ハートロッカー
*存分にネタバレしてますご注意*
《イラクには兵隊用語で、爆発を例えて、「"ハートロッカー(行きたくない場所/棺桶)"にお前を送り込む」という言い方がある。》パンフレットより。
何度見ても緊張する。
いつの間にか主人公に惹かれるから一層、ドキドキして見る羽目になる。
なんかドキュメントっぽい。
しかも前に観た他のイラク戦争の映画よりか、土地の様子がリアルに感じられる。
それで、何処で撮られたものかを確認すると、ヨルダンだった。
パンフレットによるとヨルダンには、イラク人も多くおり(実際その他シリアやパレスチナの難民もいる)、中には俳優もいて、映画に参加したそうだ。
映像ではカメラがよくブレる。わざとだろう。
有難い事に酔わない。
主人公は何度もイラクにやってくる。
イラク戦争、爆発処理が任務の米軍兵士が主役。
800個以上の爆発処理を行ってきた。
873個!
それだけ死と直面してきたわけだ。
主人公に惹かれるのは、謙虚だからだと思う。地元の人の心を理解しようと努めているように、それとも、平和を心の底から願っているのかも、と、所々で感じられる。
これでまた不満分子が増えた、と呟く時、子供とサッカーをして遊ぶとき、知り合いの子の行方を探すとき。
この、爆発処理の仕事を、淡々とこなしていく姿が続く。
時には、砂漠で撃ち合いになることも。
2004年のイラク。
主人公は、車に隠された爆弾の処理に当たることもあったのだが、その爆弾が積まれた車が燃えているのを消火器で消し止め、車中に入って仕事を行う。
こちらは、もう見ているものが信じられなくなる。燃えている車ーそれも爆弾が積まれた!ー に近づくのも恐ろしいだろうに。
路肩に埋められた爆弾があちこちで炸裂したりするようになってしまったイラクでは、爆弾が埋められた場所に白い旗が立てられていたと言うのを前に本で見たことがある。
主人公は、帰国し、自分の幼い子供と妻と再会する。
そしてまたイラクへ帰る。
彼は奥さんに言う。
イラクでは、子供たちに飴を配り、子供が集まってきたら爆破するような事がある、だから行かないと。っていうような事を。
なので彼は、イラクへ何度でも戻ってくるのだ。
どうせ死ぬなら気持ちよく死にたい、なんて言って、処理に当たる。
幾つも繋がった爆弾が、土から現れる。
携帯で遠隔操作を行っている者が近くに居るかもわからない。
爆弾は厄介過ぎる。
子供たちが走り回るかもしれないのに。
あたしはとても不安になる。
その中を、主人公が次々、爆弾処理をしていく。
彼と、爆弾との闘いがずっと続く。
最初に爆弾処理に当たった人は爆風で殺された。防護服は完璧に守るものではないしとても重たそうだ。
ちょっとの爆風で、少し離れた所にいても、背中を向けて逃げる間、背中は熱風で火傷するのだと、何かでみた。
とにかく、爆風で飛んだ何かの破片とかで、殺されたり、失明したりするというのは、よく知られている。
だからピンポイントで空爆しようと、巻き添えになる人達が多く居るだろうなと思う。余計に人の恨みを買うだけなのではと思うことがある。
映画では、25mだったかな?以内は、死の領域だと言ってた。
これについて、パンフレットでは、
《爆弾の破片は、毎秒およそ820メートルの早さで飛ぶ。爆発の中心地から膨張して出てくる加圧ガスの衝撃波には殺戮能力があり、時速21,000キロの速さ、1平方センチ辺り、110トンもの力で飛び出す》パンフレットより。
となる。
数字に弱い私には何が何やら?だが。
彼が爆弾の処理にあたることで、死なずに死んだのは米軍兵士だけではないはずだ。
最後に出てきた人は助けられなかった。それをわかって主人公は相手の目を見つめて謝罪した。
米軍が嫌われる理由があった面も存在し、米軍を攻撃する人達がいたのは事実で、反米でなかった人までそうなっていってしまった面もある。テロはずっと起き続け、たくさんの兵士やイラク人、そこにいた人や、ジャーナリストが殺されたりした。
けれど、この主人公が救ったのは米軍だけじゃないだろう。
こんな現場は決して増えないほうが良いのだけど。
爆弾の処理にあたって、もしくは爆発によって殺された人は恐ろしいほど居ると思う。そうした事が伝えているのは、なんだろうか。
戦えば戦うだけ無意味な負の連鎖を起こしている可能性がある。
このイラク戦争に日本人のあたしも、無関心で居てはならない。
主人公はまた戦場へ。今度も帰って来れるのかは誰にもわからない。