京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

『トウキョウソナタ』

2008-10-05 | 邦画

 


□作品オフィシャルサイト 「トウキョウソナタ
□監督・脚本 黒沢清
□脚本 Max Mannix、三浦幸子
□キャスト 香川照之、小泉今日子、小柳友、井之脇海、井川遥、津田寛治、役所広司

■鑑賞日 9月28日(日)
■劇場 チネチッタ
■cyazの満足度 ★★★(5★満点、☆は0.5)

<感想>


 すでにご存知の通り第61回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で審査員賞を受賞した作品。 ここのところ映画付いているキョンキョンとカメレオン俳優の香川照之の共演となれば、期待せずにはいられない。 特にキョンキョンは先日『グーグーだって猫である』を観たばかりでとても楽しみだった。

 “ある視点”
 それはある平凡なサラリーマンの佐々木竜平(香川照之)が会社をリストラされたことでそれまでにも増して家庭が崩壊し始める。 ただ、世の中に対して懐疑的な心を持っている長男・貴(小柳友)や親に黙ってピアノレッスンに通い始めた健二(井之脇海)や、一家のまとめ役だった妻の恵(小泉今日子)もそれぞれの関係がバラバラになっていく。 でもそれはやがて再生の方向に向かう。

 今もそうなのかどうかはわからないが、突然長年勤めた会社をリストラされると、家族には言えず、結局今までと同じサイクルで生活を送るように誤魔化す。 ハローワークに行っても己を過信して職を選んでしまうし、面接で何が出来るかと聞かれて堪えられない。 そんな現実はどこにでもあるのかもしれないし、“アメリカがクシャミをすれば日本が風邪を引く”なんて笑い話でしかなかったジョークも意外に近いところでリーマン・ブラザースの破綻が皮肉にもそれに現実味を加えていた例だろう。 もしかしたら“明日は我が身”なのかもしれない。

 一家族の生活を切り取った映画は過去幾つかあったが、何故かその全ての映像が暗いトーンだ。 噛みあわない歯車は何も陰へ陰へ入ることが必ずしもいいとは思えない。 黒沢監督らしいトーンと言えばそれまでだが、濃淡があることでまた家族の陰影もはっきりと見えてくるだろう。

 いまどき父親の威厳なんて、特殊な世界を覗いてないだろうし、この家族の設定ではまさに男の子二人なわけで、そんなものが知恵の付いた子供に通じるわけもない。 昭和の時代ならばともかく平成の時代においては(笑) しかも家族の実の中心は母親であるという事実であり、キョンキョン演じる専業主婦の妻の恵が子供たちと共有する時間を持って来たことは確かだ。 そこに父親の威厳なんて注入できるものなのか。 多少時代錯誤ありなのかも・・・。

 久しぶりの津田寛治を観たが、彼が竜平を図書館に連れて行き、ここはただで何時間居ても文句言われないと教える。 実際、会社の昼休みに近所の図書館に本を仮に行くのだが、まさにこういった人たちと、少しこぎれいな浮浪者が席を占領している。 そこは結構リアリティのある映像だし、最近この図書館を巡って色々いざこざがあるのも事実だ。 中には女性専用席などを設ける自治体もあるようだ。
 さすがに食事の配給は知らないが、その昔山谷あたりでは、定職にあるタクシードライバーが、トイレで汚い服に着替え、生活保護の金の受け取るためにその列に並び金を騙し取っている連中がいることは知っている。 
 必要かどうかは別にして、携帯電話の定期的にコールする方法なんて知らなかったなぁ(笑) これ、使えるかも(←何に

 様々な選択肢はあるものの、共栄共存できない不透明な時代に、平凡な家族の一部を見せられることが、ある視点であったのかどうかはわからない。 しかしながら健二のピアノの才能が他人によって発見され、長男も理想と現実のギャップに家に戻るようになり、竜平もまがりなりに清掃員の仕事を正面から立ち向かうようになり、いつしか壊れかけた家族の絆は少しずつ治癒されていく。 そこが少なからず救いになったとは思える。
 長男の貴を演じたのは小柳友(ゆう)、あのブラザートムの息子さんだが鳶が鷹を産んだのか(笑)
 一家族の不協和音も最後は才能を開花させた健二が、ドビュッシーの「月の光」を演奏するシーンでラストを迎える。

 それにしても、途中で強盗(役所広司)によって強引に家の外に連れ出されてしまうキョンキョンとのシーンって必要だったのだろうか。  強盗の背景は希薄にしろ、そこで吐き出された恵の言葉にハッとした。

 「自分は一人しかいません。 信じられるのはそれだけじゃないですか。」 と。

 そのキョンキョン、映画の中でドーナツを作るシーンがあり、舞台挨拶のインタビューで「一人暮らしが長いので自炊には慣れております」と笑わせたそうな。 幾つになってもキョンキョンは可愛い ってこんな締めでよいのだろうか(笑)

  


コメント (11)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『最後の初恋』 | トップ | 『アイアンマン』 »
最新の画像もっと見る

11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは! (kira)
2008-10-05 01:05:13
鑑賞中よりも、少し後になってからの方が
なんだか胸に広がってくるシーンがあって、こみあげるものがありました。
仰るように、リーマンショックから、又暫くはある日突然肩を叩かれる恐怖を味わうひとが
どこかで増えていくのかも知れませんね
時代は変っていても、刷り込まれた男性の意識は
こういう時に表れるのかも
案外多い気がしていて、かなり感情移入してしまいました
もしも、もしも?の連続でしたね
返信する
ですね~ (cyaz)
2008-10-05 10:22:12
kiraさん、TB&コメントありがとうございますm(__)m

