1963

主に昭和の頃の思い出と旅行の備忘録
ときどき愚痴

最近読んだ本〜終わりに見た街〜

2024-09-28 12:21:00 | 読書

山田太一氏の『終わりに見た街』を読んだ

岸辺のアルバム、不揃いの林檎たち等の
有名な脚本家だが小説は初読み
 
感想を一言で表すと「救いのない話」
タイムワープ系の話が好きなので読み始めたけど
私の苦手なバッドエンド
 
1981年、多摩川を見下ろす高台に住むテレビドラマライター太一と
その妻、中学生の娘、小学生の息子と柴犬1匹 
 
ある朝、起きたら家ごと昭和19年の戦争中にタイムワープしていた
近所の家も道もなく自宅は森の中
いつもは遠目に見える新宿の高層ビル群や二子玉川の高島屋もない
家や家電があっても電気や水道などのインフラは当然通っていない
 
妻の実家などに電話をしてみるがもちろん繋がらない
しかし突然電話のベルが鳴る、、主人公太一の幼馴染からだった
なぜか太一一家と幼馴染の敏夫さん父子だけが時空を超えてしまった
敏夫さんは結婚式場で宴会係をしていただけあってなかなか気働きがある人で
口八丁でその時々に必要な食料や品物をうまく手に入れてくる
 
現実を受け入れられなかった太一一家も
敏夫さんとその息子と一緒に終戦までなんとか生き延びようとする
 
なにより未来を知っているのが強み
どこに空襲があったかを知っているので
そのエリアを避けて転々と住居を変える、、つもりでいた
 
途中までは紆余曲折がありながらも比較的うまくいっていた
昭和20年3月10日の東京大空襲を前になんとか少しだけでも助けられないかと
下町でビラを撒いたり、軍人や警官に目をつけながら大空襲の日時を知らせる演説をした
 
やれるだけやって自分たちは安全な都下に戻ったら
なんとそこに空襲警報
そんなこと年表にも歴史の本にも書いてなかった
でも書いてあることがすべてではない
まさに「聞いてないよー」である
 
まともに爆撃を受けてしまった太一
気が付いた時、左腕をなくし出血が止まらない
近くには黒焦げの家族の遺体
痛みと絶望の中で見た崩れた新宿の高層ビル群
 
もしかしてまた時空を超えた?
近くに倒れていた虫の息の人に今は昭和何年か聞く
答えは切れ切れに「ヘイ、、」
西暦で何年か聞くと答えは「ニセン、、」ここでその人は息絶え
話は終わる
このラストの絶望感は「猿の惑星」に似ている
 
戦時中を何とか生き延び、元の時代に家族で戻れるのを期待していたが
再度時空を超えた未来も戦争で皆亡くなってしまった
これは第三次世界大戦なのか
 
戦争中の食糧難や物資不足だけでなく
子どもまで軍国教育をされ自由に発言できない
隣組だの婦人会だの相互監視もウザイ
 
せめて未来から連れてきた自分の子ども達には
いずれ戦争には負けて、終戦後に大人たちがころりと言うことが変わるんだよと
戦争の愚かさをこっそり教えてきたが
当の子ども達は純粋なのか、すっかり軍国少年・少女になってしまい親を批判する
これもがっかりだが、その時になったらみんな世論に飲み込まれて絡めとられてしまうのだろうか
 
私が最後まで気になったのは太一の飼い犬レオである
多摩川の家は軍人に見つかってしまい逃げる際に
庭につながれていたレオを自由にしてやる
軍人たちは家に火をつけるがレオはそこからは逃げおおせた
 
しかし昭和50年代の中流家庭の飼い犬だったレオが
野良犬として生き延びられるとは思えない
人が食べ物に苦労している時代に残飯もないだろうし
なんか何もかもが気に入らなかった
でもきっと戦争ってそういうものなのだろう
 

最近読んだ本〜母親からの小包はなぜこんなにダサいのか〜

2024-09-22 14:53:00 | 読書
三千円の使いかたがヒットした原田ひ香氏の
「母親からの小包は何故こんなにダサいのか」を読んだ

母親から送られてくる荷物をテーマにした6話の短編集
それぞれの話の小包の中身は概ねこんな感じ
米、野菜、缶詰、レトルト食品、乾物や
温かいだけのダサい下着とか地元の銘菓
実家を離れて一人暮らしした人なら思いあたる物ばかりだと思う

