交感神経緊張状態が続くと、自律神経系が破綻をきたす・・・まあ、当たり前と言えば当たり前。
■ 長時間労働は心房細動発症の危険因子〜週55時間以上でリスクは4割増
(2017/11/1 難波寛子=医師:日経メディカル)
労働時間が週40時間以内の人と比較して、週に55時間以上労働する人は心房細動(AF)発症リスクが4割増しとなることが、欧州におけるメタ解析により明らかになった――。11月は厚生労働省が定める「過労死等防止啓発月間」である。長時間労働している患者のリスク管理に役立つとともに、医師自身の労働時間を顧みる契機となる論文をEur Heart J誌9月17日号より紹介する。
本研究の対象はIPD-Work(Individual-Participant-Data Meta-Analysis in Working Populations)コンソーシアムにて行われたコホート研究10試験の参加者。うち2試験は55時間以上の長時間労働者(n=6、n=55)とAF発症数(2試験ともn=0)が極めて少なかったので除外した結果、対象は8試験となった。
ベースライン時の労働時間は、1991年から2004年までの期間に記録された。週当たりの労働時間を、(1)35時間未満、(2)35~40時間、(3)41~48時間、(4)49~54時間、(5)55時間以上、の5群に分けた。European Union Working Time Directiveは、労働時間を平均で週48時間以内とすることを労働者の権利として保障している。
対象8試験中1試験(Whitehall II試験)では、ベースラインの1991年と2003年および2008年に心電図によりAFの評価を行っている。一方、残る7試験ではベースラインと経過観察時点での電子カルテなどの病名をもとにAF発症を確認した。
解析対象となった8万5494人中男性は35%で、ベースライン時の平均年齢は43.4歳(範囲:17-70)だった。平均10.0年の経過観察中にAFを発症したのは1061人で、10年間の累積発症率は12.4/1000だった。AF発症例の71.4%が65歳以前にAFと診断された。
AF発症例のうち86.7%は観察期間中に他の心血管疾患を生じなかったが、10.2%ではAF発症前に何らかの心血管疾患を発症していた。
ベースライン時の労働時間が週55時間以上だったのは4484人(5.2%)、フルタイムワーカーの標準的労働時間とされる35-40時間だったのは5万3468人(62.5%)だった。
長時間労働は、肥満、余暇の運動部不足、喫煙、アルコール多飲といった健康的でない生活習慣と相関していた。Whitehall II試験を対象として更に詳細に検討したところ、長時間労働者ではうつや不安症状が多く、左室肥大が少なかった。
年齢、性別、社会経済的状況(SES)で調整した解析の結果、標準的労働時間である35-40時間群と比較して55時間以上群のAF発症のハザード比(HR)は1.42(95%信頼区間[95%信頼CI]:1.13-1.80、P=0.0031)だった。試験間の異質性は、確認されなかった(I2=0%、P=0.66)。他の生活習慣(喫煙歴、BMI、身体活動、アルコール摂取量)でさらに調整すると関連はわずかに減弱した(HR:1.41、95%CI:1.10-1.80、P=0.0059)。
長時間労働とAF発症との関連は、AF診断時に既に発症していた冠動脈疾患の有無により調整した後も(HR:1.41、95%CI:1.12-1.78、P=0.0039)、またベースライン時に心血管疾患を有していた549人(HR:1.41、95%CI:1.11-1.79、P=0.0054)およびベースライン時または経過観察時に心血管疾患を有していた2006人(HR:1.36、95%CI:1.05-1.76、P=0.0180)を除外した解析でも、統計学的に有意であった。
更に詳しいデータが得られたWhitehall II試験の参加者6649人(うち224人が期間中にAF発症)を対象とし、年齢、性別、社会経済的状況(SES)で調整した解析を行った結果、35-40時間群と比較して55時間以上群のHRは1.41(95%CI:0.93-2.14、P=0.1045)で、8試験すべての参加者を対象とした解析と、ほぼ同様であった。その他の生活様式、感染や全身の炎症、呼吸器疾患、弁膜症やうっ血性心不全等の心疾患、左室肥大、糖尿病、うつや不安症状、収縮期血圧、降圧剤の内服、総コレステロールおよびHDLコレステロールにより更なる調整を行った解析結果も同様だった(HR:1.42、95%CI:0.91-2.23、P=0.12、n=5867、AF発症例:195人)。
標準的労働時間である35-40時間群と比較して、AFのハザード比は、41-48時間群、49-54時間群、55時間以上群でそれぞれ1.02、1.17、1.42であり、労働時間が長時間になるにつれてAF発症リスクが上昇していた。
著者らは、AF発症と長時間労働との関連のメカニズム解明のために更なる研究が必要であると指摘した。また、本研究はUK、デンマーク、スウェーデン、フィンランドで行われたものであり、この研究結果が同地域のみに限定されるという理由はないものの、他国への一般化の際には確認が必要であると述べている。
<原著論文>
・Kivimaki et al. Long working hours as a risk factor for atrial fibrillation: a multi-cohort study. Eur Heart J. 2017;38: 2621-8.
