帰国から2週間余り、遅ればせながら、ツアー報告開始です。
たくさんあります!今日から、以下4章。順次アップします。
第1章「ポルトガルへ~光あふれる場所」
第2章「ロウレー公演~楽天と熱狂と」
第3章「舞踏ワークショップ~ポルトガルの人々」
第4章「ファロ公演~地の果てにあった懐かしさ」
さて・・・。
第1章「ポルトガルへ:光あふれる場所」
【東京:11月4日】
あ~、みんな、歩調がそろっているな~。服も、表情もちがうのに、なぜか整然とした風景。街全体のテンポが、なんだか速い。ついていけるかな・・・。
原宿、酒席から街をながめ、ふと思いました。帰国2週目のある夜でした。
9月下旬からの3週間、僕はポルトガル南部のアルガルヴェ地方、つまりヨーロッパの最西部に滞在していました。
たくさん歩きました。ファロ、ロウレー、タヴィラ、フセタ、リスボン・・・。どこも光が美しかった。
いえ、遊んでたわけじゃありません。ステージで、スタジオで、踊り、教え、とまどい、笑い、怒って、抱き合って、などしているうちに・・・。なんだか、あの国のテンポや温度・湿度まで、この体が吸い込んでしまったみたいです。心のテンポが直りません。困っています。
さて、続きを・・・。
【フェスティバル】
今回の公演旅行は、2005年に初演した「TABULA RASA」という作品が”a sul"-10th International Contemporary Dance Festivalに招待され、国際交流基金の助成によって実現したもので、目的は、2都市での公演とワークショップでした。
今回で10回目となる、このFestivalは毎回どこかの国や地域に的を絞ってポルトガル国内にダンスの新しい風を吹かせようという趣向。で、今年は、日本特集!開催地は本拠地Faro、南部観光都市数カ所に首都Lisbonを含めた広範囲に及びます。
非常に重要な事に、今回のアーチストは、日本側の組織や批評家などなどを通さずにディレクター(Julietaさん、Joseさん)が、直接来日して、自分の足と眼で選ばれました。
現地で初めて聞いたのですが、今回彼らとしては、特定の機関からの推薦を通さずに、自分たちの眼で選んだものを上演したかった、とのこと。
ディレクターシステムを採用する芸術フェスティバルとしては、正攻法・手作り・ネームバリューよりも個性と関わりたい?ということでしょうか。とにかく、アーチスト側としては、参加背景明快です。
東京での紆余曲折を経て、ツアー決定。招聘9カンパニーのうち、僕らCROSS-SECTIONに割り当てられたのは、ヨーロッパでは人気の観光地「ロウレー」という、ちょっと可愛い古都の市立劇場「Cine Teatro Loulentano」と南部の中心都市「ファロ」の事務局直営劇場「CAPa:アルガルヴェ・パフォーミング・アーツ・センター」での2公演、さらに1週間にわたる舞踏ワークショップの実行なのでした。
参加メンバーは、プロデュース&デザインの櫻井恵美子、作曲&演奏の田ノ岡三郎、振付&ダンサーの櫻井郁也(僕)の3人に加え、サポートとして在欧の小南ゆう子、計4名。あとは全て現地スタッフとの共同作業で行うことに。そして、いよいよ出発・・・。
【リスボン~ファロ:9月25日】
はじめてポルトガルの土を踏む・・・、というよりは「光を浴びる」感じ!!
空港の雑踏をくぐり抜けると、ドバーッと太陽光の直撃です。
待ち受けてくれていたのは、事務局のルイーザさん。「SAKURAI IKUYA/CROSS-SECTION」と書いた大きな紙を懐に入れ、フレンドリーなおしゃべりと古い友達のような笑顔。そして、タクシーへ。
だけど・・・。荷物が多いため、タクシーは分乗。ルイーザと恵美子の乗った先頭の車は、あっという間に発車。後発の僕と作曲の田の岡氏は行き先も知らされぬままです。
「追っかけて!」猛烈なジグザグ運転そして割り込み。大丈夫かな・・・。
車窓からは、やはり、まぶしい太陽。やっと信号待ち、運転手さん車から降りて道を走る。ルイーザの乗る車に話しかけています。大丈夫かも・・・。
クラクション。また走る。あっ、グルベンキアン美術館だ、アレっ、ガイドブックで見た広場だ、寄りたいな~。でも、次々と通過。そして、高速バスの乗り場で無事再会。
すると、「バス、乗り過ごしちゃったみたい!フ~。お茶でも飲みましょっか。2時間くらい!(ニコニコ)」ですって・・・。沈黙。でも、やはり太陽はまぶしい。さらっとした空気で背中が軽い。いい天気。まっ、いいか。楽しもう!?
