一病息災〜心房細動とその周辺

心房細動の治療は日進月歩。目に留まった記事の備忘録です。
他に、生活習慣病や自分に関係ありそうな健康問題も。

視力と認知症

2019年10月06日 13時36分37秒 | 加齢現象
 認知症を扱うテレビ番組で、「聴力が落ちると認知症のリスクが上がる」と解説していました。
 そのカラクリは、

・聴力が低下すると、脳の聴覚野への刺激が減り、その部位が脳萎縮をきたす。
・脳萎縮は認知症の陸スとなる。

 というものでした。

 では視力はどうなんだろう?
 と素朴な疑問を持ちました。

 それに関する記事を見つけました。
 思った通り、視力低下は認知症の発症リスクが2〜3倍上昇する、とありますね。

シニアに必要な視力の健康
ケアネット:2019/10/01
視力が弱ると認知症も増える
 講演では飯田 知弘氏(東京女子医科大学医学部眼科 教授)を講師に迎え、「人生100年時代を生き抜くための『眼の健康』」をテーマに、高齢化に伴う眼の疾患について説明した。
 これからの人生は100年時代であり、政府も「いくつになっても学び直しができ、新しいことにチャレンジできる社会」を目指し、シニアのさまざまなチャレンジを後押ししていると説明し、そのためには「健康」であることが重要と述べた。
 健康を保つポイントとして、健康寿命と平均寿命には差がある(男性9.13年、女性12.68年)ことを示し、この差を短くすることが重要と指摘した。また、シニアにとって認知症は大きな問題である。世界保健機関(WHO)が策定した「認知症予防指針」によれば、「有酸素運動」「多量の飲酒を避ける」「血圧を維持」「血糖コントロール」「体重を一定に保つ」「適度な休息」など12項目があり、わが国も認知症施策推進大綱を発表し、本格的に取り組みを開始したことを説明した。同じく、認知症の発症関連リスクとして「難聴」「高血圧」「肥満」「喫煙」「うつ」など9つの因子があり、これらの抑制ができれば発症を35%抑制できると語った1)。
 一方で、視力と認知症の関係について研究した藤原京スタディにも触れ、加齢とともに視力不良と認知症が増加し、視力不良の患者では認知症の発症割合が約2~3倍高いことを指摘した2)。
シニアは気を付けたい白内障、緑内障、加齢黄斑変性
 次に眼の働き、仕組みについて触れ、わが国の視覚障害の原因疾患は、緑内障(28.6%)、網膜性色素変性(14.0%)、糖尿病網膜症(12.8%)、黄斑変性(8.0%)、 脈絡網膜萎縮(4.9%)の順で多く、その中でもシニアの視力障害では、「白内障、緑内障、加齢黄斑変性」の3つが挙げられると同氏は指摘した。
 「白内障」は、水晶体が濁ることで起きる視力障害で60歳を過ぎると80%以上、80歳を過ぎると100%で症状が認められる。主な自覚症状として、かすみ目、明るいところで見えにくい、ピントや眼鏡が合わない、2重3重に見えるなどがある。
 「緑内障」は、眼圧が高くなり、視神経が障害される疾患。主な自覚症状として、視野が狭くなったり、部分的に見えなくなったりする。正常眼圧でも起こるケースもあり、日本人に多いという。自覚症状に乏しく、気付きにくいため、定期的な眼科受診が勧められる。
 「加齢黄斑変性」は、50歳以上で、加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が起こる疾患。欧米では成人の失明原因の1位となっている。主な自覚症状として、視野の中心部が歪む変視症や視野の中心部が黒くなる中心暗点がある。
 これらの疾患の治療では、手術が必要となるが、白内障手術により視力が回復することで、認知機能の改善が認められた報告3) もあり、健康の維持には、視力の維持も重要であると指摘した。
 同氏は、まとめとして100歳まで健康な視力を維持するために、「病気のことをよく知る」「定期的に眼科受診」「早期発見、早期治療が大切」と3項目を示し、「『人生100年時代』生き生きとした生活を送るためには眼の健康が大切」と強調し、講演を終えた。

■文献
1) Livingston G, et al. Lancet. 2017;390:2673-2734.
2) Mine M, et al. Biores Open Access. 2016;5:228-234.
3) Ishii K, et al. Am J Ophthalmol. 2008;146:404-409.


