ロートル技術屋の日記

テレコンビノの製作

少し前、某掲示板でガリレオ式双眼鏡が話題になりました。
ガリレオ式望遠鏡(2つ並べれば双眼鏡)は対物レンズが凸レンズ、接眼レンズが凹レンズの構成で、見たままの正立像になるので低倍率のオペラグラスなどに使われています。
最初に発明したのはガリレオ・ガリレイではなかったようですが、望遠鏡が発明されたという話を聞いて独自に考えだしたとWikipediaに記載がありました。
ガリレオ式望遠鏡は正立像になる点が良いのですが倍率を上げていくと視野が狭くなるという欠点がありました。
接眼レンズを凸レンズにしたケプラー式望遠鏡は倒立像になるものの倍率を上げた方が視野が広くなるという特性があるため、レンズを使う屈折式天体望遠鏡はほとんどがケプラー式になりました。
また、視野を広くできることからポロプリズムやダハプリズムを使って正立像にする現在の双眼鏡の形になりました。
ポロプリズムを使うことで対物レンズの口径よりも接眼レンズの目幅を狭くすることが出来るので大口径高倍率の双眼鏡を作れるという事もケプラー式+ポロプリズムの双眼鏡が普及した一因と思います。
現在では2~3倍のオペラグラスや小さな子供向けのおもちゃの双眼鏡にガリレオ式の物があります。
このようにガリレオ式は視野(見える範囲)が狭いので天体観望には適さないと考えられていました。

この考え方を一変させたのが1994年に笠井トレーディングから発売されたワイドビノ28です。
アストロアーツの過去の記事によると倍率2.3倍、実視界28度で、肉眼で見た場合の約1.8等明るく見える計算になるそうです。
低倍率なので星座を一望でき、肉眼よりも暗い星まで見られるということで一時期ブームになりました。

2008年頃、ケンコーがビデオカメラ用の2×テレコン(テレコンバーター、テレコンバージョンレンズ)を投げ売りしたことがあり、このテレコンを使って双眼鏡を作ることが一部の人の間で流行っていたそうです。
コンデジ(コンパクトデジカメ)に高倍率ズームレンズどフルハイビジョン動画の撮影機能が搭載され、ミラーレス一眼カメラでも動画撮影できるようになり、ビデオカメラの需要が減ったのがテレコンが売れなくなった原因と思います。
少し後ですが我が家でも光学20倍ズームレンズを搭載したソニーのコンデジDSC-HX30Vを購入しました。
動画を撮影しながら静止画も記録できたのでとても便利でした。

テレコンで双眼鏡を作るアイデアはかなり昔からあったそうですが、2,000円ほどで作れるとなれば皆さんやって見たくなりますね。
私はこのブームを知りませんでした。
当時、色々なテレコンが試され、ニコンのTC−E2が最も性能が良いと評判になり、探す人が増え中古価格が高騰したそうです。

冒頭の某掲示板でこのテレコンビノの話も出ていたので作って見たくなりました。
実はスターベース東京に行った際にスーパーワイドビノ36(税込み24,200円)を覗かせてもらってその見え方が良かったので欲しくなっていました。
ニコンTC−E2を使ったテレコンビノはスーパーワイドビノ36と同等かTC−E2の方が良いという話を見つけたので、どうせ作るならTC−E2が良いと思い探しました。
メルカリやヤフーオークションでは5,000〜15,000円などの高額で出品されているものがありました。
ダメ元で近隣のリサイクルショップを回ったら運良く2つの店に1個ずつ置いてありそれぞれ2,200円で購入できました。
手元には昔購入したテレコンが4種類ほどあり、TC−E2と見比べたら性能の差は歴然としていました。
まず、色収差が良く補正されていました。
他のテレコンは中心部は良い物の周辺部に行くにしたがって虹色が目立っているのに対しTC-E2は周辺部でも色づきをほとんど感じません。
もう一つ、歪曲収差も良く補正されていました。
1眼レフ用カメラレンズの広角レンズで写真を撮ると正方形の物が角が引き伸ばされた糸巻型になります。(糸巻がわかる人はどのくらいいるのだろうか)
TC-E2でも糸巻型の歪曲収差がありますが、他のテレコンに比べたらはるかに小さく抑えられていました。
TC-E2の評判が良い理由が良くわかりました。

2つのテレコンバージョンレンズを並べるプレートを3Dプリンターで作り固定してテレコンビノが完成しました。


4,400円で24,200円のスーパーワイドビノ36と同等の物が作れました。

TC−E2テレコンビノには難点があります。
1つはTC-E2の外径が65mmあり、密着させてもレンズ間隔が65mmになってしまうことです。
私の目幅は62~63mmなので少し広いことになります。
覗いてみた感じでは大きな問題にはなっていないようです。
もう一つは固定焦点になっていることです。
双眼鏡についている焦点調整機構も視度調整機構も無いので近視や左右の視力が違っていると問題がありそうです。
除く位置によって性能が大きく変化することも問題です。
きちんと中心をまっすぐ覗けばよいのですが、横にずれたり斜めになったりすると途端に像質が悪くなってしまいます。
ただ、倍率が2倍なので天体望遠鏡ほどは問題にならなさそうです。
最後は重いことです。
大口径のガラスの塊なので結構重いです。

スーパーワイドビノ36には目幅調整、視度調整どちらも可能なのでさすがに専用設計品は違いますね。
スーパーワイドビノ36はアマゾンでも販売されており、レビューには特に悪い話はなさそうです。
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天候が悪く晴れていても薄雲が出ていてまだまともに星を見ることはできていません。
田舎に行くときに持って行って実力を確かめて来ようと思っています。

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