この感じって、ポルトガルのノリだったんです。でも、なぜかうれしかった。ス~っと力が抜けちゃうような気楽さと出たとこ勝負の感じが、万事キッチリさせねば、という僕らニッポンの舞台人には・・・。
「Festivalは、いい感じよ。日本のダンス、がんばってるわ。あっ、何か食べ物買っとかなきゃ。あなたたちの行き先は、ここから4時間ね。Faroで降りたら、私たちのスタッフが待ってるわ。いい所よ~!」「オブリガート!」
あっというまの2時間。最初のティータイムで感じたのは、かざらない気風。さりげない会話の心地よさを後に、僕らは、滞在地アルガルヴェ地方Faro市に向かいました。そこはポルトガル最南部、ヨーロッパの果てです。
さて、バスは走ります。
乾いた土地、オリーブの林。白い家、だんだん増える白い家々。
アズレージョ(ポルトガル特有の美しいタイル細工)で埋め尽くされた建物。
ますます強くなる陽光。いつしか南の香りが。
ふと見ると、でっかい看板。日本語で「コンテンポラリーダンス」って、書いてあります。あっ、コレに参加するんだ。着いたのかな。そう、そこがFaro。アルガルヴェの首都、この旅での僕らの拠点なのでした。
「ハァ~イ!」向こうから、近づいてきた笑顔は、制作のアナさん。そのそばには、アシスタントをしてくれる小南ゆう子さん。元クラスメンバーで今はヨーロッパで活躍中。長いおつきあいですが、久々の再会。
東京から結局30時間。長旅に疲れきった我々3人の顔にもパッと笑顔が戻りました。握手をして、抱き合って、プロジェクトは始まりました。
ゆったりとした時間の流れ、いつも歓声とため息が入り乱れている街角、気まぐれ、美しい花、海、野良犬、ゆるやかな混沌、太陽・・・。光があふれている。そんな場所でした。
これから3週間、ここを拠点に僕らは仕事をするのです。(つづく)
PS: 僕らの旅行記、作曲家の田ノ岡三郎さんのサイトでも掲載中。こちらも楽しいのでぜひ!
田ノ岡三郎:日常茶飯事
たくさんあります!今日から、以下4章。順次アップします。
第1章「ポルトガルへ~光あふれる場所」
第2章「ロウレー公演~楽天と熱狂と」
第3章「舞踏ワークショップ~ポルトガルの人々」
第4章「ファロ公演~地の果てにあった懐かしさ」
さて・・・。
第1章「ポルトガルへ:光あふれる場所」
【東京:11月4日】
あ~、みんな、歩調がそろっているな~。服も、表情もちがうのに、なぜか整然とした風景。街全体のテンポが、なんだか速い。ついていけるかな・・・。
原宿、酒席から街をながめ、ふと思いました。帰国2週目のある夜でした。
9月下旬からの3週間、僕はポルトガル南部のアルガルヴェ地方、つまりヨーロッパの最西部に滞在していました。
たくさん歩きました。ファロ、ロウレー、タヴィラ、フセタ、リスボン・・・。どこも光が美しかった。
いえ、遊んでたわけじゃありません。ステージで、スタジオで、踊り、教え、とまどい、笑い、怒って、抱き合って、などしているうちに・・・。なんだか、あの国のテンポや温度・湿度まで、この体が吸い込んでしまったみたいです。心のテンポが直りません。困っています。
さて、続きを・・・。
【フェスティバル】
今回の公演旅行は、2005年に初演した「TABULA RASA」という作品が”a sul"-10th International Contemporary Dance Festivalに招待され、国際交流基金の助成によって実現したもので、目的は、2都市での公演とワークショップでした。
今回で10回目となる、このFestivalは毎回どこかの国や地域に的を絞ってポルトガル国内にダンスの新しい風を吹かせようという趣向。で、今年は、日本特集!開催地は本拠地Faro、南部観光都市数カ所に首都Lisbonを含めた広範囲に及びます。
非常に重要な事に、今回のアーチストは、日本側の組織や批評家などなどを通さずにディレクター(Julietaさん、Joseさん)が、直接来日して、自分の足と眼で選ばれました。
現地で初めて聞いたのですが、今回彼らとしては、特定の機関からの推薦を通さずに、自分たちの眼で選んだものを上演したかった、とのこと。
ディレクターシステムを採用する芸術フェスティバルとしては、正攻法・手作り・ネームバリューよりも個性と関わりたい?ということでしょうか。とにかく、アーチスト側としては、参加背景明快です。
東京での紆余曲折を経て、ツアー決定。招聘9カンパニーのうち、僕らCROSS-SECTIONに割り当てられたのは、ヨーロッパでは人気の観光地「ロウレー」という、ちょっと可愛い古都の市立劇場「Cine Teatro Loulentano」と南部の中心都市「ファロ」の事務局直営劇場「CAPa:アルガルヴェ・パフォーミング・アーツ・センター」での2公演、さらに1週間にわたる舞踏ワークショップの実行なのでした。
参加メンバーは、プロデュース&デザインの櫻井恵美子、作曲&演奏の田ノ岡三郎、振付&ダンサーの櫻井郁也(僕)の3人に加え、サポートとして在欧の小南ゆう子、計4名。あとは全て現地スタッフとの共同作業で行うことに。そして、いよいよ出発・・・。
【リスボン~ファロ:9月25日】
はじめてポルトガルの土を踏む・・・、というよりは「光を浴びる」感じ!!