「他人事ではない高血圧」(伊藤 貞嘉Dr.:東北大学教授)

2018年12月20日 07時47分42秒 | 高血圧
 NHKラジオ第一の早朝番組「健康ライフ」から。
 解説は東北大学教授の伊藤 貞嘉(さだよし)Dr.。

 高血圧は不整脈の大きなリスクであり、無視できません。
 心房細動の抗凝固療法の適応にも高血圧の項目があります。
 この放送、基本的な内容が解説されているので、参考になりました。

 現在は医療機関で測定する血圧よりも家庭での血圧の方が重視されているのですね。
 ただし、高血圧基準

(医療機関で測定)140/90mmHg以上
(家庭で測定)135/85mmHg以上


 と5mmHg異なるそうです。

 薬物療法以前に自分でできることは、とにもかくにも「塩分制限」。
 日本人は昔より塩分摂取量が減ったと言われますが、それでも10-11g/日と、WHO推奨の塩分摂取量である5g/日未満の2倍です。
 日本の塩分摂取推奨量は、男性8g/日未満、女性は7g/日未満に設定されており、厚労省も腰が引けている印象が否めません。

 私はゆるやかなロカボ生活(炭水化物制限)をしており、ご飯を食べない日々が3年間続いています。
 そこでしみじみ感じるのは、日本のおかずはご飯が進むようにしょっぱい!
 おかずだけでは食べられないほどしょっぱい!

 他のブログでも書きましたが、米食を基本とする日本人の食生活は、
1.炭水化物(=分解されればブドウ糖)でインスリンを浪費し糖尿病につながる
2.塩分の多いおかずになりがちで高血圧につながる

 という国民病を抱える事態になってしまったのですね。
 
 しかし近年、肉食(赤肉、加工肉)も癌発生リスクを上昇させると言われはじめています。
 健康長寿にはどんな食生活がベストなのでしょう?


□ 「血圧が高いと身体にどう悪影響?」(2018.12.3放送)
・現在、日本人の4300万人が高血圧。60歳代では男女ともに6割、70歳代では男性の8割、女性の7割が高血圧。
・高血圧基準:140/90mmHg以上(医療機関で測定)
 理想は120mmHg、その間のグレーゾーンは生活習慣をあらためる対象。
・高血圧は脳卒中、心不全、腎不全につながる。この3つの臓器中では太い血管から細い血管が直接枝分かれするため影響が大きい。動物は命が危険にさらされる低血圧から体を守るためにこの様なシステムを作った。命を守るためのシステムが、逆に命を危険にさらすシステムになってしまったというジレンマ。高血圧や肥満で命を落とすことは、進化の視点からは想定外なのである。ちなみに、人間以外には高血圧は存在しない(塩分の過剰摂取がないため)。大切な臓器を守るために血圧を正常に保つ必要がある。
・140mmHg以上の疾患リスク:脳卒中3倍、末期腎不全:8倍(男性)、2倍(女性)
・上下の血圧の見方;
 上の血圧が高く下はそうでもない → 加齢の影響
 下の血圧だけが高い:何かしら原因がある?