■ 長時間労働は心房細動発症の危険因子〜週55時間以上でリスクは4割増
(2017/11/1 難波寛子=医師:日経メディカル)
労働時間が週40時間以内の人と比較して、週に55時間以上労働する人は心房細動(AF)発症リスクが4割増しとなることが、欧州におけるメタ解析により明らかになった――。11月は厚生労働省が定める「過労死等防止啓発月間」である。長時間労働している患者のリスク管理に役立つとともに、医師自身の労働時間を顧みる契機となる論文をEur Heart J誌9月17日号より紹介する。
本研究の対象はIPD-Work(Individual-Participant-Data Meta-Analysis in Working Populations)コンソーシアムにて行われたコホート研究10試験の参加者。うち2試験は55時間以上の長時間労働者(n=6、n=55)とAF発症数(2試験ともn=0)が極めて少なかったので除外した結果、対象は8試験となった。
ベースライン時の労働時間は、1991年から2004年までの期間に記録された。週当たりの労働時間を、(1)35時間未満、(2)35~40時間、(3)41~48時間、(4)49~54時間、(5)55時間以上、の5群に分けた。European Union Working Time Directiveは、労働時間を平均で週48時間以内とすることを労働者の権利として保障している。
対象8試験中1試験(Whitehall II試験)では、ベースラインの1991年と2003年および2008年に心電図によりAFの評価を行っている。一方、残る7試験ではベースラインと経過観察時点での電子カルテなどの病名をもとにAF発症を確認した。
解析対象となった8万5494人中男性は35%で、ベースライン時の平均年齢は43.4歳(範囲:17-70)だった。平均10.0年の経過観察中にAFを発症したのは1061人で、10年間の累積発症率は12.4/1000だった。AF発症例の71.4%が65歳以前にAFと診断された。
AF発症例のうち86.7%は観察期間中に他の心血管疾患を生じなかったが、10.2%ではAF発症前に何らかの心血管疾患を発症していた。
ベースライン時の労働時間が週55時間以上だったのは4484人(5.2%)、フルタイムワーカーの標準的労働時間とされる35-40時間だったのは5万3468人(62.5%)だった。
長時間労働は、肥満、余暇の運動部不足、喫煙、アルコール多飲といった健康的でない生活習慣と相関していた。Whitehall II試験を対象として更に詳細に検討したところ、長時間労働者ではうつや不安症状が多く、左室肥大が少なかった。
年齢、性別、社会経済的状況(SES)で調整した解析の結果、標準的労働時間である35-40時間群と比較して55時間以上群のAF発症のハザード比(HR)は1.42(95%信頼区間[95%信頼CI]:1.13-1.80、P=0.0031)だった。試験間の異質性は、確認されなかった(I2=0%、P=0.66)。他の生活習慣(喫煙歴、BMI、身体活動、アルコール摂取量)でさらに調整すると関連はわずかに減弱した(HR:1.41、95%CI:1.10-1.80、P=0.0059)。
長時間労働とAF発症との関連は、AF診断時に既に発症していた冠動脈疾患の有無により調整した後も(HR:1.41、95%CI:1.12-1.78、P=0.0039)、またベースライン時に心血管疾患を有していた549人(HR:1.41、95%CI:1.11-1.79、P=0.0054)およびベースライン時または経過観察時に心血管疾患を有していた2006人(HR:1.36、95%CI:1.05-1.76、P=0.0180)を除外した解析でも、統計学的に有意であった。
更に詳しいデータが得られたWhitehall II試験の参加者6649人(うち224人が期間中にAF発症)を対象とし、年齢、性別、社会経済的状況(SES)で調整した解析を行った結果、35-40時間群と比較して55時間以上群のHRは1.41(95%CI:0.93-2.14、P=0.1045)で、8試験すべての参加者を対象とした解析と、ほぼ同様であった。その他の生活様式、感染や全身の炎症、呼吸器疾患、弁膜症やうっ血性心不全等の心疾患、左室肥大、糖尿病、うつや不安症状、収縮期血圧、降圧剤の内服、総コレステロールおよびHDLコレステロールにより更なる調整を行った解析結果も同様だった(HR:1.42、95%CI:0.91-2.23、P=0.12、n=5867、AF発症例:195人)。
標準的労働時間である35-40時間群と比較して、AFのハザード比は、41-48時間群、49-54時間群、55時間以上群でそれぞれ1.02、1.17、1.42であり、労働時間が長時間になるにつれてAF発症リスクが上昇していた。
著者らは、AF発症と長時間労働との関連のメカニズム解明のために更なる研究が必要であると指摘した。また、本研究はUK、デンマーク、スウェーデン、フィンランドで行われたものであり、この研究結果が同地域のみに限定されるという理由はないものの、他国への一般化の際には確認が必要であると述べている。
<原著論文>
・Kivimaki et al. Long working hours as a risk factor for atrial fibrillation: a multi-cohort study. Eur Heart J. 2017;38: 2621-8.