緩衝材代わりに農協から貰ったタオルが入っているとかもリアリティがあった

第一話の主人公は小包を素直には喜ばない
地方から東京の大学に進学して自由を得て
親との関わりが面倒なのだ

しかしこの主人公の女子大生は
大学でなかなか友だちが出来ない
中高からのエスカレーター組はすでに仲間がいる
都会育ちのキラキラ女子大生に気後れして
自分と同じ地味な学生に勇気を出して声を掛けるが上手くいかない

ある日実家からの小包に入っていた
地元にしかないお菓子「かーさんケット」を教室で食べていたら
出身地が同じ学生がお菓子を懐かしがって
声を掛けてきた

鬱陶しく思う母からの小包がきっかけで
きっとこれから仲良くなっていくのだろう
希望がある明るい話だった

ちなみにこの「かーさんケット」は本当にあるお菓子らしい

その他、母親がいないOLが同棲相手への見栄のために
母親からと称してネット販売している農家に米や野菜を小包で送ってもらう話や
毎年女性名で父親あてに送られてくる小包の送り主を探す謎解きの話など
どれもサクッと読めた

ただ最終話だけはスッキリしない
ずっと母1人娘1人で暮らしてきたOL
自身が大阪に転勤になったタイミングで母が再婚し千葉に移住するが
再婚相手が気にくわず、母とも疎遠になる

母からの風邪をひいたとのLINEにも返信せず
義理父(母の再婚相手)から何度も着信した電話にやっと出るが
母親の容態が急変しICUにいるとの連絡
慌てて駆けつけるが間に合わず
死に目に会えなかった
悲しみは大いに理解するけど
霊安室やお通夜の席でも何故喪主が義理父なのか
何故向こうの子ども達が葬式を仕切るのか納得できず
ついには母親の葬儀をボイコットしてしまう

温厚な義理父もさすがに義理娘に意見するが彼女は全く反省していない
母を取られた寂しい気持ちがあるにしても
あまりに幼稚(ここまでくると中2病だね)

自宅に帰ると亡くなった母親からの小包が届いていた
入院する直前に送った小包の中身はいつもの食品等のほか
使いかけの風邪薬や熱冷ましのシートなどが入っており
娘はここでやっと母親の気持ちを理解し大泣きする(遅い!)

その後、義理父とも和解し連絡を取り合うようになる(遅い!!)

世の中には親からの虐待やお金の無心等で親と疎遠になったり絶縁する人もいるのだろう
それは仕方のない事だけど
彼女の場合は、お母さんを取られた、、である

疎遠の義理父から電話があった時点で
相当やばい何かだと思うのが普通でしょ

生き死にに関わる事は無視すると後々自分が苦しむ事になる
このお母さん、心残りだっだろうな

最近読んだ本〜赤と青のガウン〜

2024-09-06 13:00:00 | 読書
久しぶりにエッセイを読んだ

彬子女王の『赤と青のガウン』
皇族の彬子様がオックスフォード大学に留学され
博士号を得られるまでのお話し

研究と努力を重ねて
論文を完成させるまでのご苦労と
イギリスでの普段の生活や指導教授やご友人との事
時々楽しまれる旅行やスキーなどのご様子が書かれていた

文章は読みやすく瑞々しくユーモアがあり
著者は聡明で優しい方だと思う

普段の移動はバス
マーケットで安い食材を探して自炊
贅沢とは無縁の学生生活
サラダうどんのレシピなどは庶民そのものなので私にも出来そうだ

日本の宮家から送られてくる荷物も
お米やインスタントのお味噌汁、缶詰、モコモコの靴下など普通の学生と変わらないけど
側衛官や侍女さんなど皇族ならではのエピソードもあり興味深かった

お父様とのやり取りは数多く登場するのに
不思議とお母様については最後まで全く触れていなかった

どうやらお母様とは確執があり長く別居だったよう
皇族と言えども家族の悩み事はあるのね

無事、博士号を取り、赤と青のガウンをお召しになって式典に出席される件では、なんだかホッとした🤭


最近読んだ本~爆弾~(ネタバレあり)

2024-08-14 11:38:12 | 読書

最近読んだのは呉 勝浩氏の『爆弾』

ミステリーが好きで今まで沢山読んだが

この作家さんのは初読み

 

