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鼓曲萬来

天鼓参 一目蓮

 

今は桑名の北方、多度神宮に別宮として

一目蓮(いちもくれん)神社という名の神社が有りますが、

此処に祀られている対の神を称して一目蓮と呼ばれています




基はといえば、これは風と雷の神で、

普段の時は、仲良く四季の折々、季節の優美さを国中に施して、

多くの民に尊重され、

五穀豊穣豊作祈願と畑を潤し

雷神風神として錦絵にも描かれる程有名な神様でございます.....が



しかし、ただ一つの欠点といえば、

時々その仲が極端に悪くなる事が有るという事なのです

もともと似たもの同士だから、、

霊力能力、遂には互いの風貌等にも及ぶ事も...度々

 

写真の姿はいかにも自然を支配する勇猛な神様って感じではありますが

どうも、何故、雷神風神と呼ばれずに一目蓮等という名で呼称されるのか

その由来を知ると、

案外此の両神が又違った感じで伝わってくるのも不思議ですが

その由来をば

 

さて或年の神無月、

此の両神、天界の慣例に倣い、高天原に向かうのですが

(この頃日本の神々は年に一度、高天原に参集するのが慣わしでありまして)

その旅先、熱田神宮附近にて口論になってしまいました。



怒る雷神、雷太鼓打ならし、唸る風神、風袋(ふうきん)疾風巻き起こせば、

たちまち熱田神宮の上空俄にかき曇り、

落雷豪雨、暴風竜巻き、下々の者なす述もなく

辺りの民家、悉く木っ端微塵となってしまいます

 

それを見ていた他の神々は「これは被害が大きくなる前に」と

弁才天女に、『鼓で神楽を演奏し両神の争い速やかに諌めて、

持って人々の和楽の範とさせよ』との命を頼んだ訳です



もともと楽好きの両神ですから、鼓の調に一時心和ませ、

天女の酌で酒汲み交わすのですが、

本意の和とは到底懸け離れた醜態は変わりません



そこで遂に弁才天女、最後の手段として一計を案ずる事になりました

それは酔いつぶれる件の神にその夢の中に一景を映そうという事で

一景とは何かというと、

 

流石に年一度の高天原詣

全員必詣の神無月と言えども

一神だけはその慣例を免れ許される神様がいるのですわ

 

その神様とは、商売繁昌、年中無休の恵比須様なんですね...

昔も今も流石に商売休み無しという事ですか、

ある意味仕事人の悲哀と申しましょうか

 

さて夢中にて恵比須様、留守の両神の社に入り込み

「あのような乱暴で仲の悪い雷神風神に被害はあり得ど利益等到底有り得し、

これよりは輩を祀りて商売繁昌の糧となすべし...」と宣えば、

集う民衆拍手喝采、早速社殿、恵比須殿へと模様変えし始めるといった具合です。

 

さあ夢から醒めた両神、自分達の社殿が恵比寿殿に様変わりする様に

これは一大事と

慌てふためいて社に戻るのですが

気が付けば熱田神宮に太鼓、風袋、虎紋全て置き忘れ、

失笑の八百萬の神々にこう言われてしまいました。



「あの両神の態を見よろうか、風神雷神とは名が過ぎようぞ、

持って此れより両神合わせて一目散(いちもくさん)と名付けたりや」 


件の両神、この徒名はさすがに応えたようで、多いに恥じ入り、

以後和合に勤め、せめてその呼び名を一目蓮へ高めようと誓いあったそうです..。

 

まあ、あの錦絵、

どうみても「あちゃ~!、大変な事になった」と

慌てふためいて、社殿に一目散に戻る姿とはどなたも思わないでしょうけれど

由来を知りますと、何かユーモラスで、隙だらけの神様が可愛く見えてまいりますな。 


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