空港の雑踏をくぐり抜けると、ドバーッと太陽光の直撃です。
待ち受けてくれていたのは、事務局のルイーザさん。「SAKURAI IKUYA/CROSS-SECTION」と書いた大きな紙を懐に入れ、フレンドリーなおしゃべりと古い友達のような笑顔。そして、タクシーへ。
だけど・・・。荷物が多いため、タクシーは分乗。ルイーザと恵美子の乗った先頭の車は、あっという間に発車。後発の僕と作曲の田の岡氏は行き先も知らされぬままです。
「追っかけて!」猛烈なジグザグ運転そして割り込み。大丈夫かな・・・。
車窓からは、やはり、まぶしい太陽。やっと信号待ち、運転手さん車から降りて道を走る。ルイーザの乗る車に話しかけています。大丈夫かも・・・。
クラクション。また走る。あっ、グルベンキアン美術館だ、アレっ、ガイドブックで見た広場だ、寄りたいな~。でも、次々と通過。そして、高速バスの乗り場で無事再会。
すると、「バス、乗り過ごしちゃったみたい!フ~。お茶でも飲みましょっか。2時間くらい!(ニコニコ)」ですって・・・。沈黙。でも、やはり太陽はまぶしい。さらっとした空気で背中が軽い。いい天気。まっ、いいか。楽しもう!?
この感じって、ポルトガルのノリだったんです。でも、なぜかうれしかった。ス~っと力が抜けちゃうような気楽さと出たとこ勝負の感じが、万事キッチリさせねば、という僕らニッポンの舞台人には・・・。
「Festivalは、いい感じよ。日本のダンス、がんばってるわ。あっ、何か食べ物買っとかなきゃ。あなたたちの行き先は、ここから4時間ね。Faroで降りたら、私たちのスタッフが待ってるわ。いい所よ~!」「オブリガート!」
あっというまの2時間。最初のティータイムで感じたのは、かざらない気風。さりげない会話の心地よさを後に、僕らは、滞在地アルガルヴェ地方Faro市に向かいました。そこはポルトガル最南部、ヨーロッパの果てです。
さて、バスは走ります。
乾いた土地、オリーブの林。白い家、だんだん増える白い家々。
アズレージョ(ポルトガル特有の美しいタイル細工)で埋め尽くされた建物。
ますます強くなる陽光。いつしか南の香りが。
ふと見ると、でっかい看板。日本語で「コンテンポラリーダンス」って、書いてあります。あっ、コレに参加するんだ。着いたのかな。そう、そこがFaro。アルガルヴェの首都、この旅での僕らの拠点なのでした。
「ハァ~イ!」向こうから、近づいてきた笑顔は、制作のアナさん。そのそばには、アシスタントをしてくれる小南ゆう子さん。元クラスメンバーで今はヨーロッパで活躍中。長いおつきあいですが、久々の再会。
東京から結局30時間。長旅に疲れきった我々3人の顔にもパッと笑顔が戻りました。握手をして、抱き合って、プロジェクトは始まりました。
ゆったりとした時間の流れ、いつも歓声とため息が入り乱れている街角、気まぐれ、美しい花、海、野良犬、ゆるやかな混沌、太陽・・・。光があふれている。そんな場所でした。
これから3週間、ここを拠点に僕らは仕事をするのです。(つづく)
PS: 僕らの旅行記、作曲家の田ノ岡三郎さんのサイトでも掲載中。こちらも楽しいのでぜひ!
田ノ岡三郎:日常茶飯事