>鑑賞中よりも、少し後になってからの方がなんだか胸に広がってくるシーンがあって、こみあげるものがありました。
仰るようにぼくもそれが強いです^^
あとであれこれ思い出したりして(笑)

>時代は変っていても、刷り込まれた男性の意識はこういう時に表れるのかも 案外多い気がしていて、かなり感情移入してしまいました
そうですね^^ 明日は我は身(笑) 気を引き締めないと><

>もしも、もしも?の連続でしたね
ですね~
返信する
Unknown (えい)
2008-10-05 11:08:33
こんにちは。

数年前から東銀座の小さな好演では
聖歌を歌った後の炊き出しがあって、
3桁ほどの人たちが集まってくる光景が
日常化していました。

あと、時間ごとに鳴る携帯ですが、
auはEZニュースフラッシュに登録しているからかどうか
毎時10分と、夜中の0時40分に
更新お知らせメール(?)みたいなのがきます。
ぼくは通常マナーモードにしていますので
バイブで本体が震えるだけですが、
もし、これを音が出る設定にしていると、
津田寛治のようなこともできるのではないかと思いました。

あっ、さすがに映画鑑賞中は電源オフにしています。
返信する
できる~ (cyaz)
2008-10-06 08:30:08
えいさん、TB&コメント、ありがとうございますm(__)m

>数年前から東銀座の小さな公園では聖歌を歌った後の炊き出しがあって、3桁ほどの人たちが集まってくる光景が日常化していました。
ほう、そうなんですか?

>あと、時間ごとに鳴る携帯ですが、auはEZニュースフラッシュに登録しているからかどうか毎時10分と、夜中の0時40分に更新お知らせメール(?)みたいなのがきます。
へぇ~、やっぱり出来るんですね(笑)?

>ぼくは通常マナーモードにしていますのでバイブで本体が震えるだけですが、もし、これを音が出る設定にしていると、津田寛治のようなこともできるのではないかと思いました。
その場を離れたいときなどは便利なのかもしれませんね(笑)
あと・・・(謎)。

>あっ、さすがに映画鑑賞中は電源オフにしています。
僕も同様です!
返信する
なるほど~ (cyaz)
2008-10-06 08:33:42
えいさん、TB&コメント、ありがとうございますm(__)m

>数年前から東銀座の小さな公園では聖歌を歌った後の炊き出しがあって、3桁ほどの人たちが集まってくる光景が日常化していました。
へぇ~、あの当たりは銀座のおすそ分けで色々食料的に不足ない地域だと思っていましたが、銀座・丸の内あたりのリストラ族ですかね?

>あと、時間ごとに鳴る携帯ですが、auはEZニュースフラッシュに登録しているからかどうか毎時10分と、夜中の0時40分に更新お知らせメール(?)みたいなのがきます。ぼくは通常マナーモードにしていますのでバイブで本体が震えるだけですが、もし、これを音が出る設定にしていると、津田寛治のようなこともできるのではないかと思いました。
なるほど、ま、自分で設定してれば、いろんな場面で使い方はありますよね(笑) その場から離脱したいときに(笑) そのほかにも色々(謎)

>あっ、さすがに映画鑑賞中は電源オフにしています。
僕も同様です^^
返信する
長男は (michi)
2008-10-13 10:53:21
ブラザートムの息子さんだったんですね~。
cyazサンのレビューで初めて知りました!!!!
男前なので、お母さん似でしょうか。。。笑

家族の不協和音がどことなく理解できたので
最後に父が涙を目に溜めていたシーンは
かなりジーンときました。
返信する
不協和音~ (cyaz)
2008-10-14 12:30:46
michiさん、コメント、ありがとうございますm(__)m

>ブラザートムの息子さんだったんですね~。
あらら、そうだったんですね(笑)?

>男前なので、お母さん似でしょうか。。。笑
でもトムさんのずっと若い頃に面影はありますよ^^ 今のトムさんを想像しないように(笑)

>家族の不協和音がどことなく理解できたので最後に父が涙を目に溜めていたシーンはかなりジーンときました。
どの部分に同じ感動を持つかはそれぞれでしょうが、バラけたジグソーパズルがちゃんとした家族の絵になりそうで良かったです。
返信する
父親 (未来)
2008-10-19 22:57:11
今時こんな父親・・?
父親が箸をつけるまで誰も食べない、
まさに‘昭和時代’ですよね。
役所さんは、何がしたかったのか分からなかったです。
大物俳優にあの役ってのもヘンですし。。
返信する
ですね~ (cyaz)
2008-10-20 08:27:34
未来さん、TB&コメント、ありがとうございますm(__)m

>今時こんな父親・・? 父親が箸をつけるまで誰も食べない、まさに‘昭和時代’ですよね。
そうですよね(笑)
今の時代にはギャップがありすぎ(笑)

>役所さんは、何がしたかったのか分からなかったです。 大物俳優にあの役ってのもヘンですし。。
というか、何を意味しどんな位置づけにしたかったのか、監督の意図がわかりません(笑)
返信する
派遣切り (kossy)
2009-01-03 12:59:48
10月にご覧になったということは、最近の派遣切りのニュースがクローズアップされる以前のことですよね?
映画を作るときにはこんな大不況の世になるなんて考えてなかったのでしょうけど、監督も驚いているでしょうね~
今後も黒沢監督のホラー以外の作品に期待です。
返信する

コメントを投稿

邦画」カテゴリの最新記事