」と言われたが国体には違いない。こう見えて元国体選手なのだ)の指定着で、大事に使っていたのにすっかりオレンジだよ。
枝をよけて中腰で脚立から足を下ろした先が花壇の端のレンガ。かかと側が思いのほか沈んでバランスを崩し、自分では冷静に脚立をつかんだと思ったら脚立ごとそのまま後ろに倒れていった先の低木が背中に刺さる不運も。
よその家にもシマトネリコはよく見るんだけど、みんながどうやって手入れしているのかはわからない。皆さんそれぞれに苦労されていることだろうな。