□ 「本当の血圧とは?」(2018.12.4放送)
・診察室血圧 → 家庭血圧が基準として使われるようになった。
・診察室血圧は、家庭血圧より5mmHg高い。
・家庭血圧(朝排尿後、夜安静時)の高血圧基準:135/85mmHg以上。
・測定方法:椅子に座って測る(正座では高くなる、臥位もよくない?)、1-2分安静にして落ち着いてから測る。腕に巻く血圧計がベター(カフを心臓の高さに設定)。
・診察室血圧と家庭血圧が大きく異なるとき;
 診察室血圧>家庭血圧 → 白衣高血圧:すぐに治療は必要ないが、将来高血圧になる可能性大。
 診察圧血圧<家庭血圧 → 仮面高血圧:睡眠中、朝の血圧が高いことが多い・・・腎臓が悪い/糖尿病がある場合や高血圧の薬を飲んでいる場合など。

□ 「加工食品の塩分には要注意」(2018.12.5放送)
・すべての生物(ミミズでもカエルでもヒトでも)の血液の塩分濃度は0.9%。0.9%が0.8%になっても1.0%になっても死んでしまう。塩分を多く摂ると血液を薄めるためにのどが渇いて水分を摂り薄めていろいろなホルモンが働き腎臓から排泄する。
・血液量が増えすぎると心不全になるが、それを防ぐために働くのが腎臓。
・腎臓が処理できない塩分が入ると、血圧を上げて排泄しようとするため、高血圧につながる。
・必要塩分量は2-3g/日。母乳栄養の赤ちゃんを考えてみよう。
・現在の日本人平均は10-11g/日。
・厚労省推奨塩分摂取量は、男性8g/日、女性7g/日未満(WHOは5g/日未満)。
・塩分の減らし方:出汁を取ってうまみ成分をたくさん含むと塩分濃度が低くてもそれを感じない。
・しかし塩分摂取の60%は加工食品からである。
・インスタントラーメンには塩分が5gも入っている!
・成分表示のまやかし:Na×2.5倍 → 食塩量。
・イギリスが2006年に加工食品の塩分を国民にわからないように少しずつ減量(10年間に20-40%)したら、高血圧が減り、脳卒中・心臓病による死亡が40%減少した。

□ 「薬で血圧を下げるのは通過点」(2018.12.6放送)
・血圧を下げる目的は、脳卒中・心不全・腎不全を防ぐこと。
・薬物療法以前に、生活習慣を見直すことが必要、それでも下がらなかったら薬物療法を考える。
・現在の日本では高血圧患者は4300万人、治療を受けているのは2000万人、しかし140mmHg以下にコントロールされているのは1000万人強にとどまる。
・高血圧薬は一生飲み続けることが基本、減量は可能であるが中止は難しい。
・中断の理由:副作用出現、効きが悪かった、など。
・高血圧薬は大きく4種類に分類される:Ca拮抗薬、ACE阻害薬、ARB、利尿薬。

□ 「高血圧にまつわるエトセトラ」(2018.12.7放送)
・血圧の左右差がある場合 → 10-15mmHg以上差があるときは血管に問題がある(ふつう右>左)。
・上の血圧と下の血圧の差が大きい場合 → ふつう40-50mmHgの範囲、60mmHg以上では動脈硬化が進んでいると考える。
・若い頃からの高血圧には二つのパターン;
① 遺伝性(本態性高血圧)
② 二次性高血圧。全体の1-2割。腎臓の血管が細くなったり、ホルモン異常があったり。ふつうの薬が効きにくい。同じ高血圧の数字でも合併症のリスクが高くなる。
・高血圧は自覚症状がないため「沈黙の殺人者」と呼ばれる。