「スズキ タゴサク」と名乗る冴えない中年男性

微罪で引っ張られた警察署の取調室で「霊感」と称して

爆発物を仕掛けたことをにおわせる

実際に秋葉原で爆発が起こり警察もタゴサクを捨て置けなくなる

 

卑下している割には頭の回転が速く取調官を翻弄(愚弄)する

馬鹿丁寧な話し方が読んでるこちらまでイライラさせられる

本当に取調をしていたら相手するのが大変だろう

次の爆発の場所と時間をクイズ形式でヒントを出す、、

このクイズのやり取り、最初はダラダラしてつまらなかったが

取調官を類家という特殊犯係の若い男性に交代してから

(取調官がタゴサクの罠にはまりおかしくなったので、取調室にいるメンバー以外は知らない内緒の交代)

クイズという名の心理戦が軽快に展開されていく

 

この類家というキャラクター

小柄で体に合わないサイズのジャケットを着た

天然パーマで丸眼鏡という設定

なぜかこの手の刑事らしくない視点を持つ警察官に

こういう見た目の設定を宛がわれることが多いような気がする

 

類家登場から心理戦のペースが速くなる

登場人物が多く、この人がどこでどのように絡んでくるのか

何となくこの設定だとこの人が怪しい、、ところまではわかるけど

タゴサクの『九つの尻尾』というクイズは深すぎてわからなかった

類家の解説(読み解き)でやっとしっくり来た

 

最終的にタゴサクは他人の立てた爆破計画を乗っ取り主犯を演じていた

それもかなり計画的に用意周到に

これだけ多くの爆破事件を起こし、死者・負傷者を出したら

まず極刑になるだろうに

それでも「俺の犯罪」にしたい理由がよくわからない

 

本人曰くずっと馬鹿にされ続け、誰からもまともに相手にされず

幸せどころか普通にすら遠く

ホームレスにまでなった『無敵の人』

最後の最後で劇場型の大犯罪者になることで挽回できるのだろうか

本当にこれがタゴサクの目的なのだろうか

 

『爆弾2法廷占拠』が発刊されている

こちらでも類家も登場するらしいので

ぜひ紐解いて欲しい

この夏の楽しみが増えた

 

 

 

 

 

 

 


最近読んだ本と婚活

2024-06-04 19:32:00 | 読書

子どもの頃から読書が好きだった

本の内容に入り込んでいると
現実の嫌な事を一時でも考えなくて済むから
 
今は仕事や親の世話であまり時間が取れないので
年間50冊程度しか読めない
 
最近読んだ本は荻原浩氏の『二千七百の夏と冬』
内容を簡単にまとめると
縄文人の少年と弥生人の少女の恋と
当時の狩りや稲作などの生活の様子と
現代人の記者が発掘された古代人の骨を
記事にすべく古代に思いを馳せる、、というところ
 
最初は古代の言葉使いが読みにくかったけど次第に慣れた
狩りや解体のシーンは生々しくちょっと苦手だけど、これが当時の生活なのよね
その時に生まれてたら、猪でもうさぎでも捕まえて食べなきゃ生きられないもの
 
社会の授業では、年表を使って時代を覚えたけど、当然時代が重なる時期がある
 
それじゃ縄文は終了するから、縄文人の皆さんお疲れ様でした、次、弥生人の皆さん前に出てきてください、、な訳ないよね🤭
 
それで縄文人ソース顔の少年と弥生人しょうゆ顔の少女が出会い、生活習慣の違いに戸惑いながらお互いに惹かれていくお話なんだけど
 
最近ネットで29歳の男性の婚活を取り上げた番組が記事になっていた
私はテレビをほとんど観ないので、記事と掲載の写真を見ただけだが、なかなかの好青年なのに結婚相手を見つけるのに苦労している様子
 
なんでも学歴が低いだの年収が少ないだとか
言動がキモいとかの理由でお見合い相手から断られるのだとか
親御さんが観たら悲しむよ
 
プロフィールを見ると大卒だし、年収450万は29歳なら立派だと思うのに
世知辛いね
 
古代とは時代が違うから単純比較出来ないけど
なんとなく気になる相手がいて、気がついたらいつもその人の事を考えてて
ケンカしたり、仲直りしたり、、そういう恋をするのは現代では難しいのかな
なんだか最近の若者は大変そうだな