長時間労働は心房細動発症の危険因子

2017年11月01日 18時49分34秒 | 心房細動
 交感神経緊張状態が続くと、自律神経系が破綻をきたす・・・まあ、当たり前と言えば当たり前。

■ 長時間労働は心房細動発症の危険因子〜週55時間以上でリスクは4割増
2017/11/1 難波寛子=医師:日経メディカル
 労働時間が週40時間以内の人と比較して、週に55時間以上労働する人は心房細動(AF)発症リスクが4割増しとなることが、欧州におけるメタ解析により明らかになった――。11月は厚生労働省が定める「過労死等防止啓発月間」である。長時間労働している患者のリスク管理に役立つとともに、医師自身の労働時間を顧みる契機となる論文をEur Heart J誌9月17日号より紹介する。
 本研究の対象はIPD-Work(Individual-Participant-Data Meta-Analysis in Working Populations)コンソーシアムにて行われたコホート研究10試験の参加者。うち2試験は55時間以上の長時間労働者(n=6、n=55)とAF発症数(2試験ともn=0)が極めて少なかったので除外した結果、対象は8試験となった。
 ベースライン時の労働時間は、1991年から2004年までの期間に記録された。週当たりの労働時間を、(1)35時間未満、(2)35~40時間、(3)41~48時間、(4)49~54時間、(5)55時間以上、の5群に分けた。European Union Working Time Directiveは、労働時間を平均で週48時間以内とすることを労働者の権利として保障している。
 対象8試験中1試験(Whitehall II試験)では、ベースラインの1991年と2003年および2008年に心電図によりAFの評価を行っている。一方、残る7試験ではベースラインと経過観察時点での電子カルテなどの病名をもとにAF発症を確認した。
 解析対象となった8万5494人中男性は35%で、ベースライン時の平均年齢は43.4歳(範囲:17-70)だった。平均10.0年の経過観察中にAFを発症したのは1061人で、10年間の累積発症率は12.4/1000だった。AF発症例の71.4%が65歳以前にAFと診断された。
 AF発症例のうち86.7%は観察期間中に他の心血管疾患を生じなかったが、10.2%ではAF発症前に何らかの心血管疾患を発症していた。
 ベースライン時の労働時間が週55時間以上だったのは4484人(5.2%)、フルタイムワーカーの標準的労働時間とされる35-40時間だったのは5万3468人(62.5%)だった。
 長時間労働は、肥満、余暇の運動部不足、喫煙、アルコール多飲といった健康的でない生活習慣と相関していた。Whitehall II試験を対象として更に詳細に検討したところ、長時間労働者ではうつや不安症状が多く、左室肥大が少なかった。
 年齢、性別、社会経済的状況(SES)で調整した解析の結果、標準的労働時間である35-40時間群と比較して55時間以上群のAF発症のハザード比(HR)は1.42(95%信頼区間[95%信頼CI]:1.13-1.80、P=0.0031)だった。試験間の異質性は、確認されなかった(I2=0%、P=0.66)。他の生活習慣(喫煙歴、BMI、身体活動、アルコール摂取量)でさらに調整すると関連はわずかに減弱した(HR:1.41、95%CI:1.10-1.80、P=0.0059)。
 長時間労働とAF発症との関連は、AF診断時に既に発症していた冠動脈疾患の有無により調整した後も(HR:1.41、95%CI:1.12-1.78、P=0.0039)、またベースライン時に心血管疾患を有していた549人(HR:1.41、95%CI:1.11-1.79、P=0.0054)およびベースライン時または経過観察時に心血管疾患を有していた2006人(HR:1.36、95%CI:1.05-1.76、P=0.0180)を除外した解析でも、統計学的に有意であった。
 更に詳しいデータが得られたWhitehall II試験の参加者6649人(うち224人が期間中にAF発症)を対象とし、年齢、性別、社会経済的状況(SES)で調整した解析を行った結果、35-40時間群と比較して55時間以上群のHRは1.41(95%CI:0.93-2.14、P=0.1045)で、8試験すべての参加者を対象とした解析と、ほぼ同様であった。その他の生活様式、感染や全身の炎症、呼吸器疾患、弁膜症やうっ血性心不全等の心疾患、左室肥大、糖尿病、うつや不安症状、収縮期血圧、降圧剤の内服、総コレステロールおよびHDLコレステロールにより更なる調整を行った解析結果も同様だった(HR:1.42、95%CI:0.91-2.23、P=0.12、n=5867、AF発症例:195人)。
 標準的労働時間である35-40時間群と比較して、AFのハザード比は、41-48時間群、49-54時間群、55時間以上群でそれぞれ1.02、1.17、1.42であり、労働時間が長時間になるにつれてAF発症リスクが上昇していた。
 著者らは、AF発症と長時間労働との関連のメカニズム解明のために更なる研究が必要であると指摘した。また、本研究はUK、デンマーク、スウェーデン、フィンランドで行われたものであり、この研究結果が同地域のみに限定されるという理由はないものの、他国への一般化の際には確認が必要であると述べている。

<原著論文>
Kivimaki et al. Long working hours as a risk factor for atrial fibrillation: a multi-cohort study. Eur Heart J. 2017;38: 2621-8.

欧米では中年の4人に1人は心房細動。

2017年10月27日 12時58分54秒 | 心房細動
 スマホアプリが売りの記事ですが、私は欧米での中年成人の心房細動の頻度に驚きました。
 日本では確か50歳で100人に1人だったような・・・。

■ ESCが心房細動管理用スマホアプリを配信
2017年10月13日:メディカル・トリビューン
 欧州心臓病学会(ESC)が心房細動(AF)を管理するためのスマートフォン・タブレット用アプリケーション(以下、アプリ)の配信を開始した。患者の教育、自己管理、共有意思決定の強化を目的とする患者用アプリと、ESCの2016年AF管理ガイドライン(以下、GL)に基づく治療選択の簡素化およびGL遵守の強化を目的とする医療提供者用アプリの2種類がある。いずれもGoogle Play、Amazon、Apple Storeから無料でAndroidおよびiOS機器にダウンロード可能。英・University of BirminghamのDipak Kotecha氏らが、アプリの概要をEuropace(2017年10月10日オンライン版)およびEur Heart J(2017; 38: 2643-2645)に発表した。
患者用アプリ開発にはAF患者も参加
 欧米では中年成人の4人に1人がAFを発症し、発症率および有病率が上昇しつつある。その一方で、欧米では人口の約3分の2がモバイル機器を所有し、コミュニケーションおよびオンライン情報収集の主要な手段として利用している。このような背景から、2014~16年のGL作成作業と並行して、ESCのGL作成委員会、CATCH ME※コンソーシアム、欧州不整脈学会(EHRA)が共同でAFアプリを開発した。
 患者用アプリ「My AF」は、AFの症状や管理方針、実用的なセルフケアのヒント、脳卒中リスクなどに関する情報を提供する。また、患者が症状などを記録する日記機能を搭載し、情報を医療提供者と共有することで対面での診察がスムーズになる可能性がある。
 患者向けの文章や画像の設計・評価にはAF患者および英国心臓基金の代表者も加わり、スマホに不慣れな高齢患者にも配慮したシンプルなインターフェイスが採用された。
医療提供者用アプリは初のCE認証申請
 医療提供者用アプリ「AF Manager」は、GLの推奨事項やフローチャートを閲覧できる他、対話型アルゴリズムにのっとった治療方針の決定が可能。そのため、この種のアプリとしては初めて欧州連合加盟国に製品を流通・販売するための規格であるCEマークの認証を申請中で、現在は承認の最終段階にある(クラスⅡa医療機器)。
 医療提供者は患者が登録した共有情報をAF Managerに読み込み、情報の修正や追加を行うことができる(例えば、心電図や心エコーデータの追加)。また、診察後には決定した治療内容や治療薬の投与量などを入力し、これらの情報を患者と共有することができる。
 My AFとAF Managerは、クラウドサーバー経由でデータを転送・共有する。共有情報は全て暗号化およびパスワードにより保護される。なお、患者はいつでも自身のデータをアクセス禁止に設定することができる。
 また、研究目的でのデータ使用に同意した患者が匿名でデータを提供するという選択肢もある。これにより、さまざまなAF患者の症状、治療パターン、GL遵守状況を幅広く検討できるようになるという。
情報共有による予後改善に期待
 Kotecha氏らは「AFのような慢性疾患では、情報を得て自発的に治療に参加する患者の方が、長期管理が良好である可能性が高く、共有意思決定が予後改善につながる可能性もある。現在、患者教育に関するさまざまな情報が利用できるが、大部分の教材が抗凝固療法のみを扱っており、患者が必要としている情報とは合致していない可能性がある」と指摘。その点で「これらアプリを用いた患者教育には、ユーザーからのフィードバックや将来的なGL改訂を反映して機能やコンテンツを修正・更新できるという大きな強みがある」と述べている。

心房細動の二次イベントリスク

2017年09月18日 07時15分32秒 | 心房細動
 気になる内容の記事を見つけましたのでメモ。

■AFの二次イベントリスクが明らかに〜男性はAMI、女性はISが最も高い
2017年09月06日;メディカル・トリビューン
 スウェーデンにおける初発心房細動(AF)患者約50万例の登録データを基に、発症後10年間の二次性イベントの発症リスクを検討したところ、男性では致死性または非致死性の急性心筋梗塞(AMI)、女性では虚血性脳卒中(IS)の発症リスクが最も高く、これらのリスクは年々増加傾向にあることが明らかとなった。スウェーデン・University of GothenburgのLena Björck氏が欧州心臓病学会(ESC 2017、8月26~30日、バルセロナ)で報告した。
1年後、5年後、10年後の二次性イベント発症率を検討
 AFは全身性塞栓症のリスク因子であり、AMI発症リスクの増加と関係することが知られているが、これらの二次性イベントのうち、いずれの血栓イベントを最初に発症するかは明らかになっていない。そこで、Björck氏らはスウェーデンにおけるAFの大規模患者登録データを用いて、初発AF患者の致死性または非致死性AMI、IS、静脈血栓塞栓症(VTE)の初発イベントの長期発症リスクを検討した。
 対象は、1987~2012年にSwedish Inpatient Registerに登録されたAMI、IS、VTEの既往歴がない初発AF患者49万6,173例。2013年12月31日まで追跡し、1年後、5年後、10年後の致死性または非致死性AMI、IS、VTE〔深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症(PE)〕の初発イベントを記録し、イベント発症率を算出した。
女性でより高い二次性イベント発症リスク
 対象の年齢は18~84歳と幅広く、男性が53%(平均年齢70.2歳)、女性が47%(同76.6歳)を占めた。
 ベースライン時の併存疾患は、高血圧(26.5%)、心不全(25.2%)が高率で、AMI以外の虚血性心疾患(16.7%)、がん(12.5%)、糖尿病(11.3%)、心弁膜症(7.0%)、一過性脳虚血発作(TIA、4.0%)が続いた。脳内出血、先天性心疾患、末梢血管障害の既往例は1%未満であった(図1)。

図1. ベースライン時の併存疾患


 また、1年後、5年後、10年後における致死性または非致死性AMI、IS、VTEの二次性イベントについて男女別に検討したところ、男性では致死性または非致死性AMI、女性ではISが一貫して最も頻度が高く、これらのイベント発症率は、男女とも経時的に増加する傾向にあった(図2)。

図2. 1年後、5年後、10年後の二次性イベント発症率

(図1、2ともにESC 2017発表データ)

 以上の結果から、Björck氏は「初発AF後、最初に発症する二次性イベントは、男性では致死性または非致死性AMIとISがほぼ同率で、女性ではISが最も多かった。VTEは長期的な発症率は高くはなかったが、女性では男性よりも高率であったことから、総合的なリスクは男性より女性の方が高いと考えられた」と結論。さらに、「相対的に二次性イベントの発症リスクが男性よりも女性で高い理由は不明であり、今後さらなる研究が必要」と付言した。